4月から咲く球根
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スノーフレーク
Leucojum aestivum:ヒガンバナ科スノーフレーク属
Photo/田中敏夫
スノーフレークはスイセンと同じヒガンバナ科に属し、スズランに似た白花をつけることから鈴蘭スイセンと呼ばれることもあります。丈夫で、適切な場所に庭植えするとよく分球して数年後には群生します。
黄房スイセンなどを追いかけるように開花し、次にご紹介するスパニッシュ・ブルーベルを合わせた3種を並べるように植え込むと、黄・白・青と鮮やかなコントラストを作ることができます。
スパニッシュ・ブルーベル
Hyacinthoides hiica:キジカクシ科ヒアシンソイデス属
Photo/田中敏夫
スパニッシュ・ブルーベルが属しているヒアシンソイデス属は、ヒアシンス(Hyacinthus)やシラー(Scilla)に近い仲間で、原種としては7種があります。
7種の原種のうち、ヒアシンソイデス・ヒスパニカ(H. hiica)とヒアシンソイデス・ノンスクリプタ(H. non-scripta)の2種が主に栽培されています。いずれもいくつかの園芸品種があり、両者の交配によって育成されたものもあります。ヒスパニカ種は、シラー・カンパニュラータの名前で流通することもあります。
ノンスクリプタ種は「イングリッシュ・ブルーベル」とも呼ばれ、樹木の株元などに群生し、イギリスの春の田園を青く彩る風景として知られています。花穂は細身で、花茎の上部が曲がって枝垂れるように咲き、花は片方向に寄っています。イギリスでは両種が混在するようになってしまい、次第にヒスパニカが優勢になっているようで、自生地の減少が懸念されています。
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5月から咲く球根
ダッチアイリス
Iris x hollandica:アヤメ科アヤメ属
ダッチアイリスは、スペイン原産のアイリスを交配親とした園芸種の総称です。主にオランダで育種され市場へ投入されたことから、“ダッチ(オランダ)”と呼称されています。
アイリスには日本由来のアヤメ(綾目模様が入る)、カキツバタ(白筋が入る)、ハナショウブ(黄筋が入る)などに加え、ジャーマンアイリスなど数多くの品種があります。しかし、日本古来のものには栽培に多少注意を払う必要があり、またジャーマンアイリスの場合は深植えを嫌いアルカリ土壌が好ましいなど、やはり地植えの他の植物とは幾分か異なる管理をしなければなりません。
その点、ダッチアイリスは青、黄、青黄の複色などに花色が限定されますが、一度庭に植栽してしまえば、後は放置しても毎年開花することが多く、管理がとても楽です。
開花は5月頃。ブルーのスパニッシュ・ブルーベルの花の後を追いかけるようにブルーやイエローの花が開くのは、春の楽しみでもあります。
Photo/田中敏夫
アリウム
Allium:ヒガンバナ科ネギ属
Jelena Safronova/Shutterstock.com
アリウムはネギ属の学名です。野菜の長ネギ、玉ネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウ、アサツキ(浅葱)なども同じ属に含まれています。園芸向きに植栽されるのは、主にギガンテウム (A. giganteum)、‘スター・オブ・ペルシャ’という美しい別名でも知られるクリストフィ (A. cristophii)、園芸種の‘サマードラマー’(A. ‘Summer Drummer’)などの大株になるタイプと、中型で青花が美しいカエルレウム(A. caeruleum)、ハーブとして利用されることが多いチャイブ(A. schoenoprasum)です。料理の薬味として使われるアサツキはチャイブの変種です。
大輪のアリウムは多くの庭でフォーカル・ポイントとなり、春の庭の華やかに飾ってくれます。よく植栽されるギガンテウムは宿根しますが、植えっぱなしでは夏に球根が腐ってしまいがちなので、堀り上げて保管する必要があるでしょう。
スノーフレーク、スパニッシュ・ブルーベル、あるいはハナニラのように毎年開花するといった持続性には欠けると感じています。しかし、近年は夏咲きの園芸種のなかに、耐暑性が強いものが市場へ出回るようになりました。
アリウムの品種バリエーション
ガーデニングでよく使われるアリウムの種類を一部ご紹介しましょう。
アリウム・ギガンテウム(Allium giganteum)
Photo/H. Zell [CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons]
直径10〜18cmほどの丸いボール状の花序になります。花色は主にパープル。大型種の代表的な存在です。
アリウム・クリストフィ (Allium cristophii ‘Star of Persia’)
Photo/BotBln [CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons
ギガンテウムと同様、大玉の花序となりますが、少しだけ小さめとなることが多いように思います。スター・オブ・ペルシャという別名のとおり、花序は少し散形気味となり、とても優雅です。
アリウム・ホランディカム(Allium hollandicum ‘Purple Sensation’)
