夏休みも終わりが近づき、学生は今ごろ宿題に追われているのかもしれません。小説、絵、音楽などの創作物は「著作権」で守られ、侵害すれば法律違反となりますが、学校の宿題や授業などでは、そのルールが少しだけゆるくなることがあります(学校教育における著作物利用のルール)。これらを知らない大人も多いのではないでしょうか。
提出する予定の宿題は著作権を侵害していないか。親や子ども、そして先生が正しく理解するために必要な知識を大学で著作権を教えている宮武久佳さんが解説します。
※この記事は、宮武久佳氏の著作『小学生のうちから知っておきたい著作権の基本』(カンゼン)より一部抜粋・再構成しています。
友人の作品を「まね」するのはOK?
友人が描いた絵が大好きなので、そっくりまねてしまうことがあるかもしれません。これは問題があるでしょうか? あるいは自由研究で友人のものをまねたとしたらどうなるでしょうか?
まず、「まねる」ことは「コピーをする」と同じであると考えてください。クラスで先生や他の友人の目に触れるのであれば、キミはあらかじめ友人に、「キミの作品とそっくり同じものを描いた。クラスで見せてもいい?」と許可を得るのがいいでしょう。その友人も喜んでくれるかもしれません。「まねた」のは、その作品が素晴らしいからではないでしょうか。
でも、もし友人が嫌がっているにも関わらず、キミがまねた絵を、クラスで発表する場合は、友人の著作権の侵害になるかもしれません。
宮武久佳『小学生のうちから知っておきたい著作権の基本』より(イラスト:杉本龍一郎)
確かに、学校教育の現場、特に「授業の過程」において著作権はゆるくなりますが、原作者が嫌がっている場合は別です。
仮にキミがその友人の立場になって考えてみてはどうでしょうか。「誰でも私の作品をコピーしていいよ」とは言えないかもしれませんね。
著作権が問題になるのは、他人のコンテンツと比べて「まねたかどうか」「似ているかどうか」が疑わしいときです。注意しましょう。
ただし、友人の作品をまねて描いた絵を家の中で家族に見せるぐらいであれば、著作権の問題にはなりません。家庭内や私的な目的のコピーを著作権法は認めています(著作権法第30条)。
自習ドリルや白地図をコピーしてはいけない理由
小学校や中学校・高校など非営利の教育機関では、著作権をゆるく扱う特例を認められています。
「授業の過程」であれば、教科書や教材、図鑑、新聞や雑誌記事など他人の作品をコピーして配布したり、オンラインで送信したりすることができるのです。
また児童・生徒も授業の宿題作成のために、必要な範囲でのみ教材を「コピーする」「オンラインで提出する」ことが可能です(著作権法第35条)。
「コピー」とスマホやタブレットによる「スキャン」は同じ意味として扱われます。
ただし、自習ドリルや白地図のように、児童や生徒が一人一冊ずつ持つことを前提に作られた教材は、コピーして配布したり、オンライン送信したりすることは禁じられています。あらかじめ、「一人一冊」を前提にして値段を低く抑えているからです。
以上は、教育現場の、しかも「授業の過程」における著作権のゆるい扱い(「著作権の制限規定」と言います)についてです。
ここでいう「学校」とはあくまで営利目的でない学校などの教育施設を指します。塾や家庭教師、カルチャーセンターはビジネス(営利)が目的なので、対象ではありません。他人が作ったコンテンツをコピーするときは、作り手の許可が必要です。
宮武久佳『小学生のうちから知っておきたい著作権の基本』より(イラスト:杉本龍一郎)
また、学校の中であっても、職員会議や保護者会は「授業の過程」ではありません。他人のコンテンツを無断でコピーできません。
「授業の過程」以外で、他人のコンテンツをコピーして使用するときは、作り手の許可が必要です。たとえば、教室や廊下に人気マンガのキャラクターをコピーして飾ることはできません。