「なぜ?」で自問自答する…形容詞に逃げるな

あなたは映画を観たり、音楽を聴いたりした際に「ヤバい」という表現を多用していないでしょうか。日本人が使う抽象的な表現には、この「ヤバい」や「キモい」が代表的なものとしてよくあげられます。

しかし、これらの表現はいわゆる形容詞であり、本来であれば名詞をよりわかりやすくするために用いるものです。楽に思える形容詞に逃げず、それが「なぜヤバいのか」「どうヤバいのか」を考えると、物事の本質が見えます。

この行動の裏には「なぜ?」という探求心が介在しているのです。たとえば、あなたが友人とサスペンス映画を観に行ったとします。その後、友人から作品に対して「どうだった?」と質問を投げかけられました。ここで言語化がうまくできない人は「面白い」「素晴らしい」という感情的な意見・感想で終わってしまいます。

このようなざっくりとした意見・感想を具体化し、解像度を上げるためには「なぜ?」を意識するのが有効です。「なぜ、この作品は面白いと思ったのか」「なぜ、この作品は感動できるのか」と自問自答を繰り返し、理由を追求することで思考が整理され、相手に伝わる言葉へとつながります。

そして「なぜ?(=どうして)」を意識するうえで有効なのが、五感を使って表現する/周囲の人々の様子をもとに表現する/自身の過去や思い出と比較して表現するという3つの方法です。意見や感想を形容詞で片づけないためにもこれらを意識し、言語化していきましょう。

[図表1]形容詞を避けて言語化する (出所)山口謡司著『言語化100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)

【ポイント】

●「ヤバい」といった形容詞に逃げない。

●「なぜ?」という自問自答を意識的に行う。

●自問自答により、思考が整理されていく。

●結果的に言葉の解像度が上がる。

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「たとえば?」で類似点を探る⇒具体化力がアップ

「なぜ?」という自問自答を意識的に行うことは、自らの思考を深める手段として最も使われる手法です。しかし「なぜ?」の段階では、まだ深く掘れる余地が生まれたり、疑問のままで完結してしまったりする可能性があります。

そこで使えるのが「たとえば?」という視点です。「たとえば」は具体化力を伸ばし、話を圧倒的にわかりやすくしてくれます。実際にあなたの周囲にも会話に「たとえば」を使う人がいたら、注意深く聞いてみてください。きっとその人の話はわかりやすく感じることでしょう。

また「たとえば」は主に4つの意味(使い方)に分かれ、その汎用性に利点があります。それぞれの特性を理解して用いれば、より深く思考を整理できるでしょう。

「たとえば」の応用には、比較する対象を見つけて類似点・相違点を洗い出す手法が使えます。商品を宣伝するポスターを作成する際などに、競合他社と自社のデザインやキャッチコピーを比較することで、自分には気づけない問題点や魅力を浮き彫りにすることができるでしょう。



[図表2]「たとえば?」は汎用性が高い 出典:goo辞書

【ポイント】

●「たとえば?」は具体化力を伸ばす。

●具体例があるだけで、話が圧倒的にわかりやすくなる。

●「たとえば」の4つの意味を理解する。

●場面や状況に応じて「たとえば」を使い分けよう。

【監修】山口 謡司

大東文化大学名誉教授、平成国際大学新学部設置準備室学術顧問

1963年、長崎県に生まれる。フランス国立社会科学高等研究院大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経る。 著書にはベストセラー『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)をはじめ、『文豪の凄い語彙力』『一字違いの語彙力』『頭のいい子に育つ0歳からの親子で音読』『ステップアップ0歳音読』『いい子が生まれる 胎教音読』、監修に『頭のいい一級の語彙力集成』(以上、さくら舎)などがある。