Sさんの失敗の原因と対処法

Sさんの失敗は、市場リスクの影響、高額な保険料、過剰な死亡保障、専門家への相談不足など、複数の要因に起因しています。

Sさんは変額保険の運用成果に期待していましたが、市場の変動により思ったより運用益が増えませんでした。このリスクを理解せず、老後資金に充てようと考えていたことが問題です。

また、毎月5万円の高額な保険料が退職後の生活資金を圧迫し、老後の資金不足を招きました。さらに、加入当初に設定した高額な死亡保障は、子供たちの自立後には不要となり、満期まで保険内容の見直しができませんでした。

保険は複雑な商品であり、十分な専門家の助言を受けることで、自分に最適なプランを見つけることができます。保険選びには慎重な検討と定期的な見直しが必要であり、自分のライフステージや経済状況に応じた柔軟な対応を心がけましょう。

現状の改善点としては、解約返戻金が払込金額を下回っている期間は損益になるため解約することは避け、もし現金が必要となる場合は他の金融資産から優先して使用していきましょう。

それでも不足が生じる場合は、生命保険の「契約者貸付制度」の活用をおすすめします。これは、解約返戻金の一定範囲内であれば、保険を解約することなく現金を借りることができる制度です。その場合、利息がかかるものの、焦って保険を解約してしまうよりは資金を残せる可能性があるでしょう。

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定年までに知っておきたい「生命保険」の活用法

老後の生活を安心して迎えるために、50代~60代が知っておきたい「生命保険を適切に活用するためのポイント」を下記にまとめました。

保障の見直しと調整

定年後の生活費や必要な保障額を再確認し、既存の保険内容を見直すことが重要です。50代や60代になると、子供が独立たりし、住宅ローンを完済したりすることで必要な保障額が減少します。そのため、過剰な保険料を支払う必要はありません。保険契約内容を見直し、必要最低限の保障に調整することで保険料を抑えることができます。

貯蓄性のある保険の活用

貯蓄性のある保険(例:終身保険、養老保険、個人年金保険、学資保険)は、将来的に満期保険金として受け取れるため、老後の資金計画に役立ちます。定年後の生活費や医療費、予想外の出費に備えるための資金を蓄える手段として有効です。ただ、保険料が高額になることもありますので、自分の財務状況と相談しながら選ぶことが重要です。

生命保険と医療保険の目的の違いを理解する

生命保険は、主に万一の際に遺族の生活費や相続税の支払いに対応する保険です。一方、医療保険は入院や手術などの医療費用をカバーする保険です。これらの保険は目的が異なるため、ひとつの保険で両方の保障をカバーしようとすると保障内容が複雑になる場合があります。医療保険と生命保険を別々に考えることで、老後の目的に合わせた保険選びが可能になります。

保障の重複を避ける

既存の保険と新たに検討する保険の保障内容が、重複しないように注意が必要です。例えば、会社の福利厚生として共済保険に加入している場合、個人で新たに同様の保険に加入する必要はありません。複数の保険会社と契約している場合も、保障内容が重複しがちです。保険の重複は無駄な費用を生むだけでなく、管理が複雑になるため、現在の保障内容を把握し、必要な補完的な保障を検討することが重要です。

保険金の使い道を明確にする

保険金の使い道を明確にすることで、遺族への負担を軽減できます。例えば、葬儀費用や遺族の生活費、教育費など、具体的な用途を考えて保険金額を設定することが大切です。万一の際に、遺族が保険金を適切に活用できることが重要です。

専門家への相談

生命保険は複雑で、個々の状況によって最適なプランが異なります。保険の見直しや新規加入を検討する際には、保険の専門家やファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。さらに、複数の専門家のアドバイスを受けることで、自分に最適な保険プランを見つけやすくなります。

これらのことから、生命保険の活用には慎重さが求められます。市場リスクに依存する変額保険は運用が不安定で、老後資金に影響を与える可能性があります。過剰な保障内容の保険は、ニーズに合わず高額な保険料を支払うことになります。また、見直しが困難な保険や解約返戻金が低い保険は柔軟な対応が難しいです。

専門家の助言なしで選んだ保険は自分に最適でない可能性が高いため、上記のポイントを踏まえて、中立的な立場の専門家に相談することが重要です。
 

伊豫田 誠
FP事務所ストラット
代表/不動産投資専門ファイナンシャルプランナー