古き良き温泉地から泉質の良い「美人の湯」まで網羅する、「秘湯」に恵まれた近畿・中国地方。温泉博士であり弁護士である小林裕彦氏の著書『温泉博士×弁護士が厳選、とっておきの源泉かけ流し325湯』(合同フォレスト)より、この地域で楽しめる源泉掛け流しの秘湯を見ていきましょう。
「奈良」「和歌山」でぜひ入りたい源泉かけ流し温泉
1.入之波温泉湯元 山鳩湯【奈良県】
奈良県の温泉というと、ピンとこない方がいるかもしれません。しかし、日本で初めて「源泉かけ流し宣言」をした十津川温泉郷は奈良県にありますし、ここもかなりレベルが高いです。近鉄吉野線・大和上市駅からバスで1時間もかかる、山奥の秘境にあります。
ナトリウム・カルシウムー炭酸水素塩・塩化物泉です。濃い茶色とカルシウム分の凝固した感じがいいでしょう。浴槽内の温泉の表面には、白いカルシウム分が浮いて膜を作っています。凝固途中のぶよぶよした半固形の物質も浴槽内に付着しています。浸かると、体にずっしりくる感じがします。濃厚な泉質のため、かなり疲れます。
2.湯川温泉 さごんの湯(ホテルブルーハーバー)【和歌山県】
さごんの湯は、日帰り利用できません。ホテル浦島などに行く船が出る勝浦港の近くにあるビジネスホテル、ホテルブルーハーバーに泊まると、無料で入れます。ただ、ホテル内に温泉はないため、車で10分ほど行くことになります。建物は、国道沿いにある素朴な小屋のような感じです。
さごんの湯がある湯川温泉は、夏生温泉などのように湯量が多い温泉地です。
それにしても、ここは源泉の注入量がすごいです。全国屈指といえるでしょう。しかも、単純泉なのに、微妙な硫黄の芳香も素晴らしい。泡付きもかなりあり、源泉の鮮度の高さを感じます。
泉質的には単純泉の域をはるかに超えています。
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日によって色が変わる!?…ミネラルたっぷりな温泉
3.湯の峰温泉 伊せや【和歌山県】
湯の峰温泉は、古き良き日本を感じられる温泉地です。この地に足を踏み入れただけで、どこか癒やされます。
伊せやは、「湯の峰温泉公衆浴場」の手前にあります。なかなか風情がある浴槽でしょう。
含硫黄ーナトリウムー炭酸水素塩・硫酸塩泉がかけ流されています。源泉が熱いので加水しているかと思いきや、熱交換器で冷ましているそうです。源泉本来の還元力が維持されて、つるつる感を感じられます。源泉へのこだわりが、誠にありがたいです。
大量に湯の花が浮いています。近くの「つぼ湯」ほどではありませんが、日によって色が変わるくらいのミネラル豊富な良い泉質です。
4.鳥取温泉 白兎会館【鳥取県】
公立学校共済組合の宿泊施設です。
鳥取市内には、「こぜにや」「丸茂」といった源泉かけ流しの良い温泉があります。全国で見ると、函館市、金沢市、山口市、鹿児島市などのように、街中に温泉が湧出している所がありますが、鳥取市もその一つです。
ナトリウムー硫酸塩泉の源泉かけ流しです。浸かると、とろみを感じます。肌に優しく、まったりとしたよく温まる泉質です。浴槽の中に入ったパイプから、熱めの源泉がかけ流されています。
JR鳥取駅から歩いて10分くらいの距離にあります。「この立派なホテルに、こんな本物の源泉かけ流しがあるの?」という感じの穴場的な温泉です。
5.美又温泉 とらや旅館【島根県】
島根県には、「三大美人の湯」の湯の川温泉、「三大美肌の湯」の斐乃上温泉があります。
とらや旅館のある、美又温泉のアルカリ性単純泉のとろとろ感、ヌルヌル感もかなりのレベルです。美又温泉には、いくつか日帰り入浴施設や旅館がありますが、すべて源泉かけ流しというわけではありません。とらや旅館は、こぢんまりとした感じにしては浴槽が大きく、しかも源泉かけ流しです。浸かった瞬間、体がとろける感じがして、泉質の良さに感動します。時間がたつのを忘れるくらい、長湯してしまう温泉です。
ここも立派な美人の湯、美肌の湯です。
小林 裕彦
小林裕彦法律事務所
代表弁護士