サボテングルメを実食!

さまざまな取り組みが行われているプロジェクトですが、やはり一番気になるのはサボテングルメ。
バラエティーに富んだサボテン食体験ができるサボテングルメスタンプラリー参加32店舗の中から、今回は市役所の柴田さん推薦の2店舗と、街の人に教えていただいた田中食品製麺の「サボヽめん」といった、サボテングルメの一部をご紹介します。

IZUMI café &bistro

地域の家族連れに人気のお店 IZUMI café &bistroは、肉厚の牛タンを使用した絶品タンシチューや手作りハンバーグ、パスタ料理が自慢のお店。

オーナーの谷本健一郎さんは、無印良品イーアス春日井が主催した料理コンテストで優勝したほどの腕の持ち主なんです。


オーナーの谷本健一郎さん。

そんな実力派の谷本さんが作るサボテンメニュー。
今回はサボテンのペペロンチーノを試食、というより空腹MAXだったため、本気で食べてきました。

実食の感想

こちらが出来上がったサボテンのペペロンチーノ。
スープが付いて1,310円(税込)。

フェットチーネのもっちりとした食感と、芳醇なソースの味わいが極上のパスタです。
さてサボテンはというと、実際に食べてみると、ちょっとした酸味とほのかな苦味のある野菜といった感じで、食感はメカブに近く、これはちょっとクセになりそうです。

また、サボテンがオクラのようなとろみを出していて、それによりパスタソースが麺によく絡む。
だからといってまったくクドさはなく、むしろサボテンの爽やかさが料理全体を好アシストしてくれている、そんな印象。

サボテンの持つ独特の風味は他の素材を上手に引き立てるのだな、ということがわかりました。

でもこうして素材として見事に羽ばたかせることができるのは、料理に対して真摯に向き合い、お客様に愛情を注いできた谷本さんの手腕なればこそ、なのでしょうね。

オーナーのお話

店に入って一際存在感を放っているのが、ホールの中央奥にある、普通のレストランでは考えられないくらい広いキッズスペース。完全個室の授乳室も完備しています。

実はIZUMI café &bistroは、子ども連れのお客様が食事を気兼ねなく楽しめる、というコンセプトのもとに作られたお店。
これは個人営業のレストランに未就学児入店NGの店が多いことに谷本さん自身が疑問を感じ、自分が店をやるときは毎日頑張っているママたちが気兼ねなく食事を楽しめる店にしよう、という想いがこめられているのです。

料理に、店作りに、谷本さんの愛情が溢れている、そんな印象のIZUMI café &bistroでした。


谷本ご夫妻とスタッフの皆さん。

最後に、このプロジェクトへ参加してどうですか? と感想を聞いたところ、「昨年、市の担当者柴田さんが“ノンアポ飛び込み営業”で企画を持ち込まれた時はびっくりしましたが、その情熱に賛同してこの企画に参加して心底良かった。他の店のオーナーさんとも強い絆ができたのはよい収穫でした」と。

これからも春日井サボテングルメの魅力を発信し続けてください!

IZUMI café &bistro

URL:

【営業時間】月〜土 8:30〜16:00(Lunch L.O14:30、Tea L.o 15:30)まで
【定休日】日曜
【住所】愛知県春日井市大泉寺町136-3
【電話】0568-29-6123
【駐車場】有(20台)

bistro Futatsuboshi

2008年の開店から16年を数えるbistro Futatsuboshiは、今ではこの春日井市内では知らない人はいない名店中の名店。
取材前にいろいろ調べてみましたが、「春日井に行ってここに行かずして帰ると後悔する」とまで言う人も。
ならば、と期待に胸膨らみます。

マンションの一階フロアを占有する広い店内に入ってみると、どこかノスタルジーを感じさせてくれる雰囲気が漂い、ここで食事をすることが幸福な時間なのだということを感じさせてくれます。

お迎えしてくれたのはシェフの今泉錠二さん。
詳しい話よりまずは料理を、ということで早速名店の味を支える腕を奮っていただきました。


シェフの今泉錠二さん。

いただいたのは、知多ハッピーポークという愛知県産銘柄豚を使用した「豚バラ肉とサボテンの白ワイン煮込み ハリッサソース」。
煮込みと相性のよい、見た目ふんわりのマッシュポテトと、そこに鎮座する知多ハッピーポークの色合い。
この色合いだけでごはんのおかずになりそうです。

かけるソースにはすでにサボテンが溶け込んでいて、濃厚なソースとサボテンの爽やかな酸味が調和した、独特な風味を楽しむことができます。
そこに「ハリッサ」で和えたサボテン、パプリカ、赤玉ねぎをトッピングし完成。

