夫婦がペアローンで住宅を購入すれば、2人でローンを組む分、高額な住宅が購入できる可能性があるというメリットがあります。しかし、ペアローンには“思わぬ落とし穴”も存在するのです。世帯年収1,100万円の共働き夫婦を例に、ペアローンの注意点と家を買うための“ベストプラン”をみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。
マンション購入「契約直前」のA夫婦だったが…
年収700万円の夫Aさん(34歳)と、年収400万円の妻Bさん(31歳)は、現在都内で家賃15万円の1LDKの賃貸マンションに住む新婚夫婦です。
2人はこれからのライフプランを描くなかで、「子どもが生まれたらこのマンションでは狭いし、毎月の15万円も家賃を払うのはもったいないよね」という話になり、都内で2LDKの分譲マンションを探すことにしました。
マイホームの予算は、Aさんが以前会社の先輩から年収の5~7倍(年収倍率)が目安と聞いたことがあり、Aさんの収入だと3,500万円~4,900万円くらいの物件です。しかし、この金額で購入できる物件は、候補エリアには到底見当たりません。
そこで2人で話し合った結果、Bさんの収入も加えて5,500万円~7,700万円までの物件を探すことを決めました。
予算をあげたことで不動産の担当営業マンもがぜんやる気に。すると、予算変更を伝えてわずか数日で、予算の範囲内に収まるマンションを発見したとの連絡が。内見に訪れたA夫婦は、担当営業マンの「このレベルの物件はしばらくでてこないと思いますよ。すでに数件の内見予約も入っています」という言葉もあり、ペアローンでの購入を決意しました。
早速購入資金の7,000万円を借り入れるため、その物件の販売業者に紹介されたC銀行で住宅ローンの仮審査を申し込むことに。仮審査を無事に通過した2人は、翌週に販売会社と売買契約を結ぶと同時に、C銀行に住宅ローンの本審査を申込む段取りとなっていました。
しかし、このタイミングで「本当にこの契約を交わしてもいいのか」と突然心配になったBさん。マイホーム購入直前ということで完全に浮足立っていたAさんを説得し、筆者のところに相談にみえたのでした。
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夫婦の返済プランがはらむ「破産」の危険性
A夫婦によると、購入予定のマンションの価格は、諸経費などを除いて7,800万円だそう。予算上限よりも100万円オーバーですが、そこは納得しているとのことでした。7,800万円のうち800万円は準備していた頭金を入れ、残りの7,000万円をAさんが5,000万円、Bさんが2,000万円、C銀行のペアローンで返済する流れとなっています(借入期間30年)。
購入後、毎月の返済額は、Aさんが14万9,595円、Bさんが5万9,838円で、夫婦で20万9,433円です。現在の家賃と比べて毎月5万円ほど負担が増えるものの、その分は外食や旅行の回数を減らすことで十分補えるという算段です。
ここで気をつけなければならないのが、銀行から借りられる金額と、滞りなく返済できる金額は異なるということ。よって、銀行から融資を受ける金額の目安は、上記の年収倍率のほかに、返済比率も考慮しなければなりません。
返済比率とは、額面の年収に占める年間のローン返済額の割合のことで、おおむね30~35%以内であれば融資を受けられると言われています。しかし、筆者はこれまでの業務経験から、住宅ローンを滞りなく返済するには「返済比率15%~20%」が妥当だと感じていました。そのため、A夫婦の返済比率はAさんが25.6%、Bさんが17.5%(平均21.5%)と若干高いように感じます。
また、金利について、今後は上昇が見込まれるとの説明を受けた夫婦でしたが、実際にあがってから考えることとして、年利0.5%の変動金利型ローンで考えているとのことでした。
ここまで聞いた筆者は、まず、夫婦の描いている通りにライフシミュレーションを実施しました。その結果、Aさんが定年予定の65歳で、住宅ローンは完済できる予定です。
しかし、退職金を考慮しても、Aさんが70歳を過ぎるころから家計が傾きはじめ、最悪の場合、破産に向かうかもしれないということが分かりました。