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 アメリカ・ニューハンプシャー州で27日、トリプルEの感染者の死亡が報告された。これは同州では10年ぶりの感染例だ。隣接する北東部の別の州でもトリプルEのヒトへの感染が、今年になってから数件報告されており、懸念が広がっている。

◆トリプルEとは

 トリプルEとは、東部ウマ脳炎(Eastern Equine Encephalitis)と呼ばれる感染症のことで、3つの頭文字EをとってトリプルE(EEE)とも呼ばれる。病原体は、東部ウマ脳炎ウイルスで、蚊を介してウマやヒトに感染する。

 症状は、発熱、頭痛、嘔吐、けいれんなどに及び、脳炎を発症した場合の致死率は約30%。死に至らぬ場合も多くの患者に神経系の副作用が残る。特に15歳未満と50歳以上でリスクが高いとされる。ワクチンも治療薬も存在せず、もっとも有効な予防法は、蚊に刺されないことだ。

◆アメリカ北東部の州で感染者

 バーモント州では9日、トリプルEのヒト感染例が確認された。同州では、7月から10月半ばにかけ、保健局が州内の蚊を集めてトリプルEの検査を行っているが、今年のトリプルEウイルスに陽性反応を示す蚊の数は、昨年と比べて増加傾向にある。

 バーモント州でヒトのトリプルE感染が確認されたのは、12年ぶりのことだ。12年前の2012年に確認された感染者は2人で、いずれも死亡した。

 今年は、ニュージャージー州やマサチューセッツ州でもヒトへのトリプルE感染が1件ずつ報告されており、それぞれに住民への注意喚起が行われている。

◆マサチューセッツでは夜の屋外活動を制限する動き

 特に16日に4年ぶりにヒト感染が確認されたマサチューセッツ州では、思い切った対策に乗り出す自治体も出ている。ボストンの南東約65キロにあるプリマス市では、同市のウマがトリプルEに感染したことから、公共の屋外レクリエーション施設を日没から夜明けまで閉鎖することを決めた。

 ほかの市においても夜間の外出を避けるよう住民に呼びかけたり、蚊の駆除剤の散布計画を立てたりしている。また州の保健当局も、蚊の活発な時間帯を避けるため、屋外の活動を9月30日までは18時まで、それ以降、最初の霜が降りるまでは17時までに終えるよう呼びかけている。(NBCニュース、8/26)

 マサチューセッツ州では2020年に17人がトリプルEに感染し、そのうち7人が亡くなっている。

◆気候変動による蚊の増殖

 そのようななか27日発表されたのが、ニューハンプシャー州でのトリプルE感染者の死亡だ。このニュースは、北東部におけるトリプルE蔓延のリスクへの懸念をさらに高めた。ニューハンプシャー州でのヒト感染者は10年ぶりのことで、10年前の2014年には、3人の感染者のうち2人が亡くなっている。(AFP通信、8/28)

 昨今の気候変動により、アメリカでも気温と湿度が上昇し、蚊の発生季節が以前より長くなっているため、まだしばらくは十分な警戒が必要とされる。