ちなみにハリッサとは、唐辛子ベースにコリアンダー、キャラウェイ、クミンといったハーブとニンニクをブレンドした北アフリカ地域で用いられるスパイス。
ハリッサは豊富な輸入食材を取り扱うカルディでも人気の商品で、一度使うとやみつきになります。


我が家愛用

こちらのサボテン料理は基本的にコース料理の中の一品のため、アラカルトとしてメニューに記載はありませんが、事前に連絡すれば単品としてオーダーすることも可能です。
価格は時価となり、およそ2,500円くらいです。

実食の感想

ハリッサとサボテンがどう展開するのかワクワクしながら、いざ実食です。

まずはその芳香に陶酔。
見た目はフレンチなのですが、スパイスとして使われているハリッサがエキゾチックな風味に仕上げていて、とても私好みの味わいでした。

舌の上でほろほろとほどけていく柔らかな知多ハッピーポークを、サボテンのエキスが溶け込んだ濃厚なソースが包み込み、そこにサボテン由来のほのかな酸味が乗っかってくる感じ。

両方のバランスがとても心地よく、時折トッピングのサボテン果肉が食感で遊んでくれるという、とても印象的な一皿でした。

サボテンをかくも記憶に残る料理として振る舞える手腕はお見事! サボテンたちも冥利に尽きるというものです。

改めて再訪し、ぜひコース料理を食べてみたい欲求に駆られました。

シェフのお話


今泉シェフと共にお店を切り盛りするスタッフの皆さん。

見事な料理でお客様を夢心地にしているbistro Futatsuboshiですが、名古屋駅近くの著名レストランでシェフとして腕を奮っていた今泉さんが自分の店を持つという夢を実現させ、現在の場所で店をスタートさせたのは16年前。
当時の店は今の1/3の面積でした。


かつては1階店舗部分を3分割した真ん中のみが店舗だったという。現在は1フロア全てがFutatsuboshiの店舗となっている。

しかし、今泉さんご夫妻のお客様に対する愛情と料理に対する探究心に呼応するかのように、開店以来お客様は増え続け、現在では店のキャパも開店当時の3倍に。
新たに加わった個室(写真下)では誕生会や歓送迎会など、今泉さんの料理で人生の節目を飾ろうというお客様で連日賑わっています。

そんな地元に根付いたお店だからこそ食材の地産地消にも熱心なんです。

でも、ある日突然店にやってきた市役所の柴田さんから「地元食材サボテンをぜひ使ってください!」 と猛烈プッシュされた際はちょっと戸惑ったそうです。

がしかし、試しに使ってみると、サボテンの食材としてのポテンシャルは今泉さんの料理人魂に火をつけ、辣腕料理人をもってして「サボテンって面白い!」といわしめるほど、なくてはならない食材となりました。

このほか、お店のイチオシはベーコンとほうれん草のキッシュ。


キッシュはランチメニューでも人気のメニューで、テイクアウトすることも可能だ。

面白いのはシェフのつぶやいた一言。

「なんの変哲もないキッシュなんだけど、なぜかすごく出るんですよねぇ〜。」

何の変哲もないからこそ、めっちゃ美味いのではないでしょうか。
bistro Futatsuboshi、再訪を固く誓った店でありました。

bistro FUTATSUBOSHI

URL:

【営業時間】
ランチ 11:15~14:00(L.O.13:00)
ディナー 18:00~21:00(L.O.19:30)
テイクアウト 11:15~14:00/17:00~18:30
【定休日】日曜日・木曜日のディナー/不定休月2回
【住所】愛知県春日井市八田町2-27-27
【電話】0568-83-4441
※予約・問い合わせの電話は9:30~11:00/13:30~14:15/17:00~18:00/21:00が繋がりやすい。
【駐車場】有(19台)

サボヽめん

地元で人気の製麺店、田中食品製麺で「サボヽ(テン)めん」というサボテンが練り込んであるきしめんを購入し、帰京後に食べてみました。

この田中食品製麺、じつは、bistro Futatsuboshiへ向かう途中に立ち寄ったコンビニの駐車場で、車から降りてきた主婦らしき方に「突然すみません決して怪しい者ではありません、東京から春日井のサボテングルメを取材に来ていまして、地元の方が普段口にされるサボテンを使ったおすすめの食材ってありますか?」と尋ね、紹介してもらった店なのです。

そしてこの「サボヽめん」、偶然にも春日井土産品コンテストで入賞した商品ということで、期待大です。

1袋で2人前、特製の麺つゆも付いています。
沸騰させたたっぷりの湯に麺を投入し待つこと12分。
茹でた麺を入念に水で冷まし、ざるに盛り、いざ実食。

実食の感想

麺はサボテンの色素が反映されていて薄い緑色。
一口食べると、すっかり私の味覚に馴染んだサボテンの酸味が爽やかに鼻腔から抜けていき、同梱の少々甘口な麺つゆの鰹節風味があとから追いかけてきます。
心地よい噛み応えを生むコシのある麺は、さすが製麺所直売の麺です。

