「死んだ準惑星」と考えられてきた冥王星、実は生きていた

冥王星は、地球から最も遠い場所にいる探査機「ボイジャー」さえも訪れたことがありません。なお、ボイジャーは1、2号とも今も稼働しています。

2006年に打ち上げられたNASAの冥王星探査機「ニューホライズンズ」が唯一、冥王星に接近し、至近距離から撮影しました。

冥王星の姿でまず目を引くのは、白っぽくハートの形をした部分です。ここは冥王星を発見したアメリカの天文学者クライド・トンボーに由来して、「トンボー地域」と呼ばれています。

そこには氷の厚さが4kmほどの巨大な盆地「スプートニク平原」が広がり、多角形のパターンが見られます。研究の結果、この模様は湧き上がってきた氷が作り出していることが分かりました。

その事実から、「活動を終えて死んだ準惑星」と考えられてきた冥王星ですが、実際は内部が活発に活動している「生きた準惑星」だったのです。さらに、地下には海が存在していることも分かっています。

[図表2]スプートニク平原 出所:NASA/Johns Hopkins Univ./SRI/Pluto Icy Plains Captured in Highest-Resolution Views from New Horizons

太陽から遠く離れた小さな氷の天体が、まだ盛んに活動しているとは、ほとんどの天文学者は予想していないことでした。

冥王星のように小さく、遠くにある天体を探査するのはとても難しいことです。

ニューホライズンズは、9年かけて冥王星に近づきましたが、接近して観測できたのはわずかな時間だけでした。

それでも、そのわずかな時間で取得できた情報は、惑星科学の分野に革命的な成果をもたらしたのです。そして冥王星を探査した後、今もなおニューホライズンズは宇宙の旅を続けています。

この広い宇宙では、これまでの常識が覆るような天体がほかにもたくさんあるかもしれません。私たちが見ている宇宙は、この大宇宙のほんの一部でしかないのだと実感させられます。

【著者】宇宙 すずちゃんねる 
数億年後の地球の姿や太陽系惑星の秘密、生命誕生の奇跡など、ロマンあふれる宇宙について解説する宇宙科学YouTubeチャンネル。チャンネル開設からわずか2年足らずでYouTube登録者数は27万人を超える。

【監修】渡部 潤一 
1960年福島県生まれ。1983年東京大学理学部天文学科卒業、1987年同大学院理学系研究科天文学専門課程博士課程中退。東京大学東京天文台を経て、現在、国立天文台上席教授および総合研究大学院大学教授。国際天文学連合副会長。
著書に『賢治と「星」を見る』(NHK出版)、『第二の地球が見つかる日』(朝日新書)、『面白いほど宇宙がわかる15の言の葉』(小学館101新書)など多数。