現代の医学をもってしても、残念ながらアレルギーを根治させる方法は見つかっていません。しかし、『最新科学で発見された 正しい寿命の延ばし方』(総合法令出版)の著者で代謝機能研究所所長の今井伸二郎氏は、腸へのアプローチでアレルギーの程度が変化する可能性を指摘します。食べ物とアレルギーの深い関係性について、詳しくみていきましょう。
根治はしないが…アレルギーは“予防”できるかもしれない
アレルギーとの付き合い方
ここでは、本来のアレルギー疾患に対してどのように付き合い、症状を緩和し、生活の質(QOL)を改善していくかについて解説していきたいと思います。
私自身も花粉症の罹患者であり、毎年花粉症に苦しんでいます。花粉症は当事者でなければその苦しみは分かりませんが、喘息やアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、特にアナフィラキシー症状を呈するほどの強度の反応を示す症状を持つ方に比べれば、その症状の程度は少ないといっても過言ではないでしょう。
特に、喘息の発作の苦しみは言葉に絶するほど強いものといわれています。発作により気管が収縮し、酸素の流入量が半減するのですから、その苦しみは言葉では表せないでしょう。そのような苦しみから解放されるチャンスがあるのであれば、それは患者さんにとって藁をもつかむ気持ちでしょう。
これまで、私は患者さんの気持ちに寄り添って、科学者として客観的な事実を申し上げてきたつもりですが、患者さんにとって最も重要なことは、いかにアレルギーを予防できるか、どうしたら苦しみのない生活を送ることができるのかではないでしょうか?
もちろん、その解決となる画期的な方法は残念ながら得られてはおりません。しかし、少しでも患者さんの利益になるような方法があれば、それを公開しお役に立てるようにしたいと思っております。
その具体的な方法としては、次項で示す予防に寄与できる食品成分の情報が、私にとって最も得意とする機能性食品分野です。それだけでなく、機能性食品以外の方法についても、いくつか皆さまの参考になればと思います。
ほとんどのアレルギー疾患が〈胃腸の免疫システム〉と連動している
さて、腸と炎症については、前項で示したようにアレルギー疾患の増悪に深く関与しています。腸は人体最大の臓器であり、かつ免疫に強く関係する器官です。
というのも、毎日食事という大量の刺激物が通り抜け、その全てを免疫という関所で栄養となる純粋な食事成分と、体にとって害悪になる細菌などを選別しているのですから、そこに要する免疫部隊は必然的に巨大な部隊となっています。事実、体の中で産生される抗体の半分以上は消化管に分泌されています。
このように、腸は体の中で一番大きな免疫器官であり、かつ、体中のあらゆる免疫・防衛機能と連動しています。
各種アレルギー疾患は、例えば花粉症であれば鼻や目、アトピー性皮膚炎であれば皮膚など、局所だけでの反応と思われがちです。
しかし、その症状の増減や程度の違いは全身の免疫器官が関与しています。すなわち、ほとんど全てのアレルギー疾患が胃腸の免疫システムと連動しています。
そればかりでなく、腸漏れ症候群により腸が不調になると、免疫が暴走し、体中が慢性炎症状態になり、高血圧、糖尿病、動脈硬化など、いわゆる生活習慣病が進行する結果につながってしまいます。
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アレルギー予防の観点から「良い食べ物」と「悪い食べ物」
腸は、何層もの粘膜といった物理的、あるいは腸管粘膜が産生する抗菌成分などの生物学的バリアを作って、病原菌などの有害物が腸管壁に直接接触しないように一定の距離を保っています。
一方、腸内細菌は消化しきれなかった食物残ざん渣や、食品中の繊維質を自らの栄養として発酵することで、酪酸、乳酸、酢酸、プロピオン酸といった、宿主である人体にとって有益な短鎖有機酸を産生します。
これら有機酸は免疫を調整する役割を持っていますが、この有機酸の腸内での量が不足すると、免疫の調整が不調となり、慢性炎症疾患を引き起こしてしまいます。
このように、有機酸を産生分泌する腸内細菌をフローラ(腸内細菌叢)の中で優勢にしていくことは、炎症やアレルギーの予防につながります。
有機酸を産生分泌する腸内細菌がフローラの中で優勢とするためには、食物線維の多い食品、あるいはアルキルレゾルシノールを多く含む食品の摂取が必須です。
アルキルレゾルシノールは、酪酸や乳酸といった有機酸を産生する腸内細菌に対しては抗菌活性を示しません。
しかし、いわゆる悪玉菌に対しては強い抗菌活性を示すため、有機酸を産生分泌する腸内細菌をフローラの中で優勢にしてくれるわけです。
アルキルレゾルシノールを多く含む食品は穀類の外皮ですので、脱穀の少ないライ麦や小麦、食物繊維の多い豆類、野菜、海藻などの摂取がアレルギーの予防に有効です。
前述したように、腸には腸壁から分泌される粘膜によって有害物が侵入しないように、バリア機能があります。この粘膜層は、食品中の過剰な脂肪分により減ってしまう可能性があるため、過度な脂肪分を含む食品の摂取は控えたほうが無難かもしれません。
野菜を食べるとき、多くの人はサラダで食べることが多いでしょう。生野菜はかさ(体積)が多いですが、野菜は煮野菜やおひたしなど温野菜として摂取したほうが生野菜の数倍量を食べることができるため、ビタミンなどの有用成分を効率的に摂取することも可能となります。
それに加え、ドレッシングなどの脂肪分の摂取も控えることができますので、アレルギーの予防といった観点からも有効です。
また、赤身肉、ハムなど加工肉の摂取は腸に大きな負担となり、腸粘膜のバリア機能が低下して、腸が炎症を起こしてしまう可能性があります。事実、赤身肉、加工肉類の摂取は大腸がんの発症頻度を増加させる疫学的研究が報告されています。
<まとめ>
・ほとんどのアレルギー疾患が胃腸の免疫システムと連動している
・免疫が暴走すると、体中が慢性炎症状態になる