私はメロン農家のオーナーをしています。私たちの目標は、1つずつ手間暇をかけて育てたメロンをたくさんの人に知ってもらい、食べてもらうこと。今日は共同経営者の夫と、以前からの取引先である大手スイーツ店にとれたてのメロンを届けに来たときのお話です。

新社長が…!?

懇意にしてくれていたスイーツ店の奥から現れたのは、ふてぶてしい態度の男性でした。「オヤジは体調を崩して引退した。息子の俺がこの店を継いだわけだが、あんたらは何の用ですか?」

私たちは先代の様子を尋ねつつ、来店の理由を説明。「先代よりご依頼いただいていたメロンを届けにまいりました。いつもありがとうございます」

そして、納品書を手渡すと、二代目社長は一瞬で不機嫌な顔に。「これ、高すぎるよな? ぼったくりじゃねぇかよ」と眉をひそめたのです。

「いえ、いつもこの値段でお取り引きいただいているのですが……」と説明しても、聞く耳持たず。「今どき海外産ならこの半額でも買えるぞ。もっと安くしろよ!」

私たちは、コストと手間暇を算出したギリギリの価格であることを伝えたのですが、一向にらちが明きません。

「もういい、オヤジはどうだったか知らんが、俺はもっと安いメロンを探すから、さっさと持って帰れ。取引終了だ」と、メロンともども追い返されてしまったのです。

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私たちのメロンは?

その後、何とこの新社長がうちの農家に嫌がらせをスタート。他の取引先にも「メロンはまずいくせに高い」などと根も葉もないウワサを流し、営業を妨害してきたのです。

しかし、せっかく作った大切なメロンを売り残して無駄にするわけにもいきません。私たちは、ひと口でも味見をしてもらえれば価値がわかるはず、と新たな取引先を見つけるため、メロンをトラックに積んであちこち回ることにしました。

そんなある日、たまたま公園を通りかかると、一組の親子がベンチに座っているのが目に入りました。何だか困っている様子を放っておけず、近づいてみると、ボロボロの服を着てとても痩せて見えたのです。「あの、大丈夫ですか?」とおそるおそる声をかけると……。「実は、お金がなくて、ずっとろくに食べていなくて……」

私はトラックからメロンを出し、果物ナイフで切り分けてその親子に渡しました。「どうぞ。このメロンは甘くて最高の出来なんです。でも食べてくれる人が見つからなくて……。よかったらどうぞ」

すると、男の子が手を伸ばして頬張りました。「ありがとう! このメロン、甘くておいしいよ! ママも食べてみて」「まあ、本当。こんなにおいしいメロンを食べたのは初めてよ」

親子は涙を浮かべながらメロンを食べてくれました。それは私たちにとって本当にうれしい光景。「あの、よかったらたくさんお持ちください」と、残りのメロンも手渡したのでした。