Photo/Нацку [CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons]
パープルの花色の園芸種’パープル・センセーション’はギガンテウムとともに庭植えによく用いられる大型種です。
アリウム・カエルレウム(Allium caeruleum)
Photo/chernoburko [CC BY 2.0 via Wikimedia Commons]
シルバー―ブルーの中型種。
アリウム・丹頂(Allium sphaerocephalon)
Brookgardener/Shutterstock.com
花茎だけが60cm高さほどに伸び、先端にうずらの卵サイズの花序を付けます。花色は上がパープル、開花始めには下部に緑色が残ります。日本名の‘丹頂’もいい名前だと思っていますが、英語圏などではドラムスティックという別名で呼ぶことが多いようです。あまりにドンピシャなのでおかしいくらいです。
ギガンテウムやクリストフィよりも強健です。夏越しして毎年開花することが期待できます。
アリウム・モーリー(Allium moly)
Photo/Krzysztof Ziarnek, Kenraiz [CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons]
高さ50cmから70cmの中型のアリウムです。パープルの花色が多いアリウムの中にあって、数少ない黄色花品種です。この品種もアリウム‘丹頂’と同じように宿根化が期待できます。
夏咲き種
近年、シベリア地方を原生地とする夏咲きアリウム、A. ヌタンス(A. nutans)を交配親としたと思われる、7月から9月に開花する夏咲きアリウムが出回るようになりました。
Photo/Krzysztof Ziarnek, Kenraiz [CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons]
主に見かける品種は、
‘サマービューティー’(A. ‘Summer Beauty’):チャイブに似た淡い藤色の花。草丈30cmほど
‘ミレニアム’(A. ‘Millenium’):サマービューティーより濃色の藤色の花。草丈20cmほど
‘サマードラマー’(A. ‘Summer Drummer’):白花/淡い藤色の大輪花。草丈150~200cmの高性種
などです。
いずれも貴重な夏咲き球根ですし、植えっぱなしでも越冬することが多いと報告されています。園芸愛好家には嬉しいニュースです。
チャイブ(Allium schoenoprasum var. schoenoprasum)と食用花ニラ(Allium tuberosum)
ハーブとして利用されるチャイブやその変種であるアサツキ(Allium schoenoprasum var. foliosum)、また中華料理などの欠かせない野菜として利用される食用花ニラは、植えっぱなしで毎年繰り返し開花するという優れた特性があります。
チャイブは藤色気味のピンク、食用花ニラは白、と花色に違いもあるので、庭で混植してみると面白いかもしれません。
チャイブ(左)と食用花ニラ(右) Photo/optimarc、mizy/Shutterstock.com
チューリップ
Tulipa:ユリ科チューリップ属
魅惑の花チューリップについては、興味深い長い歴史があり、流通しているだけでも数千に及ぶという多くの品種があります。それ故、整理するのは簡単ではありません。今回は一般的なシングル咲きのトライアンフ系とユリ咲き系の品種をいくつかご紹介するにとどめます。
トライアンフ系は4月中旬に咲き、草丈30~50㎝。早咲きシングルと遅咲きシングルの交配により生み出されたよく整ったシングル咲きの花形が特徴的で、園芸種チューリップの中でもっとも多くの品種があります。また、ユリ咲き系はトライアンフより少し高性で、4月下旬咲きとなるものが多いです。
庭の4月中旬は、多くの宿根草や耐寒性の一年草が芽を伸ばし始める頃です。そうした芽出しの季節にあまり突出しない高さで開花をするチューリップとしてトライアンフ系を使い、他の植物が高さを競う下旬頃には少し高性で、花茎がカーブするなど優雅なユリ咲き系を用いるという考え方です。
トライアンフ系の品種例
‘ハッピージェネレーション’ (左)と‘アミュレット’(右)Photo/Agnieszka Kwiecień, Nova [CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons]、Guy Waterval [Apache License 2.0 via Wikimedia Commons]
ユリ咲き系品種例
‘バレリーナ’(左)と‘モナリザ’(右)。Photo/Anna [CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons]、 Agnieszka Kwiecień, Nova [CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons]
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 田中敏夫
– ローズ・アドバイザー –
たなか・としお/2001年、バラ苗通販ショップ「グリーンバレー」を創業し、9年間の運営。2010年春より、「グリーン・ショップ・音ノ葉」のローズ・アドバイザーとなり、バラ苗管理、楽しみ方や手入れ法、トラブル対策などを行っていた。現在フリー。