実際にサボテン園を訪ねてみた
サボテンのまちとして昭和から平成を彩った春日井市。
最盛期は80軒ほどあったサボテン農家も、残念ながら現在は1/10に満たないほどになってしまいましたが、そんな貴重なサボテン農家の中から今回は安田サボテン園を訪ねました。
安田サボテン園は卸し専門の農家。ネットも含め一般販売は行っておらず、農園自体も一般公開はしていないのですが、今回は市役所の柴田さんの計らいで特別に訪問させていただきました。
安田サボテンの園主安田勝さんは現在御歳79歳。
サボテンを始めたのは昭和39年、19歳の時だというから実に60年にわたりサボテン栽培を行ってきた、まさにプロ中のプロ。
現在、マミラリア「月影丸」や「星月夜」、ギムノカリキウム「緋花玉(ひかだま)」や「牡丹玉(ぼたんぎょく)」などを中心に、約50種類のサボテンを手がけています。
代々続く果樹農家に生まれた勝さんは、中学生の時に前述の伊勢湾台風に実家農家が被災し、窮地にあったお父様が、隣でサボテン兼業果樹農家を営む伊藤さん(前出の伊藤龍次氏)の誘いでサボテン農家として再出発したのがサボテンとのストーリーの始まり。
春日井のサボテン農業は、前述のように完全分業制で成り立っていたため、当初安田サボテン園は、タネまきと発芽を担う第一次生産農家から送られてきた稚苗を大きくする第二次生産農家でした。
やがて3代目を継いだ勝さんは、平成4年から自らも実生を手がけ、タネまきから出荷までをトータルに行う実生農家になりました。
それが実生を育てるということ。
その頃サボテン農家は後継者問題に直面し、特に第一次生産農家が著しく数を減らしていったため、実生栽培に情熱を傾けていた安田さんの存在は、春日井のサボテン農家全体の原動力にもなっていたのではないかと推察します。
採取したタネの入った封筒。1封筒あたり約5万粒入っているという。
「タネから育てるのはこれほど面白いことはないね」と、根っからのサボテン溺愛好家の安田さんですが、ここに至るまでに最も苦労したのは、タネをまいてから1〜2カ月の間の管理なのだとか。
稚苗を管理する温室を見せてもらいましたが、愛好家が数十〜百前後の稚苗を育てるのとはワケが違います。
数万株の稚苗を育て上げなければならないのですから、ここに至るまでのご苦労は想像を絶します。
ところで先にも触れましたが、春日井のサボテン農家は、先人たちの知恵が詰まった特殊な温室「ピット型温室」を用いてサボテンを育てます。
もちろん、安田サボテン園にもピット型温室があります。
その特徴を交え、実際の映像でピット型温室がどのようなものかを見てみましょう。
先人たちの知恵を継承し、それを60年にもわたりやり続け、周囲のサボテン農家が後継者不足などさまざまな問題に直面し廃業していく中で、今もなお現役という安田さんの姿には畏敬の念を覚えます。
それも、手をかけた分だけ応えてくれるという、やり甲斐があればこそ、と語る安田さん。
これから先は斑(ふ)入り(=突然変異でできる特殊な模様)のものを今以上に多く手がけていきたいと抱負を抱いています。
ちなみに安田さんは幸いにも後継者(ご子息)に恵まれ、その技術が絶えることなく次世代に引き継がれているのは、私たち愛好家にとっては嬉しい限りです。
また安田さんは、春日井のサボテン栽培を次世代に継承するために、なんとサボテン栽培業のノウハウを解説したいわゆる「秘伝の書」的なものを映像に収め、これを春日井市観光コンベンション協会が大切に保管しています。
「本気でこの地でサボテン就農を考えている人がいたら、ぜひ見てもらいたいです。」と、目を細めて語る安田さんですが、長生きしてぜひ生身の安田さんご自身による後進育成を頼みますよ、と誰もが思っていることでしょう。
ただやはり、収入を得られるようになるまで最低でも2年はかかるサボテン栽培、生半可な気持ちでは務まらないのは当たり前。
それでも「春日井でサボテンをやりたい!」という猛者が現れ、春日井サボテンに旋風が巻き起こる日が実に待ち遠しいですね。
そんな安田さんに最後に、サボテン業界の未来とご自身の未来の抱負、そしてガーデンストーリー読者へのメッセージをいただきました。
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おみやげプレゼント!
春日井市経済振興課よりいただいた、サボテンのまち春日井のプロモーショングッズ7点セット(春代・日丸・井之介のクリアファイル、育てる春日井サボテン栽培キット、春代・日丸・井之介のシール、春日井サボテンの歴史が学べるマンガ、春日井サボテンハンドブック、しおり、ウェットティッシュ)を、抽選で2名様に。
田中製麺食品の「サボヽ(テン)めん」を2袋1組を、抽選で1名様に。
それぞれお送りします。
応募方法
下記ロゴをクリックし、応募フォームに必要事項を記入の上、ご応募ください。
当選された方にはご当選商品を明記したメール※をお送りしますので、折り返しお名前と発送先情報をご返信ください。
※当選商品に関しては編集部で選定させていただきます。
応募締切
9月30日(月) 23:59
編集後記
サボテンを愛する地域の人々の情熱、そしてその情熱から生まれる数々のイベントや美味しいグルメ。
そのすべてが、この街を特別な場所にしています。
今回の取材はレンタカーで各所を回ったのですが、どこへ行ってもとにかく皆がフレンドリー!
春日井市民は誰に対してもYo Amigoなのでしょうか!?
そんな人々のぬくもりが心に沁み入る取材となりました。
この記事を読んで興味を持たれたら、ぜひ春日井を訪ねてみてください。
サボテンとサボテンを愛する人々が優しく迎えてくれるでしょう。
さて、後編ではサボテンのまち春日井プロジェクトのさらにディープな部分にスポットを当て、市役所の柴田さんにはプロジェクトにかける想いやさまざまなエピソードを、そして中部大学堀部先生には、サボテンが解決のカギとなる!? 世界の環境問題の未来についてお話いただきましたので、近日公開いたします。乞うご期待!
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おまけ
私編集部員Kのワイフが、春日井市のから取り寄せた食用サボテンで料理を作ってみました。
ご家庭でもぜひお試しください!
ちなみにMyワイフ、すっかりサボテン料理の虜になってしまいました。
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 編集部員K
– ライター・エディター –
フリーランスのロックフォトグラファーの傍ら、サボテンを愛し5年、コーデックスに魅せられ3年を経て、2022年4月にガーデンストーリー編集部に参加。精力的に取材、執筆を行う。飼い猫「ここちゃん(黒猫♂4歳)」に日々翻弄されている。