羽田空港は、2023年において世界で最も混雑する空港ランキングでアトランタ、ドバイについで世界3位の5269万人が利用する大空港である。国内外の旅行者にとって重要なハブ空港であり、その中でもJALが提供するラウンジは、世界中のビジネス旅行者やファーストクラスの乗客にとって欠かせない存在である。
この記事では、ラウンジの歴史を紐解いたのちに、TVでも紹介されたJALの羽田空港におけるラウンジ施設の特徴や魅力について紹介する。
◆空港ラウンジの歴史
世界初の空港ラウンジは、アメリカン航空が1939年に設置したものになる。ニューヨークのラガーディア空港に作られた会員からの招待制の「アドミラルズクラブ」という名前だった。アドミラルとは提督の意味で、客船の最上級サービスを空でも味わってもらいたいという意味合いで名付けられた。
過去には、出発ゲートにラウンジが設けられていたこともある。1980年代にアメリカ東海岸のボストン⇔ニューヨーク⇔ワシントンD.C.を結ぶ幹線を飛ぶトランプシャトルでは1時間ほどのフライトの機内ではサービスがない代わりに出発ゲートにドリンクや軽食が置かれたコーナーがあった。この形態は長くは続かなかったどころかトランプシャトルさえ経営譲渡で消えてしまった。
日本でのラウンジの歴史は定かではないが、空港ターミナルビルの運営会社が会議室などを整備し、それが有償でラウンジとして使われ始めたものであると推定される。現在、世界最大で9000平米もあるラウンジはエミレーツ航空が運営するドバイ国際空港のファーストクラスラウンジだ。
◆『週刊さんまとマツコ』で紹介
2024年7月にTBSの番組『週刊さんまとマツコ』にて、羽田空港のJALラウンジの裏側が紹介された。この番組では、司会者である明石家さんまとマツコ・デラックスが実際にJALの「ファーストクラスラウンジ」を訪問し、その高級感と快適さを体験した。
さんまは、普段からファーストクラスを利用して渡航していることを明かしたものの、寿司カウンターの存在を知らなかったと言わせるほど、広々とした施設だともいえる。
JALのラウンジは日本テレビの『沸騰ワード10』(2024年3月1日放送)などでも風間俊介や高橋真麻によって紹介されており、人気ぶりが伺える。
◆ファーストクラスラウンジの特別感
「ファーストクラスラウンジ」は、JALの中でも最高級のサービスを提供するラウンジであり、限られた顧客のみが利用できる特別な空間だ。ファーストクラス利用者か、JMBダイヤモンド、JGCプレミアの会員のみが利用できる。
2020年に生まれ変わったこのラウンジは、モダンジャパニーズをテーマとしており、内部は洗練されたデザインと広々とした空間が特徴である。「room to room」のコンセプトで5か所に分かれたラウンジのコンセプトがそれぞれに違う。コンセプト通りに個性ある部屋を巡りたくなる。
専用のダイニングエリア「JAL’s Table」で提供されるフルコースの料理や「ローランペリエ」のシャンパンを始め豊富なワインセレクションが楽しめるバーカウンター「JAL’s SALON」が設けられている。また、寿司職人がその場で握る「鮨 鶴亭」の握り寿司が楽しめる。
◆お金を払って入れるものではない
ラウンジ内では季節ごとに異なる特別メニューが提供され、日本の四季を感じられるおもてなしが魅力である。
ラウンジ内には個別のリラクゼーションスペースが設けられており、専任のスタッフによる細やかなサービスが受けられる。「RED SUITE」は大人の隠れ家のコンセプトのあるこだわりのエリアも作られている。人の手で磨きあげる「John Lobb」の靴磨きまであるのだ。プライバシーを重視した個室や、ゆったりとしたリクライニングチェアが完備されており、フライト前の贅沢なひとときを過ごすことができる。
このファーストクラスラウンジはお金を払って入れるものではない。どうしても入るのであれば、ファーストクラス利用者やマイレージ資格者の同行者になるしかない。
◆ビジネスクラスラウンジもある
羽田空港には「国際線サクララウンジ」が用意されており、JMB会員やエコノミークラスでも自由度の高い運賃(Flex Y)以上の航空券所持者は利用できる。「JAL特製オリジナルビーフカレー」や「メゾンカイザー」のパンは人気があり、話題を呼んでいる。
サクララウンジの基本構成は、ラウンジ部分とダイニングに分かれる。シャワー設備もあるが、ファーストクラスラウンジには遊び心や重厚感が備わっている。
羽田空港内のJALラウンジは、アクセスの利便性も大きな魅力である。チェックインカウンターからラウンジまでの道のりはスムーズであり、特にファーストクラスやビジネスクラスの乗客は専用のセキュリティチェックを経てラウンジに直行できるシステムが整備されている。このシームレスな移動は、乗客にストレスを感じさせないサービスの一環として評価が高い。
この2種類のラウンジは成田空港でも同様のサービスを行っており、他空港でも国際線就航空港では自社ないし提携のラウンジが利用できる。
◆空港ラウンジの今後の進化
JALのラウンジは、今後もさらなる進化を遂げることが期待されている。この先もラウンジのリニューアルや新サービスの導入が検討されており、ますます充実した施設とサービスが提供される予定である。
海外ではユナイテッド航空のロサンゼルス空港や、エアカナダのサンフランシスコ空港での事例で空港が見渡せるテラス席のゆったりしたソファーで過ごすことができるようになっている。これにより、特別感はさらに高まることから今後は、このような傾向も増えていくことだろう。
環境に配慮した取り組みで新たな顧客体験の提供により、ラウンジの快適さと機能性がさらに向上することが期待される。ストローやなどの使い捨てアイテムの廃止、シャワーでは節水型シャワーヘッドの設置、省エネ型の動作センサーの設置などがある。地元産の持続可能な農産物を使用し、食品廃棄物を最小限に抑える工夫をしている。将来はデジタル技術の提供が期待されるだろう。
◆サービスの二極化
日本では2012年以降のLCCの就航で、格安で海外に渡航することが当たり前のようになる一方で、ビジネストラベル客へのサービス向上で、ラウンジサービスがさらに磨きがかかる可能性が大きい。今後の航空旅行は、二極化の側面を見せていくのではないかと思われる。
ラウンジの存在を身近にしてくれたテレビ番組の功績がある。今後も、同様のプログラムを注目していきたい。
<TEXT/北島幸司>
【北島幸司】
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。YouTube チャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「Avian Wing」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。Facebook avian.wing instagram@kitajimaavianwing