過去5万本の記事より大反響だった話をピックアップ!(初公開2022年9月29日 記事は取材時の状況) * * *
マクドナルドの「月見バーガー」といえば、秋の季語と言ってもいいぐらいすっかり定着しましたよね。今回は、そんな月見バーガーが結んだ恋の話をご紹介したいと思います。
ごく平凡な会社員の吉岡健二さん(仮名)は、高嶺の花とも呼べる女性と付き合うことになったそうですが、いったい、何が起こったのでしょうか?
◆芳根京子似の美人にフラれて…
吉岡さんは、2年前に同じ部署で働いていたY乃さん(派遣社員)に恋をして、思い切って告白しましたが「彼氏がいるので」とフラれてしまいました。
「当時、僕が29歳でY乃さんが27歳の頃です。Y乃さんは明るくてよく笑う芳根京子似の美人。めちゃくちゃモテるだろうなと思っていたので……そりゃ彼氏ぐらいいるよな、とわかっていながらも、かなり落ち込みましたね」
Y乃さんを好きな気持ちは残っていましたが、今後の関係が気まずくなるのが嫌なので、深追いせずにサラッと身を引こうと思いました。
「まだまだY乃さんのことを忘れられずにいましたが、僕自身があまり興味のない子からグイグイこられると怖くなってしまうタイプなので。ただ、そうこうしているうちに、Y乃さんは他社に転職してしまい会えなくなってしまったんですよ」
それを機にY乃さんのことをあきらめようと努力したそう。
◆たまに連絡する程度のゆるやかな関係に
「マッチングアプリに登録してみたり、友達が働いているバーの女の子を紹介してもらったりしたのですが、どの子にもさほど心を揺さぶられなくて」
どうしてもY乃さんのことばかり考えてしまう吉岡さんは……。
「次に“いいな”と思える女性が出てくるまで、ゆる〜くY乃さんにアプローチを続けてみようと思ったんです。Y乃さんの迷惑にならない程度に」
Y乃さんに会えなくなってからも、3ヶ月に1度程度のペースで、何気ないLINEを送ってみたりと、関係が完全には途切れないようにしていたそう。
「彼女が子供の頃から家族ぐるみで応援している野球チームが大勝ちした時とか『今がチャンスタイムだ!』と思い、Y乃さんにLINEしたら、超ご機嫌でユニフォーム姿の写真まで送ってきてくれました。こんなこともあるので、僕は野球はさほど得意じゃないのですが、スマホに野球速報アプリを入れてチェックしてるんです」
とはいえ、ここであまり調子に乗ってY乃さんとのラリーを続けてウザがられてしまっては元も子もないので、なるべくスマートに会話を切り上げるように意識していました。
「なるべく友達同士の雑談って感じのやり取りを心がけて、Y乃さんからも気楽にLINEしてきていいんだよって誘導しているつもりなのですが、全く上手くいかないんですよね(笑)」
◆「月見バーガー」を口実に誘う
そんな時、テレビで「今年も月見バーガー始まりました」のCMが流れた瞬間に吉岡さんはハッとしました。
「そういえば、Y乃さんと外回りで一緒だった時に『ランチはマックでもいいですか? 私、普段はあまりマックは食べないんですけど、月見バーガーは大好きで、この時期は何度も行っちゃうんですよね』とキャッキャッしながら美味しそうに食べていた姿を思い出したんです」
吉岡さんは、これを口実に誘えば久しぶりにY乃さんに会えるかも? と緊張しながらLINEをしてみました。
「するとすぐに『月見バーガーに誘われたのは初めてです!ぜひ行きましょう』と返ってきたので、飛び上がって喜びました。あれから1年経っているし、もしかしたら僕にもチャンスがあるかも? と密かに期待しながら会いに行きました」
◆悔しい気持ちをグッと堪えて…
そして、久しぶりに再会したY乃さんは、さらに美しくなっていたそう。その笑顔は相変わらず眩しかった……。しかし……。
「ドキドキしながらY乃さんに『最近どう?』と近況を聞いてみると、以前に僕が告白した時に付き合っていた彼とはちょっと前に別れたみたいです。ただ、また違う男性と最近付き合い始めたそうで、ノロけられてしまったんです」
吉岡さんは、Y乃さんに気づかれないよう静かにショックを受けました。
「うかうかしている間に、また先を越されてしまったと、悔しくて頭がおかしくなりそうでした。でもグッと堪えながら笑顔でY乃さんの話に付き合いましたよ。とにかく嫌われないで、彼女にとって気兼ねなく何でも話せる相手になることを目標に頑張ろうと思いました」
◆そして今年も「月見バーガー」の季節に
強がってはいますが、心は折れかけていました。たまにY乃さんにLINEしてみるものの、デートに誘う勇気はでませんでした。
「もうこのままフェイドアウトした方がいいのかな? なんて諦めかけていたある日『最近、連絡くれないんですね』とY乃さんからLINEがきたんです。ビックリして道路にスマホ落として画面が割れてしまいました(笑)」
今年の月見バーガーの販売開始日に再び会うことになった2人。
「やっぱり久しぶりに会えるのは格別に嬉しくてドキドキでした。でも、もしかすると『近々結婚することになったの』とか爆弾を落とされる可能性もあるので、何があっても泣かないぞ! と心に決めて挑んだんですよ」
◆緊張の近況報告タイム
こうして再び再会することになりましたが、明らかにふだんとは様子が違ったといいます。
「月見バーガーを食べながら、緊張の近況報告タイムがやってきたんです」
なんとY乃さんは現在フリーで「今年も(吉岡)健二さんから月見バーガーに誘われないかな?」と待っていたそうです。
「今回ばかりは舞い上がってしまいました。2度目の告白してみたら、やっとY乃さんが首を縦に振ってくれたんですよ。やっと報われたっていうか、世界中の人をハグして回りたいぐらい幸せな気持ちになりました」
近況報告中は、緊張で味のしなかった月見バーガー。両思いになってからかじってみると驚くほど美味しく感じたそう。
「また来年もY乃さんと一緒に月見バーガーを食べられるように、気を引き締めて嫌われないように頑張ります(笑)」
Y乃さんと交際するようになってからも個人の時間を大切にするよう心がけているという吉岡さん。自分本位にならず、焦らず、相手が受け入れてくれるタイミングを待ちながら近くに居続けたことが、高嶺の花とも呼べる女性と一緒になれた理由なのかもしれませんね。
<取材・文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。