気象庁は8月8日、九州南部で発生した地震に伴い南海トラフ地震臨時情報を発表。一週間後の8月15日に解除されたが、臨時情報の発表直後から、SNS上では地震が「人工地震」であるといった“偽情報”が多く投稿され、拡散された。
1月に発生した能登半島地震でも、埼玉県に住む男性が、虚偽の「救助要請」を投稿。本来の救助を妨げたなどとして、偽計業務妨害の疑いで逮捕された。
能登半島地震ではほかにも、「被災者になりすまし、寄付・送金の呼びかけ」や、「画像を加工するなどした、偽の被害」「外国人の窃盗団が集まったといったデマ」が投稿されており、“偽情報”は社会的な問題となっている。
こうした中、警察庁は大規模災害時への対応力強化に向けた対策のひとつとして、警察が把握したSNS上の偽情報やデマ投稿について、事業者に対し迅速に削除要請を行うことを盛り込んだ。
デマ投稿、法的責任「十分自覚すべき」
この警察庁の対策について、インターネット問題などに詳しい鮎澤季詩子弁護士は「警察が偽情報の把握に乗り出したということは、偽情報の発信者の特定もされやすくなったといえるでしょう」と説明する。
その上で、偽情報を投稿する法的リスクについて次のように続ける。
「SNSにデマを書きこむだけでは、ただちにそれが違法とはいいきれません。ただ、逮捕者が出ていることからも分かるように、当然内容によっては刑事上の責任を問われる可能性があります。
たとえば、会社の業務活動を妨害すれば、偽計業務妨害罪に問われます。
2016年の熊本地震の際には、『動物園からライオンが逃げた』というデマがSNS上で拡散され、問い合わせが殺到。動物園は対応に追われることになり、投稿した人は偽計業務妨害罪の疑いで逮捕されました。
民事上でも、デマや偽情報によって対象者が被害を受けたり、信用や名誉が傷つけられたりしたと訴えられれば、損害賠償責任が生じる可能性があります。
また、被災者になりすまし金銭をだまし取ることは不法行為に該当し、被害者に対する損害賠償責任が生じます。
面白半分の安易な投稿だったしたとしても、刑事上・民事上の責任を負う可能性があることを十分に自覚すべきです」(鮎澤弁護士)
拡散前に「慎重な判断を」
一方で、災害時の偽情報やデマを、反射的に拡散させてしまった「拡散者」にも責任が問われるのだろうか。
鮎澤弁護士は、「偽情報と分かっていながらわざとその情報を拡散し、被害が生じた場合、法的には、偽情報の発信者と同様に不法行為責任に問われる可能性があります」と話す。
「前述した動物園のケースのように、デマや偽情報の拡散が被害拡大につながる可能性もあります。
拡散したいと思う投稿を目にしたときは、実際に拡散する前に、真偽について慎重に判断する必要があるでしょう」(鮎澤弁護士)
安易な気持ちで偽情報を流すのは論外として、自分自身がそうした情報を拡散し、被害を拡大させてしまわぬよう、ひとりひとりがSNSを使う上での“責任”を考える必要があるだろう。