ラブホテルに「1人で来た」女性を部屋に通したら…従業員の“背筋が凍った”修羅場とは?

 さまざまな男女の愛情と欲望が常に入り乱れる非日常空間・ラブホテル。そこで働く従業員は、カオスな人間ドラマを目撃することも少なくない。

 今回は、福岡の繁華街のラブホテルで、ベッドメイクとフロント業務を5年間続けた天野翔子さん(仮名)が、1年目の新人時代に犯してしまったミスが発端となった、ある夫婦の修羅場話だ。

◆一本の電話が悲劇の始まりだった

 これは天野さんがラブホテルのフロント業務を始めたばかりの1年目当時のエピソード。

「当ホテルではメンバーズカードを部屋で販売しており、それを自動精算機に入れると利用料金が10%割引されるシステムがあるんです。また、カードごとの番号で累積のポイントや利用料金、利用日などもデータとして蓄積され、フロントのパソコンで管理できるようになっています」

 事の発端は、一本の電話だったという。

「ある日、私がフロント業務をしていると女性から電話がかかってきたんです。『メンバーズカードの有効期限っていつまでですか?』と尋ねられ、私は『最終利用日から1年です』と答えました。

 すると女性が『最終利用日がいつかわかりますか?』と聞いてきたので、カード番号を伺ってパソコンに入力して検索をかけ、出てきた日付を伝えたんです。女性からは丁寧にお礼を言われ、そのまま電話は切れました」

 よくある問い合わせ内容だったため、天野さんは特に気にも留めなかったそうだが……。

◆遅れて来た“連れの女性”が実は…

 その数日後、平日の昼下がりに事件は起きた。

「オーダーされた料理を作っていると、フロントの電話が鳴りました。電話に出ると、『205号室の連れの者です』と女性の声がします。当ホテルでは、カップルの待ち合わせや、夜のお姉さんの“デリバリー”利用の場合も多く、時間差で女性が入室することは珍しくありません。

 ですから私は205号室に電話をして、『お連れ様が起こしになりましたのでお通しします』と伝えました。料理を作っている途中というのもあり急いでいた私は、電話口の男性が答える前に電話を切り、205号室の鍵を解除してしまったのです」

 そのあとすぐに205号室から電話がかかってくるが、時すでに遅し。……修羅場に突入してしまっていた。

◆絵に描いたような不倫の修羅場


「電話口の向こうから『誰よ、その女!』という女性の怒りの声が聞こえてきました。私も慌てて205号室に向かいましたが、どうやら旦那が不倫相手といる部屋に奥さんを入室させてしまったようです。

 基本的にフロントでは、入室する際に男性1名なのか、それとも男女2名なのかをカメラで確認しているのですが……このときは完全に見落としてしまっていました」

 205号室で繰り広げられていたのは、絵に描いたような不倫の修羅場。

「奥さんは鬼の形相で旦那さんに掴みかかり、言い逃れできる状況ではない旦那さんは完全に白旗を振っている状態。不倫相手の女性は気まずそうに立ち尽くしていましたね。私はとにかく奥さんを落ち着かせることに必死で、なんとか場が鎮まった頃合いをみて、3人には部屋から出ていってもらいました」

◆殺傷沙汰にはならず、不幸中の幸い

 その後、その夫婦や不倫相手の女性がどうなったかはわからないという。

「要するに、数日前にメンバーズカードの有効期限を尋ねて来た女性は、旦那さんの不倫を疑っていた奥さんで、証拠を掴むために旦那さんのカードを盗み取って調べていたんだと思います。

 それで奥さんは、なんらかの方法でその日、ラブホで旦那が不倫することを察知して、乗り込んできたということでしょうね……。

 メンバーズカードの情報を本人(旦那)以外に教えてしまったことや、奥さんを部屋に入れてしまったことは、訴えられてもおかしくない私のミスだと上司から強く注意を受けました。

 旦那さん側からホテルを訴えてくることはなかったものの、あのときの対応の不備は本当に反省しています。もし奥さんが包丁や凶器を持ち込んでいたら……そう考えると今でも背筋が凍ります」

 奥さんを裏切って不倫をしていた旦那さんが悪いのは大前提だが、確かにホテルのフロント業としては天野さんのミスは致命的だったのだろう。殺傷事件などに発展しなかったことが不幸中の幸いだったエピソードである。

<取材・文=逢ヶ瀬十吾/A4studio>

―[ラブホの珍事件]―

【逢ヶ瀬十吾】

編集プロダクションA4studio(エーヨンスタジオ)所属のライター。興味のあるジャンルは映画・ドラマ・舞台などエンタメ系全般について。美味しい料理店を発掘することが趣味。