歴史に名を残すほどの投資の達人に対しては、「一般人が理解できないほど大胆な考え方・天才的なひらめきで成功した」といったイメージを持ちがちです。しかし、実際にはそういった面だけではなく、ある種の忍耐力を持つことが成功に繋がっているようです。本記事では『株式投資 100の金言』(さくら舎)から一部抜粋し、著者の〈桑原晃弥氏〉が、山崎種二やバフェットの金言を基に、「コツコツ・地道」が大切な理由をご紹介します。

儲けた金には損がついて回る。貯めた金には信用がつく

相場の神様と呼ばれた山崎種二(やまざきたねじ)は立志伝中の人物です。明治41年、尋常小学校を卒業すると同時にわずか86銭を懐に東京に出た山崎は、山繁商店の小僧として商売人人生をスタートさせ、やがて米相場の下地を身につけて成功、のちに山種証券(SМBC日興証券)を創業、山種美術館も設立しています。

山崎の商売の基本は、派手な儲けを狙うよりも、地味な儲けを大切にするやり方でした。投資に限らず、どんな商売もそうですが、大きく商売をしようとすれば、大きな資金が必要になります。そのためには信用が欠かせません。

そこで山崎は毎月毎月コツコツと預金を積み、借りたお金は必ず期日には返すようにしました。相場の儲けに比べれば銀行の利息などわずかなものですが、山崎にとって大切なのは「いくら貯めたか」ではありませんでした。

毎月毎月コツコツと貯金を続ける意志の強さや、人並みならぬ努力こそが重要で、その地道な姿勢こそが信用につながると山崎は考えたのです。

相場の世界はどれほど派手に儲けても、たった一回の失敗ですべてを失うこともある世界です。山崎によると、相場を当てた人の話は数限りなく聞くものの、最後までうまく行った人の話はとても少なかったと言います。

儲けた金には損がついて回るのに対し、貯めたお金には人としての信用がついてくるのです。

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投資とは、消費を延期すること

「投資とは何か」の答えは人によっても違うかと思いますが、ウォーレン・バフェットは「投資とは、消費を延期すること」と言い切っています。つまり、手元にあるお金を今、何かに消費するのではなく、それを投資することで将来、より大きなお金になって戻ってくるという意味です。

その根拠の一つが「複利の力」です。今の日本では預金にしろ貯金にしろ金利は微々たるものですが、かつてそうであったように100万円を年利5%、半年複利で預ければ10年後には163万円になります。

バフェットをはじめとする忍耐強い投資家の根底にはこうした「商品を延期して投資することで将来大きなお金が戻ってくる」という考え方があります。バフェットと並び称される投資家ジム・ロジャーズは学生時代には奨学金を運用し、軍隊時代にも指揮官のお金を運用するなど早くから投資で成果を上げていますが、一方でお金を使うことにはある種のためらいがあったと言い、こう話しています。

「若者が節約し、正しく投資する1ドルは後に20倍になって返ってくる」こうした考え方が習慣になっていれば、たしかに投資家はいくらお金を持っていたとしても、「今、そのお金を使う」ことにはためらうかもしれません。

投資とは、今の消費を延期して、将来、大きなお金を手にするものなのです。

桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト

※本記事は『株式投資 100の金言』(さくら舎)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。