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 マイクロソフト創設者のビル・ゲイツ氏は、たいそうな慈善家でもある。ゲイツ氏は、妻とともに設立したビル&メリンダ・ゲイツ財団に数十億ドルを寄付している。主に世界的な健康状態の改善と、貧困の削減に注力する財団だ。その多額の運営資金は、卓越した投資戦略によって賄われている。

◆ポートフォリオのほとんどを4つの銘柄で構成

 財団は設立以来、776億ドルの助成金を支出してきた。財団の資金源となっているのが、ビル&メリンダ・ゲイツ財団信託だ。その約477億ドルに上る投資ポートフォリオは、技術、産業、消費財など多岐にわたる。信託のポートフォリオは四半期ごとに公表されるが、2024年第2四半期末時点でその83%が、わずか4つの銘柄で構成されている。

 なかでも最大の割合を占めるのが、ゲイツ氏自身が設立したマイクロソフトの株式だ。最新のフォーム13F(米証券取引委員会に提出する株式ポジションの開示書)によると、ゲイツ氏のポートフォリオの32.71%を占める。所有株数は3489万株で、評価額は約156億ドルに達する。

 マイクロソフト現在、OSやオフィスソフトを主体としていたかつての姿から大きく変化しており、クラウドサービスのアジュールや生成AI(人工知能)の分野で急成長を遂げている。4-6月期のアジュールの売上高は29%増えたが、そのうちのAIの寄与は約8ポイントで、サービス同士の創発作用が生まれている。

◆第2位はウォーレン・バフェット氏率いる企業株

 財団のポートフォリオで第2の割合を占めるのは、バークシャー・ハサウェイ株だ。著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いる多国籍コングロマリットであり、財団のポートフォリオの21.01%を占める。所有株数は2462万株で評価額は約100億ドルに達する。

 ポートフォリオの第3の位置を占めるのは、ウェイスト・マネジメント株だ。ゴミ収集、廃棄物処理、リサイクルサービスを提供する企業であり、北米全域で事業を展開している。また、埋立地から発生するガスを利用して電力を生成し、車両を動かすなど、環境に配慮した取り組みも行っている。

 同社株は、ゲイツ財団のポートフォリオの約16%を占める重要な銘柄だ。保有株数は3523万株で、総額約75億ドルに達する。ゲイツ財団は、安定した収益を生む企業に対して特に関心を持っており、ウェイスト・マネジメントはその典型例だ。

◆鉄道株への手堅い投資も

 ほか、北米唯一の大陸横断鉄道であるカナディアン・ナショナル鉄道が投資ポートフォリオの13.59%を占め第4位となっている。保有株数は5483万株で、評価額は約65億ドルだ。

 米投資アドバイス会社のモトリー・フールは、ウォーレン・バフェット氏も同様に、鉄道業界に信頼を寄せていると指摘する。ゲイツ氏は、鉄道が長距離トラックよりも温室効果ガス排出を75%削減するという点にも注目している。

 以下、5位キャタピラー(5.1%)、6位ディア・アンド・カンパニー(2.8%)、7位エコラボ(2.6%)、8位ウォルマート(1.3%)、9位コカ・コーラ・フェムサ(1.1%)、10位フェデックス(1.0%)となっている。

 IT企業から交通インフラまで、分野横断的に投資する戦略が伺える。