朝から晩まで、労働時間は1日12時間にも
「よーし、稼げるだけ稼ぐぞって意気込んで始めたけど、稼ぐのは簡単じゃなかった」
配達する荷物の単価は大きさ、重さで細かく分けられていて80円から160円。平均すると約140円ぐらい。
「1日に配達する荷物の数は少なくて100個、多いときは120個くらいです」
必然的に労働時間が長くなる。営業所に出勤するのが朝7時30分頃、荷物を積み込んで出発するのが8時ジャスト。ここから集荷と配達を繰り返して終了できるのは早くて夜8時、道路事情が悪かったり不在で再配達が何度もあると9時でも終わらないことがある。
「1日の仕事の流れとしては1便が通販会社の荷物で地方の名産品やら化粧品、小物家電品、書籍などが大半です」
約30軒に配達し終了すると、その足で会社が契約しているスーパーへ直行する。
「ここで積み込むのはお米、ミネラルウォーター、カップ麺、ビールや清涼飲料水、レトルト食品がほとんどです。1軒で5キロのお米を2袋とミネラルウォーターを2ケースとか、24本入りの缶ビールのケースを2つとカップ麺を1箱、ウィスキーとか焼酎のジャンボボトルを5、6本。こんな感じです」
スーパーの配達は2便あり、午前便分が終わった2時前後にようやく昼休憩を取れる。時間が押して休憩を取れないときは運転しながらコロッケパンとかカレーパンを食べておしまいということもある。
「もう一度店に戻って2便目の荷物を積み込み、配達し終えるのが夕方5時頃です」
仕事はまだ続き、次に向かうのはホームセンター。当日配送の18~20時の時間指定された荷物を積み込んでまた走り回る。
「ここの荷物は重たくてね。テレビ、布団、畳の上敷、組立て式の家具、自転車、ペット用品、介護用品。こういったものが多い」
20時までに配送し終えれるのはまれで、21時近くまでかかってしまうことも度々。客の方から時間指定してきたのに不在ということもあってイラッとすることがある。
「もう終わったときには一気に疲れが出てきます。エレベーターのない古いアパートや団地を多く回ると腕と太ももが痛くなるし」
仕事開始が7時30分で終業が21時近く。決まった休憩時間はなく15分~20分の細切れ休憩を4、5回取るだけ。すると労働時間は12時間ぐらいになる。
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オーバーワーク続けるも、期待外れの収入に「情けない」
「デスクワークじゃないでしょ、基本は荷物を持って駆け足。そりゃ疲れる」
収入も期待していたほどではない。
「4週6休、月24日稼働で34万円前後、休みを週1にしたら37万円ぐらい。これが精一杯です。モデルケースとして記されていた月収40万円とか50万円以上可なんて無理です。少なくてもわたしには出せない数字ですよ」
1ヵ月の労働時間は平均280時間前後だから、1時間単価はせいぜい1,250円程度。近所にあるパチンコ屋がアルバイトを募集していて、時給が1,450円となっていたから嫌になる。
「ガソリン代はもとより、車の維持費は全部自分持ち。タイヤ交換やオイル交換用に天引きしておくのを含めると4万円ぐらい出ていきます。これも大きいですよ」
運送会社の社員ではないから社会保険は自治体の国民健康保険と国民年金に加入しているが、この保険料も毎月6万円ちょっと払っている。
「こんなわけで相変わらず妻のパート収入が頼りなんです。情けなくなってくる」
体調も良くない。この仕事を始めて腕痛、腰痛、膝痛がひどくなった。休んでも疲れが取れず、ひどい倦怠感に襲われる日もある。
「やっぱり働き過ぎなんでしょうね。自分でも危険だと思うことがあるから」
特に昨年末はひどかった。12月はお歳暮とクリスマスが重なるので荷物の量が格段に増える。休みはたった3日で、大晦日も夜8時まで働いていたほどだ。初めて月収が40万円を超えたが労働時間は320時間もあった。
「三が日はどこへ行く気もなかった。寝正月というより過労で倒れていたのに近い」
最近は心配した奥さんに「もう辞めた方がいい」と言われている。
「妻が言うには、いつも顔色が悪いし人相も変わったと。まあ、自分でも鏡を見ると急に老け込んだなあと思います」