「愛しい娘と孫のためならなんでもしてあげたい」と、娘夫婦と仲睦まじい関係を続けてきた69歳のA夫婦。しかし、ひとり娘からの「とんでもないお願い」に仰天。牧野FP事務所の牧野寿和CFPは、A夫婦にどのような助言を行ったのでしょうか。みていきましょう。

娘と孫を溺愛するA夫婦…幸せな日々が一転、娘からの「不穏な電話」

69歳のAさんと同い年の妻Bさんは、とある地方都市の戸建て住宅に住んでいます。ふたりは、月24万円(Aさんが月17.5万円、Bさんが月6.5万円)の年金で、つつましく穏やかな老後を過ごしていました。

A夫婦には、ひとり娘のCさん(35歳)がいます。Cさんは5年前に結婚し、現在は専業主婦です。Cさんは夫と4歳の息子Dくんと3人で、都内の賃貸マンションに暮らしています。

Cさんの自宅からA夫婦の家までは、車で1時間ほどの距離にあります。そのためCさんは家族を連れて、毎週のようにA夫婦のもとに遊びに来ていました。娘のCさんも孫のDくんも溺愛していたA夫婦は、大喜びで一家を迎え入れていました。

そんなある日のことです。妻Bさんのところに、Cさんから連絡がありました。

C「もしもし、ママ? 今度の土曜日、Dと2人で行くから一晩泊めてね」

B「いいけど、Eさん(Cさんの夫)は来ないの?」

C「う~ん、ちょっと……。実は、Dの小学校受験のことでケンカしてて。今度行ったときに詳しく相談するけど、今回は2人だけで」

仲がいいはずのCとEさんのあいだになにがあったのかしら……Bさんは一抹の不安を抱えながら、「わかった。詳しくは来たときに聞くから、気をつけて来るんだよ」と言って、電話を切りました。

その週末、Cさんは連絡したとおり、Dくんと2人で実家を訪れました。Eさんがいない以外には、Cさんに特に変わった様子はありません。

Dくんを寝かせたあと、A夫婦は、リビングでCさんから詳しく話を聞きました。

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A夫婦が驚愕した、ひとり娘の“夢物語”

現在4歳のDくんは、Cさんの自宅にほど近い私立幼稚園に通っています。「近いし枠が空いているから」とよく調べることなく入園させたのですが、仲良くなったママ友に話を聞くと、「卒園児の大半は、私立小学校に入学する」といいます。

他のママ友たちからも話を聞くにつれ、すっかり感化されたCさんは、Dくんも私立に通わせたいと思うようになったそうです。

C「パパ、私立ってすごくいいらしいのよ。いまの幼稚園の環境も素晴らしいし、できればDをエスカレーター式で小学校から大学まで通わせて、質のいい教育を受けさせたいの。でも、Eの稼ぎだけじゃどうにも無理そうで……お願いパパ、Dのためにお金を出してくれない?」

A「うーん……Eくんはなんて言ってるのかな?」

C「それが、『私立は魅力的だけど、身の丈にあった教育を受けさせるべきだと思う』って言うの! Eは地頭がいいからずっと公立でなんとかなったのかもしれないけど……。Dの将来の可能性が狭まるかもしれないって説得してるんだけど、聞き入れてくれないのよ」

A「……お金はどのくらいかかるんだ?」

C「受験にかかる費用はもちろん私たちで用意するんだけど、『お受験』まであと2年でしょ。塾に通うと1年間で100万円くらいかかるみたいだから、2年で200万円。それと、小学校からの学費もできたら半分くらいはサポートしてほしいかな。

あとね、お受験がうまくいくには親の人間関係がカギで、ママ友のランチ会や子どもの誕生日会に参加するのも重要みたいで。いいとこのレストランだし普段着では行けないから、毎月数万円はかかると思うの。パートに出ることも考えたけど、けっこう頻繁に集まりがあるから、時間が制限されちゃうしあんまり意味ないと思ってて」

Bさんがつい「待って。お洋服代も私たちに出せっていうの?」と口を挟むと、Cさんは「だって、なんとかしてお受験に受かってくれないと意味がないじゃない!」と語気を強めます。

A夫婦は、娘の突然の相談に驚愕。これまで、愛する娘の願いは可能な限り叶えてきたつもりでしたが、ここまでの大金を援助して欲しいと言われたことはありません。

翌日2人を送ったあと、夫婦で夜中までどうすべきか話し合いましたが、なかなか結論を導くことができませんでした。そこで、第三者の意見が聞きたいと、夫婦は知り合いのファイナンシャルプランナーである筆者のもとを訪れました。