『アルプスの少女ハイジ』の実写映画×スイスの大自然を感じるワイン

毎月、映画とワインのマリアージュを提案していく連載、ほろ酔いシネマ。

今月は、世界中で愛される名作児童文学『アルプスの少女ハイジ』の実写映画『ハイジ アルプスの物語』。

作品の舞台となるスイスの大自然を感じるワインとともに、素敵なおうちシネマを!

▶前回:Vol.18「『僕のワンダフル・ライフ』×アメリカのスリー レッグド レッド」



大人もシリアスに楽しめる、実写版アルプスの少女ハイジ



(※掲載内容は取材当時のものです)

柳:今年の夏、おふたりはどこに出かけるの?

新谷:私は久々にハリウッドに行きたいですね。せっかくワインのことも学ばせていただいてるので、そのままカリフォルニアのワイナリー巡りも。ただ、この円安。妄想で終わりそうです。

嵩倉:私は今年こそ世界遺産のひとつ、パキスタンのモヘンジョダロへ………と言いたいところですが、もう少し近場のベトナムへ行く予定です。現地ではビールだけじゃなくてワインも飲みたいなぁ。

そういう柳さんは今年もあちこち行かれてますよね。

柳:イタリアのトスカーナに始まり、ワイン発祥の地、ジョージア、フランスはシャンパーニュ、それにスペインのバルセロナだね。

この夏はさわやかにスイスの高原へと思ってたのだけど、新谷さんと同じく1スイスフランが180円もする昨今では、とてもバカンスになぞ行けない。それで新谷さんに、スイス気分に浸れる映画をリクエストしたところ……。

新谷:はい、『ハイジ アルプスの物語』。2017年に公開された児童文学『アルプスの少女ハイジ』の実写映画です。

撮影はスイス東部グラウビュンデン州のベルギューン村でも行われ、アルプスの美しい景観を満喫できますよ。

柳:ハイジといえばアニメの『アルプスの少女ハイジ』。ふたりとも再放送では観てると思うけど、僕は毎週日曜の夜にリアルタイムで観てたんだよね。

嵩倉:あのアニメであこがれたのが、暖炉の火でトロリと溶かしたチーズをのせたパン!

柳:うん、あのシーンを見るたびよだれが流れた。まさかとろけるチーズがスーパーで簡単に手に入る日がやってくるとは、当時は思ってもみなかったよ。

新谷:アニメの方は全52話と尺が長いので、オリジナルのエピソードに小鳥のピッチーの物語なども交ぜられてましたが、映画はヨハンナ・シュピリの原作におおむね忠実です。アニメでも印象深い干し草のベッドも登場します。



今月のワインシネマ『ハイジ アルプスの物語』



日本でもアニメーションシリーズが作られている、不朽の名作「ハイジ」の実写映画。

おんじやペーター、ヤギのユキちゃんとのアルプスでの暮らし、クララとの出会いと友情……スイス人作家ヨハンナ・シュピリの小説を忠実に描く。

ハイジを知っていても実は物語はよく知らない、という人にオススメしたい。

美しいスイスの自然とハイジの自由な生き方が、大人の心にも響く



アルプスの山に囲まれた雄大で美しい風景に引き込まれる。

撮影地のベルギューンは、レーティッシュ鉄道アルブラ線と氷河急行のランドヴァッサー橋から少し南に行ったところ。スイスへ旅に出たくなる。

柳:ドイツやスイスの俳優ばかりなので、日本ではなじみのない顔ぶれだけど、アルムおんじ役はスイスの名優ブルーノ・ガンツ!ネット動画でさまざまなパロディ版が作られた『ヒトラー〜最期の12日間〜』の総統閣下ですね。

頑固じじいの時はその面影がありますが、ハイジとソリ遊びするシーンなんて好々爺そのもの。別人かと思いましたよ。

嵩倉:ハイジ役の子がまたかわいくてぴったり。

新谷:アヌーク・シュテフェン。500人の中からオーディションで選ばれたスイス人俳優で撮影当時9歳。これがデビュー作だったとは信じられない名演技でした。

ハイジというと子供向け映画と思われるかもしれませんが、アルプスの大自然の中、自分にとって大切なものは何か、自分にとっての幸せとは何かに気づかせてくれるという点で、じつは大人が観ても感慨深い作品に仕上がっています。



このワインをひと口飲まば、アルプスの高原にトリップ



嵩倉:それで、柳さんがこの映画に選ばれたワインは?

柳:もうこれしか思いつかなかった。シュロシュグット・バシュトベルのミュラー・トゥルガウ。

スイス北東部、ボーデン湖の南のトゥルガウ州で造られる白ワインで、ミュラー・トゥルガウとはトゥルガウ州出身のヘルマン・ミュラー博士がリースリングとマドレーヌ・ロワイヤルを交配させて生み出したブドウ品種だ。

ドイツではリープフラウミルヒなど、大量生産の薄っぺらな半甘口ワインに使われているけれど、適所で丁寧に造れば上質なワインができるという良い見本。

レモンや青リンゴの香りが華やかに広がり、透き通るような自然の酸味とミネラル感。じつにピュアな飲み心地で、スイスの大自然とハイジの純真な心をそのまま表したようなワインだね。



「SCHLOSSGUT BACHTOBEL Müller-Thurgau(シュロシュグット・バシュトベル ミュラー・トゥルガウ2022)」



1784年創業の長い歴史をもつワイナリーで現在8代目。除草剤、殺虫剤、化学肥料をいっさい使わない有機農法を実践し、2021年に認証を取得した。

このミュラー・トゥルガウは優しく搾った果汁を低温発酵。ピュアなアロマと味わいに仕上がっている。

¥7,700/杉山商事 Mail:vin@sugiyama1904.co.jp

嵩倉:それではこの夏は皆さん、海外旅行は諦めて、このワインを携え、山梨県明野町の「ハイジの村」に参りましょう。

柳:新谷さんがハイジ、クラリン(嵩倉)がクララ、僕がペーターのコスプレで?(笑)

新谷:わぉ、ちょっと怖い気もしますが(笑)、楽しそう!



マリアージュをお届けするのはこの3人!



幅広い分野の雑誌で執筆を手掛け、切れ味あるコメントに定評があるワインジャーナリスト。実写映画で唯一の不満はヨーゼフの不在。だが、ヨーゼフはアニメのオリジナル・キャラと知る。

映画を中心に、書いたり取材したり喋ったり。久々に『ハイジ』を観て、物欲にまみれた我が暮らしを反省。心が潤いました。スイス行きたいけど、ひとり旅か……。

本連載の担当になって5年目に。ワインの知識は少しずつでも着実に積み上がっていると信じ、柳氏にしがみつく日々。スイスといえばレーティッシュ鉄道に乗ってみたい。



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