夫婦ともども公務員で無借金、さらに、申請したローンの金額はまったく無理のない範囲……にもかかわらず、住宅ローンを申し込んだ結果「謝絶」となってしまうケースが存在します。いったいなぜなのでしょうか。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、ローン申込時に注意したい「信用情報の落とし穴」について解説します。

公務員のAさん、不動産会社の担当者からも“太鼓判”

Aさんは役所に勤務している46歳の男性です。2つ下の妻Bさんとは同じ職場で出会って結婚した公務員の夫婦で17歳になる娘がいます。家族の関係は良好で、年に一度は家族で旅行へ出かけたり、誕生日にはお祝いに外食へ出かけたりしています。

そんなAさん家族は、これまで賃貸で生活してきました。というのも、Aさんとしては借金を抱えることに抵抗があったということです。そのため、これまで家電や自動車などを購入する際は、すべて現金で一括購入してきたといいます。

Aさんとしては、今後もローンは組まず、賃貸住宅に住み続けるつもりでいました。しかし、義弟夫婦の自宅購入をきっかけに、Bさんから“持ち家プレッシャー”がかかるようになり、Aさんは渋々持ち家について考えるようになったそうです。

そんななか、お盆で義実家へ集まった際、義弟と話す機会がありました。義弟いわく、「最近はインフレで土地も建物も高くなっているし、早く購入しておかないと将来はもっと高くなるよ。義兄さんも今のうちに購入しておいたら?」「公務員夫婦なんだから、銀行も喜んで貸してくれると思うよ」とのこと。

義弟の話を聞いたAさんはすっかりその気になり、時間をみつけてはネットで物件情報を調べるようになりました。

そんなある日、いつものように物件情報をみていたAさんは思わずスマホを二度見。なんと、いま住んでいる近くに建てられた築浅マンションが5,500万円で売りに出されていたのです。

この物件は、通勤の度に「こんなマンションに住めたら気分が良いだろうな」と見ていたマンションでした。早速不動産会社に問い合わせたところ、翌週に内見の予約ができたため、家族でマンションを見に行くことに。

内見したA一家は、洗練された雰囲気のマンションに一目ぼれしてしまいました。エントランスは天井が高く、部屋には人感センサー付きライトや24時間換気システム、浴室乾燥機など水回りも最新の設備が備え付けられており、ゴミ出しは24時間可能。妻も娘も目を輝かせています。

「パパ、ここに住みたい!」と妻と娘からお願いされたAさん。「ここなら買っても良いかな」と思い、購入する意思を不動産業者へ伝えました。

担当者も「お客さまであれば、金融機関も喜んで貸してくれると思いますよ」と太鼓判です。

すっかりマイホームを購入する気マンマンのA一家。また、住宅ローンを申し込んだメインバンクからは「Aさまであれば最優遇金利でお申し込みいただけますよ」と満面の笑みで案内を受け、改めて公務員で良かったと痛感しました。

しかし、そんな幸せいっぱいのA一家を奈落に突き落とすまさかの事態が……。

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いや、冗談でしょう?…住宅ローン「謝絶」のワケ

銀行員「誠に残念ですが、弊行ではお貸しできかねます」

Aさん「えっ……。いや、冗談でしょう? 新卒から公務員としてまじめに働いて、なにより借金もないんですよ? なのにどうして」

Aさんはなんと、4,500万円の住宅ローンの契約を断られてしまったのでした。謝絶理由を教えてもらうことはできませんでしたが、一般的に考えられるのは収益不動産用のローンやカーローンなどの借入、家賃やクレジットカードの延滞、口座引き落としの遅れなどがあることだそうです。

しかし、Aさんには借り入れがありません。一体どうしてなのか混乱していると、妻がいまにも消え入りそうな声で「もしかして、クレジットカードでの買い物も関係しますか?」と質問しました。

「カードを利用して買い物をされて、その支払いが滞っていたら可能性はあります」と銀行員。

Aさんは「まさかお前、支払いができていなかったのか!?」と驚きを隠せない様子です。

以前、テレビでポイ活の特集を見ていたAさん夫婦は、クレジットカードのポイント還元で得することを知りました。Aさんが使っていたクレジットカードはポイント還元率が悪いものであったため、還元率の良いカードを新しく作成し、Bさんが使うことに。このカードの名義人はAさんです。

しかし、新しいクレジットカードの支払いは給与が入金される口座とは別の口座に紐づいていたため、振り込みを忘れ、何度も返済を遅らせてしまっていました。Bさんは催促状を受けてやっと支払いに行っていたようです。

また、金融機関からAさんの携帯へ連絡が来たこともありましたが、知らない番号だったため電話に出ることはなく、遅延についてAさんは知らないままでした。

こうして、Aさん名義のカードの支払いが繰り返し遅延していたことにより、Aさんの信用情報に傷がついてしまったのでした。まさか、クレジットカードの返済が滞ることで信用情報に傷がつくとは……楽観的な性格のBさんは、支払いの延滞について深刻に考えていなかったと、涙ながらに謝りました。