修繕積立金の会計処理はどうなる?

修繕積立金を経費計上するためには、いくつかの条件があることがわかりました。
そこで、ここでは会計処理した場合に加えて、区分の所有者がマンションを売却した場合の会計処理について解説します。

経費計上時には仕訳方法が2種類ある

修繕積立金を経費計上する際には、以下の方法があります。

修繕工事施工、完了した年に経費計上する

実際に修繕工事を施工して完了した年に経費計上する方法があります。
この場合、修繕積立金を工事でどれくらい使ったかを計算する必要があります。
工事費に10万円使ったと仮定した場合の計算方法です。
修繕積立金を支払った時は、このように処理します。

借方勘定科目借方金額賃方勘定科目貸方金額摘要修繕積立金10,000円普通預金10,000円修繕積立金

※修繕積立金は長期前払費用、前払費用などの資産科目でも可能です

実際に施工した際には経費を振り替えます。

借方勘定科目借方金額賃方勘定科目貸方金額摘要修繕費100,000円修繕積立金100,000円修繕工事

修繕積立金から実際の工事にした使用した金額を明確にするのが難しい場合は、条件を全て満たして修繕積立金を支払った年に経費計上するのが良いでしょう。

条件を全て満たして修繕積立金を支払った年に経費計上する

条件を全て満たしていて、修繕積立金を支払った年に経費計上する場合は支払ったタイミングで経費として計上します。
処理方法は、以下のとおりです。

借方勘定科目借方金額賃方勘定科目貸方金額摘要修繕費10,000円普通預金10,000円修繕積立金

この場合は、支払った時点で経費計上しているため、修繕工事施工や完了に伴った処理は必要ありません。

売却時の修繕積立金について

区分の所有者にとっては、マンションを売却した際に今までの修繕積立金がどうなるのか気になる方もいることでしょう。
また、入居している間に一度も修繕がされなかった場合は、積立金の返済を求めてくるかもしれません。
しかし、オーナー側がマンションの修繕積立金を返金する必要はありません。
これは、納めた修繕積立金がマンション管理組合の財産として考えられるからです。
管理組合は、修繕積立金の残高によって価格が決まる部分もあります。
ただし、マンションの建て替えなどで管理組合が解散となった場合は、それぞれ区分の所有者が負担してきた割合に応じて修繕積立金を精算して返金するケースもあります。
その時の条件に適した会計処理が必要になってくるでしょう。

(広告の後にも続きます)

修繕積立金の相場は?

ここまで修繕積立金について説明してきましたが、知っておきたいのが修繕積立金の相場についてです。
修繕積立金は、マンションの修繕積立金に関するガイドラインを基に決めているため、相場以上の金額にするのは難しいでしょう。
ここでは、修繕積立金の相場について解説します。

修繕積立金額の目安

修繕積立金額の目安は、それぞれのマンションの大きさ、立地、環境などの条件によって変動します。
そのため、目安の算出は実際に作成された長期修繕計画を収集して、事例に合わせた平均値を国土交通省が示しています。
ただし、修繕積立金額はマンションの状態や要因で変動するため、あくまで目安です。
計算式は、上記でも解説したように「(A+B+C)÷X÷Y=Z」を使います。
以下の内容を参考にしてみてください。

【計画期間全体での修繕積立金の平均額(目安)】

地上階数/建築延床面積 (20階未満)月額専有面積当たりの修繕積立金額平均値5,000㎡未満335円/㎡・月5,000㎡以上10,000㎡未満252円/㎡・月10,000㎡以上20,000㎡未満271円/㎡・月20,000㎡以上255円/㎡・月

地上階数/建築延床面積 (20階以上)338円/㎡・月

機械式駐車場がある場合

マンションなどに機械式駐車場がある場合は、さらに加算する必要があります。
加算については、以下の計算式を使います。

【式】
機械式駐車場の1台あたり月額の修繕工事費×台数÷マンションの総専有床面積(㎡)

機械式駐車場の1台あたり月額の修繕工事費に関しては、以下の表を参考に数字を入力します。

機械式駐車場に設置されている機種修繕積立費(月額・1台あたり)(ビット1段)2段昇降式6,450円/月・台(ビット2段)3段昇降式5,840円/月・台(ビット1段)3段昇降式7,210円/月・台(ビット2段)4段昇降式6,235円/月・台(垂直循環方式)エレベーター方式4,645円/月・台その他5,235円/月・台

もし、駐車場の維持や管理、修繕工費用や駐車場使用料などについて、管理費、修繕積立金として経理している場合、機械式駐車場においての修繕工事費を駐車場使用料収入でまかなう場合、機械式駐車場がある場合の加算額を加える必要はありません。

首都圏の中古マンションの修繕積立金について

東日本レインズが2018年度に公表した「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金」に関しての調査結果を確認した結果、平均10,392円という金額になっています。

ワンルームマンションの修繕積立金について

1つの居室、トイレ、ユニットバス、キッチンがあるワンルームマンションは、単身者向けなので、学生、転勤などの理由で住んでいる方が多いです。
そんなワンルームマンションは、月額1,400円~3,660円が平均値になっています。

大規模マンションの修繕積立金について

100戸以上でタワーマンション以外の大規模マンションの修繕積立金の相場は、月額2,500円~12,690円が平均値になっています。

小規模マンションの修繕積立金について

100戸以下でワンフロアの住戸数が少ない小規模マンションの修繕積立金は、月額1,820円~28,620円が平均値になっています。

タワーマンションの修繕積立金について

100戸以上、総階数20階以上のタワーマンションの修繕積立金は、月額2,330円~27,900円が平均値になっています。