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●世界中から評価の高い秋田『浅舞酒造』の「天の戸」。実際に酒蔵を訪れ、代表・柿﨑常樹さんにその魅力と美味しさの秘訣を伺いました。
2024年6月、イタリアで日本酒のコンテスト「MILANO SAKE CHALLENGE」というイベントが開かれました。審査をするのは、酒ソムリエの資格を持つソムリエ、バーテンダーなど、酒に関するプロ集団。その中で、高い評価を受けた銘柄があります。
それが、『浅舞酒造』が造る「天の戸」。イタリアだけでなく、スペインやフランスでも高い評価を受けており、日本を代表する日本酒のひとつとして注目されています。
一体どんなお酒なのか?
今回酒蔵へ直接訪問し、その魅力をお伺いしました。
秋田県横手市にある酒蔵
100年以上の歴史を持つこちらの酒蔵。良質な伏流水(河川水が川底の砂利層により自然に浄化されたもの)と米作りに適した土地など、自然環境に恵まれ、「こんないい環境で酒づくりをしないのは勿体無い」という創業者の思いから作られました。
代表の柿﨑常樹氏
現在、5代目となる代表の柿﨑常樹氏。世界の舌を唸らせた味の秘訣をインタビューしました。
「水が綺麗なことが、非常に大切なこと。私どもは2011年から純米酒、つまり醸造アルコールを入れていないお酒のみを造っています。そのためには、良質な水と、その水で育った酒米が味の根幹となります。『酒は田んぼから生まれる』。これは我が酒蔵のモットーです」
そんな柿﨑さんから、こだわりの製法も聞くことができました。
「酒米を蒸す時は、和釜で厳しく温度管理をしています。酒米の状態や、その日の気温によっても細かな調整が必要。また、発酵を終えた醪(もろみ)を搾って酒粕と清酒に分けますが、弊社では『古式槽搾り』という手法で行います。時間はかかりますが、ゆっくりと圧力をかけることにより、米の旨みを最大限引き出しています」(柿﨑さん)
酒造りをしている蔵人
細部にこだわった酒造り、それが高い評価を受けている秘訣のようです。インタビューを終え、実際にイタリアで受賞した3本を試飲させていただくことに。米の旨みがギュッと詰まった「天の戸」。一体どんな味わいなのでしょうか?
酒のプロを唸らせた、『浅舞酒造』の珠玉の3本はこれ!
純米大吟醸35
まずは「純米大吟醸35」。コンテストで銀賞を受賞した一本です。
この「35」という数字は、精米歩合が35%であることから。他の純米大吟醸が40%程の商品もある中、より米を丹念に磨いて作られていることがわかります。
一口飲むと、滑らかな口当たりに驚きます。雑味を全く感じず、とてもフルーティー。精米歩合が高いと味も薄めなのかな? という疑問もありましたが、トロリとした質感としっかりした味わいは、飲みごたえ抜群。スルリと通り抜ける喉越しの良さもあり、普段日本酒を飲まない方へもオススメできる1本です。
天黒
2本目は「天黒」。コンテストでは最高賞の「Platinum」を受賞し、過去にも海外で受賞歴のある蔵自慢のお酒。希少な秋田県産の酒米「星あかり」を原料にし、焼酎用の黒麹で作られたチャレンジ精神溢れるお酒です。黒麹はクエン酸を多く生成するため、日本酒には無い酸味を出すことができるそうです。
気になるお味は、黒麹の程よい酸味と米の旨みがベストマッチ! 日本酒としての味わいを残しつつ、まるで白ワインを飲んでいるかのような気分になります。酸味の効いたスッキリした喉越しがクセになりそうな、やみつきになる1本です。
純米吟醸ひやおろし 一穂積
最後にオススメするのが、秋田県産の酒米「一穂積」を使用したこちらの1本。コンテストでは金賞を受賞しています。
「ひやおろし」とは、冬に作られた日本酒を秋まで貯蔵し、熟成させた、秋限定の日本酒。搾りたてとはまた違う味わいがあり、日本酒ファンにとっては毎年心待ちにする、秋の楽しみです。
口に運ぶと、熟成感のある香りが鼻を抜けます。他にはない、香ばしさが堪りません。スキッとした洗練された口当たりながら、味わいはとても芳醇。飲むほどに感じるコクと旨みは、いくらでも飲めると思えてきます。きのこや焼き魚など、秋の味覚と一緒にいただけば、至福の晩酌になることは間違いないでしょう。
まとめ
今回、「天の戸」のオススメをご紹介させていただきましたが、一貫して伝わってきたのが、
「ダイレクトに感じる米の旨み」
「純粋で清らかな飲みごたえ」
水、米といった自然の恵み、そしてより美味しいお酒を作ろうとする職人の熱意が、この豊かな味わいを作っているのだと感じました。
秋田の魅力がたっぷり詰まった、ふくよかな味わいの「天の戸」。飲んだことがない方は、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
(撮影・文◎平あきら)
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株式会社浅舞酒造