さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはソワソワと向かう場所だ。
ラブホでは、基本的に客と従業員が顔を合わせることはなく、謎に包まれている。いったい、どんな人たちが働いているのか。実家がラブホ街にあり、学生時代はラブホで清掃員のアルバイトをしていた前田裕子さん(仮名・20代)が教えてくれた。
◆ハローワークにラブホ求人を出す企業もある
そもそもラブホの求人は、どのように募集されているのだろうか。
「私が暮らすラブホ街では、ホテルの看板の隅などに“スタッフ募集”と貼られていることがあります」
ほかには、ハローワークに求人を出すラブホもあるようだが、じつはさまざまな事業を展開する企業が多いそうだ。また、前田さんのように「暇なら働かない?」と声をかけてもらうパターンもあるのだとか。
「ラブホだって、雇用契約の内容などはしっかりしていますし、税金や保険料も発生します。面接では履歴書も必要なんですよ。契約書なんて交わさずに、こっそりと働けて、日払い、ドタキャンしてもいい……なんて考えている人もたまにいますが、そんなことはありません」
また、「うちを志望した理由は?」と、一般企業の採用面接のような内容も聞かれるという。接客業の場合は「接客が好きで」とか「人とお話しするのが好きで」と答えるだろうが、ラブホは少し異なるようだ。
◆応募動機は「できるだけ人と関わりたくない」がほとんど
「『できるだけ人と関わりたくない』という人がほとんどです。あとは、ホテル街に住む人たちが近場で働けるからだったり、時間の融通が利いたりといった理由です」
時間の融通でいうと、前田さんの見解では、24時間営業のコンビニよりもラブホのほうが人気があるそうだ。もちろん、立地にもよるのだろうが、ラブホの仕事はなんとなくヒマそうなイメージがあるからだろうか。
では、募集要項にはどのような内容が記されているのか。ハローワークや求人サイトに記載しているラブホはというと……。
「アットホームな職場です」
「ブランクありでもていねいに説明します」
「社割制度あります」
などがある。そして、ラブホ特有の内容が意外と魅力的だという。
「ペアで働くので、慣れるまでベテランが指導します」
「ウォーターサーバーでいつでも水分補給可能」
「勤務時間はご相談に応じます」
そんななかで、前田さんがもっとも衝撃を受けたのは……。
「当社で使用できる宿泊割引券贈呈」だった。何店舗か支店のあるラブホだが、「割引券をもらって実際に使う人がいるんだろうか」と、前田さんは思ってしまったそうだ。
◆ラブホのバイトで長続きする人とは…
「どんな仕事でも長続きする人、しない人っていますよね。私が働いていた時期に、後から雇用された数人の後輩がいました。しかし、不思議と長続きしている人は、パートのおばさまたちなんです」
いったい、なぜか? こんなことを話していたという。
「子育てもひと段落し、時間的にちょうどよいのよー」
「孫にお小遣いをあげたいしね」
彼女たちは「おばちゃんだから仕事覚えが悪いけど、よろしくね」と気さくな雰囲気。面倒見もよく、手料理を差し入れしてくれることもあったとか。逆に長く続かなかった人は、どんな理由で辞めていくのだろうか。
◆すぐに辞めてしまった人たちの退職理由にア然!
「他人の情事の片付けなんて汚い」
「思ったよりも忙しい」
事前に仕事内容の説明を受け、納得したはずなのだが……。
「いや、あなたも私もその情事の果てに生まれているんですが……と言いそうになりました。ラブホは金髪でもネイルがゴテゴテでも、基本的には何も言われません。数時間に1回清掃する以外は、内勤です。それを“忙しい”と感じる人もいることに驚きました」
とはいえ、「辞める理由があって去る人はまだよい」と前田さん。中には、いきなり出社しなくなる人もいるようだ。また、理由を聞いても理解しがたいこともあったという。
「監視カメラで部屋のようすを見ることも仕事だと思っていた」
「音や声が部屋から筒抜けかと思っていた」
あくまで仕事にもかかわらず、何を期待しているのか……。
「情事を見たり聞いたりしたかったのに、それらができなかったから辞めるということなんでしょう。働く意図が不誠実すぎて、何も言えませんでした。ちなみに、部屋に監視カメラはついていません。カラオケを設置している部屋があるくらいですから、防音になっています」
また、ほかのパートに聞いた衝撃の退職理由があるそうだ。
「このラブホには変わったお客様がいて、お誘い(相手を頼まれること)があると聞いたので応募したのに、まったく呼ばれないから」
オーナーは「うちのラブホにそんなうわさが……」とひどく落ち込んでいたとか。
<取材・文/資産もとお>
―[ラブホの珍エピソード]―