さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはソワソワと向かう場所だ。
今回は、そんなラブホで働く従業員から見て、ちょっぴり変わった客のエピソードを紹介する。
◆知り合いの既婚者男性の隣には美女がいて…
実家がラブホ街にあり、そこで育った富永なおさん(仮名・20代)は、学生時代に地元のラブホでアルバイトをしていた。
「近所のラブホでフロント業務をしていました。ある日、フロントのカメラで見覚えのあるナンバーの車に気づいたんです」
富永さんが「知り合いの車じゃない?」と思いながら、「奥さんと来たんだ。夫婦でもラブホを使用する……当然だよね」とスルーしようと思ったが、違和感を覚えたそうだ。
「明らかに隣にいる女性が奥さんじゃないんです。男ってこんなもんよねって思っていると、フードの注文をしてきたんです。ただし、ここはラブホなので。できる限り顔を見せずに運ぶことが暗黙のルールなんです」
◆まさかの鉢合わせ「何してるの?」
富永さんが部屋まで運んだところ……。
「サッとフードを置いて帰ろうとしたら、男性が扉を空けるのが早かったんです。鉢合わせしてしまいました。ただ、男性は落ち着いていて、『何してるの?』って聞いてきました。それ、こっちのセリフですよね(笑)。『あんたこそ、何してるの?』と返しましたよ」
さらに男性は悪びれるようすもなく……。
「俺、今不倫中なんだよ! 秘密にしておいてな!」
富永さんは、「クズよね!」と一言。
「2人が帰ったあと、私が清掃に入ったんだけど、お風呂場がすごい汚れていて、一体どんなことをしていたのか……」
ラブホで働くと、さまざまな修羅場に遭遇しすぎて、「ちょっとやそっとじゃ動じなくなる」と、富永さんは話す。ちなみに、その男性は不倫相手を変えて、現在も不倫中だそうだ。
◆大雨の日、1人でラブホを利用する常連客
「常連客のTさんは、明らかに1人で利用していたんです」
ラブホで清掃員をしていた鈴木泰輔さん(仮名・20代)は、印象に残っている常連客のTさんについて話してくれた。
Tさんは、不定期にラブホを利用しており、当初は通常の客と変わらない印象だったという。
「チェックインの際には必ずフロントスタッフに軽くお辞儀をし、とても礼儀正しいので、少し印象に残るくらいでした。しかし、時が経つにつれてTさんへの違和感が増すことになったんです」
大雨が降り、客が誰もいない夜に、Tさんが1人でチェックインしたそうだ。翌朝まで誰も入室せず、誰もドアを開錠しなかったという。つまり、Tさんが部屋から出ることも、ほかの客が入室することもなく、「ラブホなのにずっと1人で過ごしていた」と鈴木さんは言う。
◆ビジネスホテルの代わりに利用?
「1人でチェックインされるお客様の多くは、後からパートナーが入ってくるものですが、Tさんはずっと1人で利用していました」
その日を機に、「Tさんはいつも1人で宿泊しているのではないか……」と、思い始めたそうだ。
「部屋のタイプにはまったくこだわりがなく、チェックインやチェックアウトのときもスーツ姿。きっと、ビジネスホテルの代わりに使用しているのだと思いました。さらに、ラブホのポイントカードも貯めていました。ポイントが貯まると、その特典として無料の食事が提供されます」
Tさんがラブホと知ったうえで利用していたのか、それとも知らずに利用していたのかはわからない。しかし、宿泊料やサービスを考慮すると、「1人で利用するというのも、なかなかよい考えだなぁ」と、鈴木さんは思ったという。
あとから調べてみたところ、コロナ禍でビジネスマンのテレワークが普及して以降、都心部では意外な穴場にもなっているらしい。“テレワークプラン”を実施しているラブホまで存在しているようだ。
<取材・文/資産もとお>
―[ラブホの珍エピソード]―