人間なら116歳! SNSで注目されているご長寿猫「みけちゃん」。飼い主である「かあちゃん」が穴に落ちた仔猫を助けて、一緒に暮らすことになりました。初めはかわいらしかったその仔猫はあるとき…!? みけちゃんと家族の「普通で愛おしい」日常を、みけちゃんの飼い主であり、児童文学作家である村上しいこ氏の著書『25歳のみけちゃん』(主婦の友社)より一部抜粋・再編集してお届けします。
穴に落ちた仔猫を助けた日の話
あの日の朝、どこからともなく猫の声がしていた。気になっていたけどこのあたりには地域猫がいるし、声が聞こえてもおかしないわな、と思っていた。
ところがその声は方向を変えながら、そして時々聞こえなくなったりしながら夕方にはすぐ近くで聞こえるようになっていた。
あかん、カレー作っとる場合やない。猫や、猫。どっかに猫がおる。探さなあかん。
見つけなあかん。
普段入らないような、私の身長より高い雑草をかきわけ声のする方へ。
おった! おったで、みけちゃん! 猫おった! 見つけたで!
網戸の向こうから不安そうな顔をしてるみけちゃんに声をかけた。
穴に落ちて仰向けになった格好で両手足をバタつかせ鳴いている小さな猫がいた。抱き上げ膝に乗せると、細っこくて長い手足、大きな目、私の両手にすっぽり入る仔猫をエプロンでそっと包んで部屋に入った。
なんてちっちゃいんや。なんてかわいいんや。
どこから来たんやろ。ってか、アメショやん。
当時のみけちゃんの心境は?
―あのときはあたしもびっくりしたけど、今から思うとかあちゃんお手柄!
でも慌ててたわりに、アメショって高そうな猫やんって
そこは冷静だったにゃわ ―みけ
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「あれはサルよ!」…みけちゃんが語る、弟猫との新たな暮らし
草むらからやってきた“お客様”の仔猫は、あちこち探しても飼い主は見つからず、きっちり2週間後、あたしの弟になったの。
その頃には大きなケージ、ごはん用の食器、そしておもちゃもすっかり揃っていたから、一応あたしもおねえちゃんの心構えができていたのよ。
それにかあちゃんったら、もう名前まで考えてたの。
あたしのときと大違いだわ、ったく!
洗面所のお客様からあたしの弟ピースになったんだけど、名前は庭に咲いていたバラの品種からつけたんだって。
ミィミィ小さい声で鳴いたり、キャッキャ言いながら飛び跳ねたりしていた小さなピース。
あたし、初めてできた小さい弟をとてもかわいいと思ったの。
病気や虫の心配もなくなって家猫ピースになったんだけど、いきなりあたしたちと一緒の生活スペースではなく、まずケージのなかで過ごして少しずつ慣れていこうねってかあちゃんが言ってたわ。
最初はね、ケージのなかで一人遊びしたりお昼寝したりしてたんだけど数日後……。
ハン、ギャーッ!!
ほんっとにものすごーーーーく大きな声で、ケージのなかを走り回り、柵をよじ登り騒ぎだしたの! 指でケージをつかんでよじ登ってたのよ。
サルよ、サル!
猫が猿をかぶる、猿が猫をかぶる!
いやもう分かんないけど、とにかくすごかったわ。洗面所にいたときは猫をかぶってたんだわ、きっと。
あたし、びっくりしちゃってその日を境にピースがいた和室に近づかなくなったの。せっかく新居に慣れてきたところだったのに。おねえちゃんになるって、結構大変なのね。
村上 しいこ
児童文学作家