「下流老人」「老後破産」…なんとも辛い言葉が多くなった昨今。老後に必要なお金、貯められていますか? 総務省統計局『家計調査年報』(令和4年)などとともに、単身高齢者のお金事情をみていきます。
単身高齢者「毎月赤字」の暮らしぶり
超少子高齢社会となって久しい日本。2020年の国勢調査によれば、65歳以上の一人暮らし世帯は約600万世帯に達しています。
結婚の多様化が進む今、「家族を持たない」というのも、当然尊重され得る選択です。とはいえ、お一人様高齢者として生きるにあたっては、収支の面が不安になるところです。いずれ配偶者との死別を迎える夫婦世帯についても、「個人としての老後」を考える必要があるといえます。
そこで総務省統計局『家計調査年報』(令和4年)より65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)のお金事情を見てみると、実収入は「13万4,915円」、可処分所得は「12万2,559円」となっています。そのうち90.1%は社会保障給付が占めており、年金を頼りになんとか暮らしている単身高齢者が多いことが見て取れます。
一方の支出額。社会保険料などを含む非消費支出と日々の消費支出、あわせて「14万3,139円」。月「2万580円」の赤字になっていることがわかります。
【65歳以上の単身無職世帯/実収入内訳】
事業・内職収入……1,707円
社会保障給付…… 12万1,496円
仕送り金……769円
【65歳以上の単身無職世帯/支出内訳】
食料……3万7,485円
住居……1万2,746円
光熱・水道……1万4,704円
家具・家事用品……5,956円
衣服及び履物……3,150円
保険医療……8,128円
交通・通信……1万4,625円
教養娯楽……1万4,473円
その他消費支出……3万1,872円
直接税……6,660円
社会保険料……5,625円
多くの高齢者が毎月の生活費を賄うために貯蓄を取り崩しており、それでも赤字が続く状況です。特に家賃が高騰する都市部では、賃貸物件を借りること自体が困難になっています。
高齢者向けの住宅に空きがなく、一般の賃貸物件に応募しても年齢や収入の低さから断られるケースが少なくありません。保証人を求められることも多く、一層の苦労が伴います。
例えば、東京に住む田中さん(仮名)は、年金収入が月14万円程度で、家賃7万円のワンルームマンションに住んでいます。毎月の生活費は食費や医療費、光熱費などを含めて15万円を超え、常に赤字状態です。貯金を取り崩して生活していますが、その貯金も減少の一途をたどっており、将来に対する不安が募るばかりだと話します。
さらに、食費や光熱費、通信費など、基本的な生活費はインフレーションの影響で上昇し続けています。これに対して、年金額の増加は限られており、収入と支出のバランスが崩れているのが現状です。
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社会的なサポートと対策
「お一人様高齢者」は、孤独感など精神的なストレスにも悩まされることがあります。孤独感は、うつ病や認知症のリスクを高める要因ともなり、高齢者の生活の質を大きく低下させます。
このような状況に対処するためには、社会全体での支援が不可欠です。政府や自治体は、以下のような対策を講じることが求められます。
経済的支援の強化:低所得高齢者に対する生活保護や住宅補助を拡充し、基本的な生活を支えるための経済的支援を強化することが必要です。
医療・介護サービスの充実:医療費や介護費用の負担軽減策を講じ、高齢者が必要な医療・介護サービスを受けられる環境を整えることが重要です。
社会的孤立の防止:地域コミュニティの活性化やボランティア活動の推進を通じて、高齢者が社会と繋がりを持ち続けられるような仕組みを構築することが求められます。
住居の確保:高齢者向けの公営住宅や低価格の賃貸住宅の供給を増やし、安心して住む場所を確保できるようにすることが必要です。
日本の「お一人様高齢者」は、経済的困難、健康問題、孤独といった複合的な課題に直面しています。こうした問題を解決するためには、社会全体での支援と対策が不可欠です。経済的支援の強化、医療・介護サービスの充実、社会的孤立の防止、住居の確保など、多方面からのアプローチが求められます。