データにも表れる、「国民の悲鳴」。本記事では日本銀行『生活意識に関するアンケート調査』より、余裕のない日本社会の実態を見ていきます。
日本銀行『生活意識調査』に見える国民の暮らしぶり
日本銀行は年4回、20歳以上の個人を対象にした『生活意識に関するアンケート調査』を発表しています。2024年6月調査でも「国民の声」の集計結果が明かされ、日本人の赤裸々な感情が露わになりました。
同調査によると、現在の暮らし向き(1年前対比)について「ゆとりが出てきた」との回答が減少し、「ゆとりがなくなってきた」との回答が増加しました。暮らし向きは悪化傾向にあります。
【現在の暮らし向き(1年前対比)】
2023年12月
「ゆとりが出てきた」4.1%
「どちらとも言えない」38.9%
「ゆとりがなくなってきた」56.2%
2024年3月
「ゆとりが出てきた」5.3%
「どちらとも言えない」44.3%
「ゆとりがなくなってきた」49.5%
2024年6月
「ゆとりが出てきた」3.6%
「どちらとも言えない」39.8%
「ゆとりがなくなってきた」55.7%
なお、2021年9月「ゆとりがなくなってきた」と回答したのは36.3%でした。それ以前も数年間に渡って「ゆとりがなくなってきた」は40%前後を推移してきて、コロナ禍に突入した時期にも大幅な上昇は見られませんでしたが(2019年12月「41.7%」、2020年3月「42.2%」、2020年6月「42.6%」)、それから2年ほどで20%も上昇したとは驚くべき事実です。
インフレと上がらない給料。株価や為替には現在変動が起きていますが、今後の暮らしにはどのような影響が出るのでしょうか。
同調査では収入の状況についてもアンケートを取っています。現在と1年前を比べて「収入はどうなったか?」、日本人の答えは下記のとおりです。
【現在と1年前を比べると…】
2023年12月
「増えた」12.7%
「変わらない」54.6%
「減った」31.7%
2024年3月
「増えた」12.7%
「変わらない」54.5%
「減った」28.5%
2024年6月
「増えた」15.9%
「変わらない」53.1%
「減った」29.6%
「変わらない」と答えた人が半数を超えているものの、物価が上がるなかで給料が変わらなければ生活は厳しくなる一方です。さらに「減った」と答えた人の割合は3割ほど。依然として苦しい生活を強いられている人の多さは、データを以て表れています。
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「価格が安いこと」「長く使えること」重視の日本人
「今後1年間の支出を考えるにあたって特に重視すること」を聞いたアンケートでは「今後の物価の動向」、「商品やサービスを選ぶ際に特に重視すること」では「価格が安い」がダントツ1位となりました。
【今後1年間、商品やサービスを選ぶ際に特に重視すること/複数回答可】カッコ内は2023年12月・2024年3月・6月の回答割合
1位 価格が安い(58.1%・58.3%・59.5%)
2位 安全性が高い(44.8%・44.7%・46.3%)
3位 長く使える(41.8%・42.1%・41.7%)
4位 信頼性が高い(40.6%・42.9%・40.7%)
5位 機能が良い(31.6%・31.3%・28.3%)
安ければ安いほど良い……は当然の心理といえますが、2021年12月のアンケートでは「1位 価格が安い、2位 安全性が高い、3位 信頼性が高い、4位 長く使える、5位 機能が良い」でしたから、「機能よりもコスト」の傾向は強まってきていると言えます。
日銀は物価の先行きについて、『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024年度に2%台半ばとなったあと、2025年度および2026年度は、概ね2%程度で推移すると予想される。』との展望を発表しています。
「穏やかな日常」とはほど遠い日本社会。主要各国の賃金は年数とともに上昇するなか、日本は停滞を続けてきました。苦しい生活から抜け出せる未来は、描けるのでしょうか。