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アメリカ大統領選挙まで残り2ヶ月となるなか、日本では今月、岸田政権が発足3年あまりで終焉(しゅうえん)を迎え、新たな政権が発足する。現時点で誰が次の首相になるかは分からないが、誰になったとしてもこれまでの岸田外交の3年を継承することになる。現実的に岸田外交からの転換は考えられず、我々はまさに今、岸田外交の3年間を冷静に振り返る必要があるだろう。
◆達成された成果
まず、岸田外交の3年間で達成された成果とは何だろうか。人によって選定するものが異なるかもしれないが、外交・安全保障分野の専門家の間では岸田外交の3年をおおむね肯定する見方が強い。
筆者が最初に挙げるのは、ロシアによるウクライナ侵攻後の岸田政権の積極的な外交姿勢だ。岸田政権はウクライナ侵攻を国際秩序の安定に対する暴挙と繰り返し非難し、欧米との連携を強化すると同時にロシアへの制裁を強化していった。そのなか、岸田政権は昨年5月の主要7ヶ国首脳会議(G7広島サミット)でウクライナ問題を優先的に取り上げ、ゼレンスキー大統領の出席を実現させた。被爆地広島でロシアによる核の脅威に直面する国家のリーダーが、戦争の解決を世界へ訴える姿勢は極めて印象的だったと言える。
また、岸田首相は「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」と繰り返し強調し、ウクライナ(欧州)と東アジアを連動させることで、双方がグローバルな国際秩序をめぐる問題であることを印象づけた。岸田首相は日本の首相として初めて北大西洋条約機構(NATO)首脳会合に参加し、対中国、対ロシアを念頭に置いた日本(インド太平洋)とNATOの協力・接近の重要性を内外に強く示した。
そしてこれと関連し、極東アジア地域での軍事バランスを考慮すれば、今後韓国は日本にとって重要なパートナー国である。その韓国との関係を、2年前に誕生した尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と改善させたが、これも大きな成果だ。
分断が進む世界において、岸田外交は自由や民主主義、法の支配といった価値の重要性を改めて強く訴え、日本の存在感や危機感を欧米諸国に強く示したと言えるだろう。
◆残された課題
一方、相手があるので難しい問題でもあるが、日中関係では大きな変化は見られなかった。日本にとって中国は依然として最大の貿易相手国である一方、米中の半導体覇権競争、経済的威圧など、日本にとっては難しい経済的問題が蓄積している。台湾情勢でも有事への懸念が広がっているが、仮に有事となれば日中は対立軸で接していくことを余儀なくされ、それによって日中関係がさらに冷え込む恐れもある。近年の台湾をめぐる動向も、日中関係を難しくさせたことは間違いない。また、岸田政権が北朝鮮による拉致問題の解決を重視していたことは間違いないが、ここでも大きな変化を生み出すことは難しかったと評価できよう。