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 海外では、スマートフォンが財布やバッグと同じくひったくりやスリに狙われやすいといわれている。スマートフォンには最新の盗難対策が導入されているが、それでも盗難は後を絶たない。事件の増加で頭を悩ませているのがイギリスだ。過去1年間で7万件以上の事件が発生しているという。

◆過去1年間で7万件超

 BBCによると、イギリス内務省は、急増するスマートフォンを狙ったひったくり事件を受け、ハイテク企業や携帯電話メーカーを招集し、携帯電話の違法売買を阻止するための技術開発を検討するよう協議会で要請すると公表した。すでに一部のスマートフォンに盗難防止機能が導入されているが、それを基にした新たな技術開発を促すものとみられる。

 内務省によると、2024年3月までの1年間にイングランドとウェールズの路上で起きた、スマートフォンやバッグなどを狙ったひったくりの認知件数は、前年度の3万1000件より153%増加し、7万8000件に上った。

 同地域における過去12ヶ月間の1日あたりのひったくりの認知件数は200件以上に上り、これは2012年から2013年の年間平均より約60%多く、過去10数年で最多を記録した。

 また、ひったくり、万引き、置き引きなどの窃盗および窃盗未遂を含む対人窃盗全体が過去1年間で33%以上増加。その対人窃盗のうちの36%が携帯電話の窃盗に関係していた。

 対人窃盗事件で起訴に至ったのはわずか0.8%で、警察の捜査の81.9%は容疑者特定に至らず打ち切りになっている(イングランド・ウェールズ犯罪調査)。

◆盗難スマホ、海外へ横流しか

 警察当局は、ひったくり増加の要因について、イギリス国内外で中古スマートフォンの需要が増加していることがあるとみている。

 ダイアナ・ジョンソン犯罪・警察・消防担当閣外大臣は、「携帯電話会社は、盗まれた携帯電話を中古市場で販売するために再登録するのではなく、迅速、簡単かつ永久的に使用できないように対応する必要がある」「政府、ハイテク企業、法執行機関が協働すれば、携帯電話を狙った窃盗団とそれを専門に売買するギャングのビジネスモデルを壊滅することができる」と述べた。

 政府はまた、携帯電話の窃盗犯と盗んだ端末の横流し先について捜査するよう全国の警察署長に協力を要請するとした。

 ジョンソン大臣は「新しい携帯電話が市場に出回り、若者たちが学校や大学に戻るこの時期に、新しい携帯電話を手にする人が増える」「新政府は『安全な街ミッション』の一環として、地域におけるひったくりやナイフ強盗などの犯罪を取り締まるため、数千人以上の制服警察官を派遣するなどして対策を推進している」と話す。

 同対策は、盗難携帯電話のブラックマーケットの全体像を掴むのが狙いにある。対策には、ナイフによる強盗など、深刻な暴力行為の危険性が最も高い地域でのパトロール強化も盛り込まれている。

 警察は最近、観光客の多いロンドン中心部の一部など1250以上の犯罪多発地点で、個人を狙った強盗犯罪の掃討作戦を展開した。

 全国警察署長協議会の対人強盗担当責任者のリチャード・スミス警視長は、「犯罪者は往々にして暴行・脅迫を手段に用いて、子供のような社会的弱者をターゲットにする。(中略)我々は、常習犯を重点に置き捜査するとともに、若者が犯罪に巻き込まれないよう取り組みを進めている」と話す。

◆スマホ盗難対策は?

 携帯電話が盗まれた場合、何をすべきか。まず、警察に被害届を出す際、IMEI番号(デバイス固有の15桁コード)を提供する必要がある。保険金請求の際にもその番号が必要になるかもしれない。IMEI番号は端末の箱のラベルに印字されているが、わからない場合はプロバイダーに問い合わせれば教えてもらえる。

 そして、SIMカードをキャンセルし、ネットワークプロバイダーに被害を伝える。また、モバイルバンキングを利用している場合は、銀行にも連絡し、窃盗犯がアプリを使えないようにする。被害者がインターネットバンキングにログインする様子を盗み見てパスワードを把握し、その後デバイスを盗むという窃盗犯もいる。

 盗難が報告されたデバイスのIMEIは、ネットワーク事業者によってブラックリストに登録される。そのため、窃盗犯は盗んだデバイスを海外に送り、IMEIがブロックされていない他国で転売することが多いという。(BBC)