明石家さんまの「東大生イジり」は“時代遅れ”? 現役東大生の見解は

―[貧困東大生・布施川天馬]―

◆「旧時代的だ」と炎上中の明石家さんま

 先週8月24日(土)の21時より、人気テレビ番組『さんまの東大方程式』が放送されました。「番組のスター」大津くんをはじめとして、なぞかけを瞬時に返す東大生や、起業して数億円を稼ぐ東大生など、様々な人が出演。同時期にX(旧ツイッター)を追っている限りでは、今回もなかなか盛況だったようでした。

 ですが、本番組がいま炎上しています。MCを務める明石家さんまさんが、大津くんの吃音をバカにするようないじりを連発したため、「旧時代的だ」と叩かれているのです。

 本番組に出演した西岡壱誠さんによれば、収録前のスタジオにて、二人は和気あいあいと話し込んでいたといいますから、これは「変わった東大生」をいじる演出と見るべきでしょう。

 このような演出を嫌う東大生も、私の周りには多いのですが、私個人としては、喜ばしい流れだと感じています。それは、東大のレベルが、いい意味で下がってきていると思えるからです。

◆「東大生」が下ってきた

 昨今の東大番組は、『東大王』のように、常人離れした能力を披露するものと、『さんまの東大方程式』のように、面白おかしく東大を取り上げるものがあります。

 特に後者のような番組の出演前後から、「東大生=おかしな人」というレッテルが増えました。それまでは、ただ「頭がいい人」だったのが、「変なこだわりがある」とか、「視点が独特」とか、面白おかしく報じられるようになったのです。

 もちろん、これによる弊害も存在しています。私の友人は、バイト先のカフェの面接にて「東大生ってことは、なんか変わった特技もっているの?」と質問されたそうです。

 塾や予備校、家庭教師の面接などでは絶対に言われない一言。「東大生」の存在が、どれだけ世間離れしているかを感じさせます。

 ですが、これは同時に「親しみやすさ」を振りまいているとも取れます。私の父から聞いた話では、彼が学生だった頃は、ある程度の学歴をもって単純作業や肉体労働のバイトに応募すると、面接で必ず嫌味を言われたそうです。高学歴に対する偏見が、今よりも拒絶する方向へ強かったのでしょう。

◆良くも悪くも求められる「東大らしさ」


 学歴をつけて損はないように思えますが、一概にそうとも言い切れません。

 池田渓氏による『東大なんて入らなきゃよかった 誰も教えてくれなかった不都合な話』(飛鳥新社)には、東大に合格したはいいものの、うまく社会になじめず、高学歴が足かせになってしまった人々の後悔の声が載せられています。

 ある程度以上の学歴をもって、「東大生らしくない進路」を取ると、「東大を卒業したのに、どうしてこんなところにいるの?」と必要以上に周囲の注目をひいてしまいかねない。

「東大卒」の肩書が欲しい人は数多くいるでしょうが、考えている以上にこの肩書は己の進路と考え方を縛ってきます。

「一流商社」「外資金融」「官僚」あたりを中心とする超有名企業に入社して、高学歴集団の中で生きないと、浮いてしまうのです。それも、「東大」のもつイメージが招いたことでした。

◆東大に興味を持つ人が増えてくれたらそれでいい

 ですが、『さんまの東大方程式』などから東大生いじりの流れが始まったことで、今ではある種の親しみを持って受け入れられる場面も増えてきたように思います。

 もちろん、現実と乖離した見せ方であることは否めませんが、それでも「血の通っていない能力主義の機械人形」のように思われるよりは随分とマシです。

 また、高校生に進路選択を説く身としては、ここから東大に対して興味を抱いてくれる子どもが増えると、よりよいとも思います。

 従来の「頭がいい人が行くところ」というお堅いイメージを払拭して、「ユニークな大学」と上書きされれば、学力に自信がない学生でも目指すきっかけになるかもしれません。

 今後も東大のイメージが、より開かれたものになることを祈っています。

―[貧困東大生・布施川天馬]―

【布施川天馬】

1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)