私は現在70歳。愛する妻と息子にも恵まれ、いまだ現役で働いている職人歴50年の鉄器職人です。勤務先の社長たっての希望で手作りの一点ものを作っています。ところが社長が体調を崩して長期入院することになり、部長が経営権を握ったことで、とんでもない事態がぼっ発したのです。

高圧的な新部長

つい先日、私の腕を買ってくれていた三代目社長が長期入院してしまい、営業畑出身の新部長に会社の経営が任されることに。もともとは控えめな男だったはずが、力を手にして人柄が変わってしまったようなのです。

今日も、暑さの中で働いた後に休憩中の従業員たちに対して、「休まず働け! 職人なんて、製品を作らなきゃ金になんねぇだろ!」と横暴な態度。とにかく金儲けを一番に考えてばかりで、私たちを酷使しようとしています。

見かねて一番年上の私が苦情を言うと、「職人ったって、大した学歴もねぇやつらの集団だろ? 雇うほうが無駄!」とまで。「代々の社長だって、職人を大切にしようと常日ごろ言ってくれている!」と反論しても聞く耳を持ちません。

「社長は甘いんだよ。この業界、それじゃ足元を見られる。たかが職人が社長代理の部長に偉そうな口を利くな!」と連日偉ぶっているのです。

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そこまで言うなら…

こうして、毎日のように口論していた私たちですが……。ついにこの新部長、聞き捨てならない暴言を吐いたのです。

「そもそも、職人のやつらがデカい面しているのは、あんたのせいだ。職人歴50年だか何だか知らないけど、時代遅れ。老害はとっとと消えろ!」

これには私の我慢も限界です。「本当に消えていいのか?」と言い返すと、「当たり前。さっさと消えてもらったほうがせいせいする」と豪語するので、「そこまで言うなら、私は消えるとするか」と荷物をまとめてきびすを返しました。

周囲の若手職人たちからは、驚がくの悲鳴が聞こえてきましたが、この日は言われた通り退社してやりました。

帰宅すると、ちょうど息子が遊びに来ていたので理由を説明。事のてん末に激怒した息子は、とある秘策を考えだしたのです。

「どうなるのか見物だ」