感想はズバリ「麺好き食うべし。」

ただ量的な部分では、1袋2人前のうちの1人前では、よほど少食な方でない限り、男性には確実に足りないですね。
うちは夫婦で1人1袋をいただきましたが、ちょうどよい感じでした。


田中食品製麺の田中さん。

この「サボヽめん」をお土産として、読者の方に抽選で1名様に2袋お送りします。
詳細は後ほど。

田中食品製麺

【営業時間】8:00~17:00
【定休日】日曜
【住所】愛知県春日井市弥生町2-12
【電話】0568-81-3811
【駐車場】有(2台)

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グルメに、エンタメに、教育に、春日井のサボテン産業を支える農家

ここまで、サボテンのまち春日井プロジェクトの内容をご紹介しましたが、その全ては春日井市が世に誇るサボテン農家があってこそ。
ここからは、春日井とサボテン農家の関わりについてご紹介します。

伊勢湾台風が全てを変えた

実生栽培で名高い春日井のサボテン。
その歴史を紐解くと、サボテンと春日井農家の運命的な出会いにたどりつきました。

春日井市は古くから果樹栽培で有名な街。
時は昭和の戦後間もない頃、その果樹農家の1人伊藤龍次氏は、趣味でサボテン栽培を行っていたのですが、とあるサボテンの交換会で「緋牡丹(ひぼたん)」という、それまで見たことがなかった赤いサボテンに出会い、すっかり心を射抜かれました。
時を経ず、友人で同業者の関戸貫一氏を誘い、一緒に緋牡丹栽培を行うようになりました。

しかし、色素が赤いが故に葉緑体がほとんどなく、成長させるのが難しい緋牡丹栽培はなかなか上手くいきませんでした。
そこでメインが果樹農家の伊藤氏は、果樹栽培を行う時の接木技術を応用できないかと考え、タネも安価で旺盛に育つ柱サボテン「竜神木」の先端を切り、緋牡丹をつなげてみました。
今ではいろんな種類のサボテンで行われている「サボテンの接木」誕生の瞬間です。


※写真の緋牡丹の台木は三角柱というサボテンです。

台木から栄養が送られスクスクと育つ緋牡丹は、見た目の可愛らしさも相まって大人気に。

やがて、手間もかからず痩せた土壌でもたくましく育ち、見た目もユニークなサボテンの魅力が周囲にも伝わり、桃山町を中心に緋牡丹に関わらずサボテン栽培を副業とする農家が増えて行きました。

それから時を経て昭和34年、中部地方に壊滅的な被害をもたらした「伊勢湾台風」の襲来により、春日井市内の果樹園は甚大な被害を被りました。


死者・行方不明者5,000人以上、負傷者3万人以上を出した伊勢湾台風 写真:

その一方、温室で栽培していたサボテンは被害が少なかったため、多くの果樹農家が栽培主体をサボテンに切り替え、サボテン栽培は市内全域に普及しました。

おりしも昭和30〜40年代の日本はサボテン栽培が空前のブーム。
しかし当時、国内で生産されるサボテンは、親株から切り取った子株から増やしていく、生産効率の高い挿し木栽培が主流でした。

対して、タネまきから行う実生栽培は、タネを買い、元来成長速度が遅いサボテンをゼロから手間暇かけて育てなければならないため効率が悪く、そもそも技術が確立されていなかったため、商売には向かないとされていました。

ただその反面、実生栽培には、天塩にかけただけ質の面では最高品質のサボテンを作ることができ、また、タネを自家採取でまかなえるためコストを下げることができるというメリットも。

そこで春日井のサボテン農家は、発芽から出荷までの工程を分業生産化することで効率を高め、また、サボテンに特化した温室を発明するなど、工夫に工夫を重ねて実生技術を確立。日本で初めて実生サボテンの大量生産が可能になりました。

実生による、色に形に質の高い春日井サボテンの噂は、インターネットが無い時代にあっても瞬く間に全国に広がり、これにより昭和の時代、サボテンのまち春日井の地位は不動のものとなりました。

時は平成に移り変わっても、平成18年(2006年)まで実施された「農林水産省作物統計調査」では春日井市が「サボテン及び多肉植物」の出荷量で全国1位を獲得するなど、先人たちの知恵と情熱は確かに受け継がれ、今日の「サボテンのまち春日井プロジェクト」を生み出す苗床となりました。