Book15歳で雑誌モデルとしてキャリアをスタートし以降、世界の第一線で活躍し、近年は俳優やチャリティ活動でも注目を集める冨永 愛さん。
新刊エッセイに込めたメッセージを伺いました。
「今」の積み重ねが未来を作っていく
「幸せをつかむために、私が心がけてきたことを綴った一冊。今の私のすべてが詰まっています」。そう冨永愛さんが語るのは、『冨永愛 新・幸福論 生きたいように生きる』について。
夢のために単身渡米した10代、ファッションの最前線で生きた20代、子育てと仕事の両立に悩んだ30代、俳優としても活躍する41歳の今……と、キャリアを振り返った「人生の総集編」とも言えるエッセイです。
とりわけ印象的なのは、長年トップモデルとして活躍し、37歳にしてパリコレへ復帰した冨永さんの、「美」についての考え方。表面的な若さが失われたとしても、「年齢を経てにじみ出る、内面からの美しさを積み重ねていきたい」と話します。
「モデルとしても、尖った表現が多かった10代や20代前半から比べると、表現の幅が広がって、深みが出てきたと思います。もちろん、いい年の重ね方をするには体力の維持と向上も欠かせませんから、トレーニングの内容や睡眠の質、食事といった基本は、そのときどきで見直していくつもりです」
年齢を重ねたことで、「次世代のためにできること」にも目が向くように。
昨年は、世代交代のめまぐるしいモデルや、クリエイターのセカンドキャリアをサポートするための会社を設立。女性の健康と人権を守る国際協力NGO「JOICFP(ジョイセフ)」のアンバサダーを務めるなど、社会貢献活動にも力を入れています。
幅広い課題に取り組む冨永さんですが、重視するのはあくまでも「今」。
「10年先のことまではわからない」と話します。「先のことまで決めてしまうと、それに縛られてしまう。『実現できなかった私』になるのが嫌なんですよね。
だから2、3年先までは常に考えているけど、その先は考えません。今、どんな選択をして、どう生きていくかが大事だから。その積み重ねが未来になるのだと思っています」
最後に、お守りのようにいつも身につけているものは? と尋ねると、「息子と自分のツーショット写真」との答えが。
「10年以上前、息子が小学生の頃に証明写真で撮ったもの。いつも財布の中に入れています」
かつては子育ての時間を優先して仕事を休止し、本書でもひとり息子への思いを語っている冨永さんならではの、息子愛が垣間見えるエピソードでした。
『冨永 愛 新・幸福論 生きたいように生きる』
冨永 愛
¥1,760(主婦の友社)
多方面で活躍中の著者が、これまでの生き方について初めて綴ったエッセイ。カバーにはデビュー当初以来の“すっぴん”写真が採用されています。
「裸で撮られているようで恥ずかしかったけど、トライしてよかった。ただ、最初で最後だと思います(笑)」
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