言語化にまつわる書籍などには「伝え方」について解説したものが数多くあります。しかし、伝え方は言語化の仕上げのスキルであり、まずは自身の思考を整理し、何を伝えるかを明快にする必要があります。今回は山口謡司氏の著書『言語化100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、日頃からできる「思考整理術」を2つ紹介します。
「会話がうまくできない」のは思考が明確になっていないから
同僚や部下から何か意見やアドバイスを求められたとき、友人や家族との他愛もない会話の中で、振られた話題にどのように返せばよいか悩んだことはないでしょうか。
頭の中にぼんやりと浮かぶ考えはあるものの「おもしろい」「素晴らしい」「不安だ」「つまらない」といった感情的な意見・感想で、会話が途切れたという経験に身に覚えがある人は多いでしょう。このような頭の中の思考をうまく言語化できない人には、主に2つのタイプが当てはまります。
1つめは思考がモヤモヤするタイプです。このタイプは頭の中に意見や感想が浮かんでいても、他のさまざまな考え方や視点が絡み合ってうまく言語化できません。自身の発言によって相手が不機嫌になるのではないか、この話題を振れば相手に喜んでもらえるのではないかと、あれやこれやと考えてしまうことで、思考が知恵の輪のように結びつき、結局何を話せばよいかわからなくなってしまうのです。
一方、2つめは意見がぱっと出ない・何も思いつかないタイプです。このタイプは自身の思考が浅い(深められていない)/狭い(幅を広げられていない)ため、たとえ言語化したとしても簡素で深みのない言葉となってしまいます。
これら2つのタイプに共通する問題点は、思考が明確になっていないことです。そもそも、言語化がうまい人というのは、頭の中の考えがしっかりと整理されており、明確になっています。そして考えが明確だからこそ、意見や感想などを求められてもすぐに言語化できますし、相手が心から望んでいる効果的な回答につなげられるのです。
漠然と考えるだけの状態では、いざプレゼンや交渉の場のような本番を迎えても、うまく言語化できなくて当然でしょう。そうした状況から一歩を踏み出し、考えを明確にしていくには、浮かんだ考えの中から自身が本当に伝えたいと思えることを取り出す作業が必要になります。
そして、自身が必要とする思考を選別するためには、思考を頭の中で整理するという作業が欠かせません。そこでここからは、普段から意識できるような思考を整理する術についてご紹介していきます。
【ポイント】
●感情的な反応が多くなっていないか。
●頭の中の考えをしっかりと整理する。
●頭の中を整理すると思考が明確になる。
●明確な思考は相手へ効果的に伝わる。
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具体的な情報を3つ挙げられるようにする
世に出ている言語化にまつわる書籍には「伝え方」について解説したものが多くあります。しかし、伝え方はあくまで言語化の仕上げの作業です。基礎ができていないにもかかわらず、仕上げから始めていては、うまく応用できなくても当然でしょう。
そのため「どう伝えるか」を第一に考えるよりも「何を伝えるか」を考えることが先決です。ただし、単純に語彙力を鍛えればよいわけではありません。語彙を組み立てて、具体化していく作業こそが大切なのです。
ここでの具体化とは、言葉の解像度を上げるということ。たとえば、画素数の低いカメラで撮った写真は、ノイズがひどく鮮明ではありません。言語化にしても同様で、言葉の解像度が低いと話がぼんやりとしており何を伝えたいかわからなかったり、抽象的すぎて自身と相手が浮かべているイメージにギャップが生まれたりします。
言語化の定義は、自身の考えが相手にしっかりと伝わることであり、言い換えれば言葉の解像度を上げる作業こそが言語化における最も重要な行程だといえるのです。
その中で、誰しもが持つ言葉の解像度を上げられる話題があります。それは趣味や好きなものについての話題です。興味があることを話しやすく感じるのは、日頃から情報を頭の中にインプットしているからだといえます。
たとえば、あなたが野球を好きだったとしましょう。ほどほどに好きな人であれば「昨日の試合、熱かったよね」といった漠然とした感想で終わります。一方、趣味にしている人は「先制点は2塁ランナーの積極的な走塁意識によるものだ」「キャッチャーが打者に的を絞らせないリードをしたことで抑えられた」という形で、細部の分析まで行うでしょう。
裏を返せば、普段から無意識に行っていた「細かい情報を具体的に洗い出す」作業を、これまで興味がなかったジャンル・テーマでも意識的に行えば、言語化能力のアップにつながるともいえます。
そして、洗い出す作業を行う際のポイントは、具体的な情報を3つ挙げるということです。この3つの情報を、伝え方のテクニックによりうまく組み立てていけば、あなたの考えは相手へ最大限に伝わるでしょう。
【ポイント】
●「何を伝えるか」がはじめの一歩となる。
●具体化とは、言葉の解像度を上げること。
●趣味の話がスラスラと出るのは細部まで分析しているから。
●3つの具体的な情報と伝え方のテクニックを組み合わせる。