米の品薄、それに伴う価格高騰など、令和版「米騒動」が収まる気配がない。
今年5月ごろから小売店などにおける米の品薄状況がテレビやネットニュースなどで報じられると、SNS上でも心配する声が広がった。
さらに、8月には九州南部で発生した地震に伴う気象庁からの南海トラフ地震臨時情報の呼びかけや、神奈川県で断続的に地震が発生したことなどから、米の備蓄需要が増加。SNSを中心に「マジで米売ってない」といった書き込みが多く見られるようになった。
一方、この期間に農林水産省は一貫して「米の需給は逼迫(ひっぱく)していない」としてきた。
弁護士JP編集部では7月と8月に、米の流通状況について農水省の担当者に取材をしており、「1993年の大凶作とは状況が全く違う」「(米の在庫率は)決して過去になかった水準ではない」「新米が出回るまでの入れ替わりの時期であり、局所的に不足感が出ているのでは」との回答を得ていた。
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こうした中、大阪府の吉村洋文知事は8月26日、府内で米の入手が困難な状況になっているとして、政府に「備蓄米」の放出を要請。2日の会見でも再度放出を求めていた。
備蓄米を放出する基準とは?
吉村知事の要望に対し、坂本哲志農水相は「米の需給や価格に影響を与える恐れがある」と述べるなど、政府は備蓄米の放出に慎重な考えを示している。前出の農水省担当者も、再度の取材に対し「放出する基準には該当していない」と話した。
国は100万トンの米を備蓄しているが、これは仮に、その年の米の生産量が大きく減少した場合、生産した米とあわせて、国民が1年間は国産米を食べることができる量とされている。
そして、著しい民間在庫の減少や価格の高騰が起きた際には、国の食料・農業・農村政策審議会が総合的に判断し、備蓄米の放出を決定するという。前出の担当者は「米の生産量が10%、20%と減少してしまった場合には、必要に応じて放出する」と説明した。
2024年産の米の生産量は確定値がまだ出ていないものの、現時点での統計データなどでは、水稲の順調な生育状況が確認できているという。これらの点から農水省は現状、備蓄米を放出する基準に至っていないと整理している。
農林水産省「令和6年産水稲の8月15日現在における作柄概況」より
新米の流通で「品薄は順次回復」
ただ、一部のスーパーなど小売店で米がいまだ品薄状態にあるのは現実的な問題である。一般の消費者が一番気にしているのは、「いつ“米不足”が解消するのか」だ。
これらについて、前出の農水省担当者は「いま現在、非常にご不便をおかけしているのは事実。それはしっかりと受け止めさせていただく」としながら、以下のようにコメントした。
「8月の南海トラフ地震臨時情報の呼びかけ以降、急激な販売量の増加がありました。
農水省としては、こうした一時的な短期的・一時的な供給の減少や地域的な偏りに対しては、備蓄米を放出するのではなく、しっかりと円滑な流通、供給を行っていただくよう、米業界への働きかけることで対処していきます。
現在、新米の流通はすでに始まっており、千葉県や茨城県など、主産県と呼ばれる県の米も店頭で確認できる状態です。
9月中には米の年間流通量の約4割が出回りますので、今の品薄の状況は順次回復していくと見込んでいます」
報道やSNS上で長く続いた“米騒動”だが、一日もはやく解消することを願うばかりだ。