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 物価上昇が取り沙汰されるいま、田舎への移住は有効な一手となるだろうか? 比較的生活コストを抑えられるイメージがあり、出費の節減に効果的にも思える。

 しかし、まとまった額の貯蓄を目指したり、収入の向上を目指したりしたい場合、実際のとこは都会での暮らしが有利のようだ。総務省が今年5月に発表した「家計調査」(2023年データ)では、都道府県別の貯蓄額ランキングにおいて、上位に関東の都府県が並んだ。

◆関東4都府県の勢いが強い

 首都圏の都県(東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県)の貯蓄額を見てみると、全体的に高い傾向がある。東京都が2720万円でトップに立ち、次いで千葉県が2518万円で2位となった。3位の奈良県を挟み、神奈川県が2372万円で4位となったほか、埼玉県も2281万円で6位とランキング上位に食い込んでいる。

 総じて、都市部では生活費が高いが、一方で収入も高い傾向にあるようだ。首都圏は経済活動が活発であり、所得水準も高い。そのため、貯蓄に回す余裕があるのだろう。さらに、教育や医療などのインフラが整っていることも、貯蓄可能な高収入層を引き寄せる要因になっている可能性がある。

◆東北・九州はやや不利か

 一方、ランキングの下位に目を向けると、沖縄県が963万円で最も低い。青森県(1147万円)や秋田県(1210万円)も下位に位置しているなど、東京・大阪・名古屋の三大経済圏から離れた地方において、貯蓄額が低い傾向が見られるようだ。

 地方別では、東北と九州・沖縄が奮わなかった。東北地方は、宮城県が1601万円で最も高く、次いで山形県が1711万円、福島県が1572万円、岩手県が1476万円、秋田県が1210万円、青森県が1147万円となっている。東北地方の全県が28位から46位に位置し、全般に下位を占める。

 東北は経済規模が比較的小さいほか、人口減少や高齢化が進んでいる地域も多く、若年層の流出が続いている。こうした事情が貯蓄額に影響を与えている可能性がありそうだ。

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 九州・沖縄地方では、福岡県が1657万円で最も高く、次いで熊本県が1585万円、佐賀県が1363万円、大分県が1359万円、長崎県が1263万円、鹿児島県が1221万円、宮崎県が1220万円、沖縄県が963万円となっている。26位から47位に位置し、こちらも控えめな数字となった。福岡を除き、東北地方と同様に経済規模が大きくないことや、若年層の人口流出の影響が考えられるだろう。

 1位東京と47位の沖縄とでは、貯蓄額に1757万円の差がある。東京の平均貯蓄額は、沖縄の2.82倍に相当する計算だ。

 なお、全国の世帯あたりの平均貯蓄額は1904万円で、前年(2022年)比で0.2%の増加となっている。増加傾向は5年連続だ。中央値は平均値よりもかなり低く、1107万円となっている。一部の富裕層が平均値を押し上げている実態を物語る。

◆収入で見た傾向は

 貯蓄額が多い都道府県が、一概に収入が多いとも言えないようだ。平均年収ランキングを見ると、関東地方で高額となっている傾向は似ているものの、都道府県別の個々の状況が貯蓄額ランキングとは異なる。

 収入のトップは、貯蓄額ランキングでも首位の東京都で、816万円の年間収入となっている。日本の首都であり経済の中心地であるため、高収入労働者が多いことが要因だろう。

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 次に続くのは2位・埼玉県の800万円、3位・神奈川県の766万円だ。少し離れて5位・栃木県、7位・千葉県と、関東勢が強い。栃木を除いて東京に近接しており、通勤圏内となっている。それぞれの経済も発達しているほか、東京のベッドタウンとして、都内勤務者の収入の影響を受けていると考えられる。

◆貯蓄と年収は比例しない

 一部の県では、貯蓄額の順位と年収額の順位に大きな差異がある。

 奈良県は、貯蓄額では3位(2432万円)だったが、年収額では27位(614万円)にとどまった。収入が突出していなくとも、比較的物価が低く生活費が抑えられるため、貯蓄に回せる金額が多いことが考えられる。大阪へのアクセスも良く、土地にも余裕があり、戸建て購入者を引き寄せやすい事情もあるだろう。

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 徳島県は、貯蓄額では9位(2079万円)だが、年収額では26位(618万円)だ。奈良県と同様、物価が低く、生活費が抑えられるため、貯蓄に回せる金額が多いと考えられる。

 反対に、貯蓄額は低いが年収で上位に入っている県もある。福岡県は貯蓄額では26位(1657万円)だが、年収額では4位(732万円)となり、名古屋を擁する愛知県や東京に隣接する千葉県を凌ぐ勢いを見せている。

 地域ごとのお金事情を物語るランキングとなった。

◆都道府県別貯蓄ランキング

順位
都道府県
貯蓄(万円)
順位
都道府県
貯蓄(万円)

1
東京都
2,720
25
新潟県
1,672

2
千葉県
2,518
26
福岡県
1,657

3
奈良県
2,432
27
大阪府
1,634

4
神奈川県
2,372
28
宮城県
1,601

5
愛知県
2,341
29
群馬県
1,591

6
埼玉県
2,281
30
熊本県
1,585

7
滋賀県
2,225
31
福島県
1,572

8
三重県
2,202
32
高知県
1,569

9
徳島県
2,079
33
福井県
1,568

10
栃木県
2,061
34
和歌山県
1,558

11
静岡県
2,000
35
岩手県
1,476

12
茨城県
1,955
36
愛媛県
1,427

13
京都府
1,955
37
北海道
1,370

14
香川県
1,932
38
島根県
1,364

15
山口県
1,923
39
佐賀県
1,363

16
岐阜県
1,909
40
大分県
1,359

17
兵庫県
1,882
41
山梨県
1,344

18
長野県
1,851
42
長崎県
1,263

19
富山県
1,842
43
鹿児島県
1,221

20
広島県
1,837
44
宮崎県
1,220

21
岡山県
1,836
45
秋田県
1,210

22
石川県
1,807
46
青森県
1,147

23
山形県
1,711
47
沖縄県
963

24
鳥取県
1,680

◆都道府県別年間収入ランキング

順位
都道府県
年間収入(万円)
順位
都道府県
年間収入(万円)

1
東京都
816
25
大分県
627

2
埼玉県
800
26
徳島県
618

3
神奈川県
766
27
奈良県
614

4
福岡県
732
28
滋賀県
611

5
栃木県
720
29
熊本県
607

6
愛知県
706
30
兵庫県
606

7
千葉県
703
31
佐賀県
606

8
岡山県
703
32
京都府
603

9
宮城県
672
33
和歌山県
602

10
岐阜県
672
34
北海道
590

11
富山県
668
35
岩手県
587

12
高知県
666
36
山梨県
577

13
三重県
658
37
鳥取県
577

14
静岡県
652
38
山口県
572

15
広島県
651
39
福井県
571

16
長野県
648
40
長崎県
562

17
島根県
647
41
愛媛県
550

18
石川県
641
42
沖縄県
545

19
茨城県
638
43
鹿児島県
543

20
山形県
635
44
宮崎県
539

21
群馬県
631
45
大阪府
533

22
福島県
630
46
秋田県
525

23
新潟県
629
47
青森県
508

24
香川県
628