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旅行市場が急速な回復を見せるなか、富裕層たちの間でも旅行熱が高まっている。国際ホテルチェーンのマリオット・インターナショナルは今年4月から5月にかけ、ラグジュアリーな旅行に関する意識調査を実施した。オーストラリア、シンガポール、韓国、日本、インドネシア、インドの6ヶ国に住む、1202名の富裕層を対象に、オンラインアンケートを通じて旅行嗜好や意識を尋ねたものだ。
結果をまとめた『New Luxe Landscapes Report』が、7月に発表されている。それによると、オーストラリアや日本などが人気の旅行先となっているようだ。日本は42%の回答者にとって訪れたい目的地として挙げられている。
◆富裕層の7割近くが旅行を計画中
調査によると、アジア太平洋地域の富裕層旅行者の68%が、今後12ヶ月以内に旅行にまつわる支出を増やしたいと考えているという。なかでも人気の旅行先として、オーストラリアが最も注目されている。アジア太平洋地域の富裕層旅行者の46%がオーストラリアを訪れる予定だという。
マリオット・インターナショナルのアジア太平洋地域(中国を除く)ラグジュアリー担当マネージング・ディレクターであるオリオル・モンタル氏は、米フォーブス誌(7月1日)に対し、「オーストラリアは自然と野生動物の楽園であり、旅行者にとって魅力的な目的地です」と述べている。
次いで人気の高い目的地に日本が挙がっており、42%が訪れる予定だ。3位には香港が挙がり、27%の支持を得ている。
順位
目的地
割合
1位
オーストラリア
46%
2位
日本
42%
3位
香港
27%
4位
マレーシア
25%
4位
シンガポール
25%
6位
中国
23%
7位
タイ
22%
8位
ニュージーランド
20%
9位
韓国
19%
10位
インドネシア
17%
アジア太平洋地域の富裕層が同域内で今後12ヶ月の間に訪れる予定の目的地
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◆人気の旅行先はオーストラリア
どのような魅力が、富裕層をこうした国々へ誘うのか。まずはオーストラリアについてだが、トップに挙がったことは、マリオットにとっても意外だったようだ。モンタル氏はフォーブス誌に、「最初は驚きましたが、調査結果を詳しく見るとその魅力が理解できます」と語る。
理由については、「オーストラリアは、自然や野生動物に触れることができる場所としても人気が高いのです。84%の回答者が自然に没入できることを重視しており、また、76%は野生動物を見たいと回答しています」と分析している。
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また、現地の文化を感じられるイベントが豊富であることや、オペラハウスに代表される独特の建築デザインも魅力の一つとなっているようだ。イベントや建築は旅行先選びへの影響が大きいようだ。旅行先を問わず全回答者の77%が、旅行中に文化イベントに参加する予定だと回答した。82%が、独特な建築スタイルやデザインを見たいと回答している。
特にインドの富裕層旅行者の間でオーストラリア人気が高く、69%が訪問したいと答えている。
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◆日本を訪れたい理由
日本が富裕層の間で第2の人気を博しているが、豊かな食文化に魅力を感じている可能性がありそうだ。マリオットの報告書は、富裕層の旅行者全般に、「贅沢なグルメツアーが旅行の主要な動機になっている」と指摘する。
マリオットのモンタル氏は、本調査を通じて3つのペルソナ(ターゲットとする顧客層を象徴的に表した仮想の人物)を見いだしたと語る。その一つが「新しい食体験を発見したい旅行者」であるという。このほか、家族や友人と旅する旅行者、地元コミュニティとのつながりを求める旅行者がペルソナとして設定されている。
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回答者の88%が、新しい食べ物やグルメ体験に出会うチャンスを、「重要」または「非常に重要」と回答した。報告書は、「富裕層は、ダイニングのトレンドに敏感であり、新しいレストランでの食事を体験したいと強く望んでいる」と指摘する。
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◆重視したいことがら
重視したいことがらについては、美食のほか、安全性が挙がっている。調査によると、富裕層旅行者の91%が安全性を重要視している。旅行中の安心感を含めて、ラグジュアリー体験の一部と捉えられているようだ。
もっとも、ひとくちに安全性といっても、その内容は多岐にわたる。モンタル氏はフォーブス誌に、「安全性とは、プライバシー、食品の安全性、データ保護など多角的な要素を含みます」と説明している。
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オーストラリア、日本、香港が富裕層旅行者にとって人気の旅行先となっている理由として、美食と多方面からの安全性を満たしていることが挙げられるだろう。
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◆ウェルネスで注目のバリとタイ
もう一つの注目要素が、ウェルネスだ。重視すると回答した人々は80%に上る。フォーブス誌は、特に26歳から34歳の回答者に絞ると、この値は86%にまで上昇するとしている。
ウェルネス面ではバリやタイが人気の旅行先となっている。同誌はバリのユニークなプログラムとして、高級リゾートの「マンダパ・リッツ・カールトン・リザーブ」が提供する「ディスコネクト・トゥ・リコネクト」プログラムを紹介している。デジタルデバイスから離れて集中力を取り戻し、目的意識を高めるプログラムだ。バリの美しい自然環境の中で、心身のリフレッシュを図ることができるという。
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一方、タイのウェルネス旅行も、伝統的なタイマッサージやヨガ、瞑想などのプログラムが充実している点でも人気が高い。報告書は、「静かな目的地や絵のように美しい環境は、日々のストレスから解放され、自身の健康に集中するのに理想的である」と述べている。特にミレニアル世代の旅行者は、こうしたウェルネス体験を求めてタイを訪れることが多いという。
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◆インドが旅行市場を牽引
アジア太平洋地域のなかでも、特にインドの富裕層旅行者が最も活発に旅行を検討しているようだ。インドの富裕層の89%が、旅行の支出を増やす予定であると回答している。報告書は、インドの富裕層が「さまざまな旅行計画に非常に熱心に取り組んでいる」と述べる。
傾向としてインドの富裕層旅行者は、家族や友人と一緒に旅行することが多いという。特に記念日やプライベートな出来事を祝うために旅行に出ることが増えているようだ。38%が友人との旅行を、33%が記念日旅行を計画している。人口が伸びているインドだからこそ、旅行市場の牽引(けんいん)力も強いようだ。
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安全で快適に、美食を思うまま堪能できる国として、オーストラリアや日本、香港がアジアの富裕層に選ばれる結果となった。
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