誕生と歴史。伝説の料理人による、オペラ歌手への贈り物

ピーチメルバが生まれたのは19世紀後半のロンドン。名前の由来は、オーストリアのオペラ歌手なのだそう。

島田シェフ
「オペラ歌手ネリー・メルバが公演でロンドンに宿泊した際、ホテルの総料理長オーギュスト・エスコフィエが彼女のために作ったのが誕生のきっかけです。彼女がそのスイーツをとても気に入ったことから、この名前がついたと言われています。

招待され、ネリー・メルバが出演したオペラ『ローエングリン』を観劇したエスコフィエは、公演への感動と返礼の意味を込めてデザートを作りました。舞台の第一幕に白鳥が登場したことから、初めてのピーチメルバは、白鳥の氷彫刻を飴で覆い、そこに銀の器に入ったアイスと桃を並べたものだったそうです。

エスコフィエは伝説の料理人と呼ばれるほど偉大な人物だったため、このお菓子もすぐに広まり、街のパティスリーでも桃とバニラアイス、フランボワーズを使ったピーチメルバのようなスイーツが出されるようになりました」

週末はカフェでスイーツを楽しむことも多いという松川さんの、ピーチメルバの感想は?

松川さん
「桃の美味しさに驚きました…!甘くてジューシーで、フランボワーズソースの酸味と合っているな、と思います。後味はさっぱりしていて、暑い日にも楽しめそうなスイーツですね」

桃とフランボワーズの絶妙なバランスに感動したと話す松川さん。柔らかく、けれど果肉の食感をきちんと楽しめるコンポート。桃の風味を引き立てる甘酸っぱいソース、アクセントにもなるアーモンドに香りもよいバニラアイス…。フランスでも日本でも多くの人を虜にする、王道であり確かな味わいを感じられます。

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パフェ、アイス、ケーキ…。日本独自の進化とは?

今回松川さんが味わったのは、定番のアシェットデセール形式のもの。エスコフィエによる最初のピーチメルバから簡素になって広く普及したスイーツについて、島田シェフはさらに日本独自の進化を遂げていると話します。

島田シェフ
「ピーチメルバは、日本人にとても親しみのある品だと思います。パンケーキとかアイスクリームなど、桃とバニラ、ラズベリーを組み合わせて“ピーチメルバ”と名付けられているものがありますよね。

フランスだと、一般の人でもカフェの定番スイーツとして浸透している分、アレンジを加えすぎると別物になる、という認識が強い気がします。こうしたいろいろなスイーツへの派生は、日本ならではのものですね。『ピーチメルバ』というやさしい言葉の響きも、日本で人気を得ている理由なのかもしれません」