京都の店々に密やかに備わる坪庭は、この街に暮らす人々の美意識を象徴するような場所。京都に出かけたら見に行きたい、小さくも美しい庭を紹介します。

飾りすぎない甘味と共鳴する。
―うめぞの カフェ&ギャラリー―

 

 みたらし団子にわらび餅、夏にはかき氷。正統派の和の甘味をカフェで味わう。築百年を超える町家を改装し、白い壁はギャラリーに。ピーター・アイビーの照明が温もりと洗練を加える。和と洋の要素が幾つも入り交じるカフェの庭は、初夏の改装で整えられたばかり。「店を開いた2010年に受け継いだのは、紅葉と苔、飛び石のある昔ながらの庭でした。紅葉がすっかり大きく育ってしまった今、店内から眺めても楽しめるものにしたくて」と店主の西川葵さん。花と緑で四季を描く〈MAESTRO花緑事務所〉が作りあげたのは、玉仕立てのキンメツゲが主役の小さな庭だ。弧を描くラインで切り取った形がモダンさを漂わせる。ぽんぽんと水玉が散るような、白玉を思わせる丸い姿のキンメツゲが愛らしい。春には黄色い花を咲かせる枝垂れのレンギョウを加え、あとは大切に残した紅葉と下草のタマリュウだけ。シンプルさと可愛らしさを共存させている。カフェで供される甘味に目をやれば、飾りすぎない潔い姿。庭と甘味が響き合う、そんな仕立てが見事。

   

昭和2(1927)年創業の甘党茶屋『梅園』が手がける唯一のカフェ。

『うめぞの カフェ&ギャラリー』
京都市中京区不動町180
075‒241-0577
11時30分〜17時30分(17時LO)
無休

photo : Yoshiko Watanabe illustration : Junichi Koka edit & text : Mako Yamato

&Premium No. 130 LIVE SMALL & WELL / 小さな家に暮らす。

デメリットとも受け取られがちな「小さい、狭い」という条件は、見方を変え、工夫を凝らすことで、快適な暮らしをもたらすメリットになります。例えば、コンパクトな居住空間ゆえに、必要なものをきちんと見極められるようになる。また、何がどこにあるかが明快で手に届く範囲にあるというのは、とても気持ちのよいことです。そして生活全体の見通しがよくなると、やがて暮らしや生き方までが、すっきりとしていくように思いませんか。今号は「小さな住まい」に暮らすことについて考える一冊。限られたスペースに開放感をもたらす家を建てたり、賃貸の小さな部屋を自分らしく整えたり。コンパクトな暮らしをあえて選びたくなるような、楽しくて小さな住まいの実例集です。

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