言語化スキルを磨くには「日常的なインプット」が大切
言語化力は学べば高められる能力ですが、言葉を組み立てる習慣がない日本人にとっては、身につけるまでに相応の時間がかかります。一方で、その習慣がなかったのであれば、今から言語化力のアップに向けた取り組みを習慣化すればいいのです。
たとえば、思考や得た情報を思いつくままにまとめ、それらを整理するという流れを継続していくことが1つの方法として挙げられます。また、本を読んだり、映画や芝居、音楽に触れたりと何かアクションを起こして思考や情報のインプットを怠らないことも大切です。
とくに読書であれば、古典を読むことをおすすめします。言語化がうまくできないという悩みは、現代人だけのものではありません。古くから多くの人々が考え続けてきた悠久のテーマであり、そこから多くの言葉や思想が生まれていきました。近年、孔子の『論語』や『孫子の兵法書』などの内容をビジネスに活かそうという書籍が数多く出版されていますが、これは古典に書かれる先人の知恵が、現代人が抱える悩みの解決に向けたヒントになることが往々にしてあるからです。
言語化力は、積極的に外部からの情報を取り入れ、自身の中に溜めこんでこそ、はじめて基礎が完成するものであり、その土台があるからこそ、発せられる言葉に深みが増していきます。とはいえ「忙しいから」とインプットを後回しにしていては、いつまでも能力が実りません。その忙しさはどこから来るのか分析してみましょう。ある世論調査では、本を読まなくなった原因に「スマートフォンやゲームなどに多くの時間を費やしている」と答えた人が73%もいました。あなたもそのような生活になっていないでしょうか。
ただし、それは「時間がない」のではなく単に「時間をつくっていない」だけです。読書一つをとっても、習慣化する方法は多くあります。たとえば、トイレやお風呂のような生活空間にタブレットを置き、いつでも電子書籍を読めるようにしておく、家事の合間は音声読み上げアプリを使って聴くなど、現代のテクノロジーもうまく駆使しながら、目や耳から情報をインプットするための時間をつくる工夫をしましょう。そのとき、あなたが仮に集中できていなかったとしても、本当に必要としている情報や言葉は、自然と蓄積されていくはずです。
<ポイント>
●言語化力の向上に向けた練習を習慣化する。
●本や映画、音楽などに触れて情報をインプットする。
●時間がないのではなく、時間をつくらないだけ。
●テクノロジーも駆使して、時間をつくる工夫をしよう。
【監修】山口 謡司
大東文化大学名誉教授、平成国際大学新学部設置準備室学術顧問
1963年、長崎県に生まれる。フランス国立社会科学高等研究院大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経る。 著書にはベストセラー『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)をはじめ、『文豪の凄い語彙力』『一字違いの語彙力』『頭のいい子に育つ0歳からの親子で音読』『ステップアップ0歳音読』『いい子が生まれる 胎教音読』、監修に『頭のいい一級の語彙力集成』(以上、さくら舎)などがある。