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動画サイトのユーチューブは、アルゴリズムによって視聴者の好みを分析し、おすすめの動画を表示するしくみになっているが、ヨーロッパの10代の若者に対して、このおすすめ動画の表示を制限すると発表した。同じような動画が推奨されることで、10代のメンタルに影響を及ぼす可能性があるという。
◆10代向けに新規定 体重や体型の関連動画の表示制限
ユーチューブは5日、同サイトで有害な可能性のある動画を視聴するのを防止するため、ヨーロッパの10代の若者に対し、特定の体重や体型、健康・体力状態を理想化したり、身体的特徴を比較したり、威嚇や争いを見せたりする動画を繰り返し推奨することを制限すると発表した。
同社は、「1本の動画としては無害かもしれないが、繰り返し視聴する場合、一部のティーンエイジャーにとって問題となる可能性がある」としている。
この提言は、2018年に結成された、子供のメディア、デジタル学習、発達の専門家で構成されるユーチューブ青少年・家族諮問委員会から提出されたものだ。
同規制は2023年にまずアメリカで展開し、現在は青少年・家族諮問委員会の指導のもと、ヨーロッパをはじめ世界各地に拡大している。
すでに、ユーチューブのコミュニティガイドラインに従って、摂食障害に関する個人的な体験談を共有する動画など特定のコンテンツを10代の視聴者を対象に制限している。今回の措置は、こうした既存の制限に追加する形になる。
ユーチューブ青少年・家族諮問委員会のメンバーで臨床医のアリソン・ブリスコー・スミス氏は、「不健康な基準や行動を理想化するコンテンツの頻度が高いと、潜在的に問題のあるメッセージが強調される傾向にあり、それによって、青少年が自分自身に対する捉え方に影響を及ぼす可能性がある」と述べる。
◆摂食障害や身体醜形障害などに影響
イギリスのメンタルヘルス財団による2019年の調査では、10代の若者の37%が自分の身体のイメージに対して「マイナスな気分」になり、31%が「恥ずかしく」感じていることがわかった。また、10代の若者の10人に4人が、ソーシャルメディア上の画像によって自分の身体のイメージに不安を持ったと答えたという。
イギリス議会の医療・社会ケア委員会による2022年の報告書もまた、「ソーシャルメディアの出現とオンライン広告の増加は、ともに特定の理想化された体型に触れる機会を増やしている」と指摘している。
昨年発表された17ヶ国の50の研究を査読した大規模調査によると、毎日何千もの編集された身体の画像がソーシャルメディアに投稿されることで、身体醜形、摂食障害、精神衛生上の問題につながる可能性があるという。
2021年の研究では、フィットネス系のユーチューバーが不健康な行動を促し、憂慮すべき状況を作り上げていることがわかっている。
ユーチューブは、フランスとドイツの団体と協力し、自殺、自傷行為、摂食障害に関連することを検索すると、人々を危機管理ホットラインにつなぐしくみを構築し、導入するとしている。
◆欧州連合やイギリスで規制強化
ユーチューブなどのソーシャルメディアは、若者の精神的健康やウェルビーイングに影響を及ぼしているとして非難を浴びており、一部の政府は取り締まりを強化すると警告している。
イギリスではメディア規制当局のオフコムが5月、テック企業に対し、アルゴリズムが自傷行為や摂食障害に関するコンテンツを含む「有害なコンテンツを子供に勧める」ことを阻止するよう措置を命じた。
2022年に採択された欧州連合(EU)のデジタルサービス法もまた、テック企業に対し、子供の「健康、身体的、精神的、道徳的発達」を害する可能性のあるコンテンツへのアクセスを制限するよう促している。