河野氏失速は「自分の考えを強引に押し通す手法」

――業界別データを見ると、石破氏は農・林・漁・鉱業、ついで小売業、不動産業で強さを発揮。小泉氏は金融保険業と建設業で強さを見せています。それぞれの業界はどういう理由で、2人に期待しているのですか。

櫻井浩樹さん 石破氏は、元農林水産相で、食料安全保障と地方創生を通じて地方を守る政策を掲げています。そのため、特に、農・林・漁・鉱業からの支持が大きいのではとみています。フリーコメントでも、「石破氏さん地方創生に尽力してくれそう。」(呉服・服地小売業、新潟県)などがありました。

小泉氏は、「貯蓄から投資への歯車がようやく動き出した。今、この流れに水を差すような金融所得課税を議論するタイミングではない」と金融所得課税には否定的な考えを示しています。

若さのアピールや新自由主義的な考えが、金融保険業に受け入れられているのではないでしょうか。フリーコメントでは、「世代交代が必要である」(サービス業、岩手県)といった声がありました。

――デジタル化推進など、これまで改革路線の先頭に立ってきたイメージが強い河野氏が、小林氏より低い6位というのがちょっと意外ですが、なぜ河野氏の評価がイマイチなのでしょうか。

櫻井浩樹さん 小林氏は、元経済安全保障担当相として、中小企業の価格転嫁の取り組みを支援し、下請法を抜本改正するなどの政策で支持を集めたのかもしれません。

河野氏は、デジタル大臣として改革路線の先頭に立ってきたイメージがありますが、マイナンバーをはじめ、自分の考えを強引に押し通す、違う意見(人の意見)はブロックする、などが知れ渡ってきました。

経済の発展という切り口では印象がやや弱いのかもしれません。河野氏のフリーコメントでは、「デジタル化推進による効率化・生産性向上に期待できる」(サービス業、東京都)などがあるのですが。

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青山氏驚きの4位は、自民党ではタブーの「消費税減税」

――ところで、驚きなのが立候補しなかった青山氏が、河野、茂木、上川、林氏ら政権幹部として実績のある人々を押さえて4位に浮上したことです。青山氏のどこを企業は期待していたのでしょうか。

櫻井浩樹さん 青山氏は、自民党内ではタブーである「消費税減税」を公約に掲げていました。束縛を受けない自由な発想と行動力、景気の上向きに期待が持てる点が、企業からの支持を一定数集めたのではと考えております。

――なるほど。現在、各候補たちは経済政策についてさまざまな論戦を交わしていますが、企業はどこに注目・期待していると思いますか。また、あなた自身は調査担当者としてどこに注目・期待していますか。

櫻井浩樹さん 企業は、中小企業向けの政策や賃上げ、減税などに注目しているようです。実際に、アンケートのフリーコメント欄でも中小企業向け支援や賃上げ、減税等に関わるコメントが多く、注目度が高くなっています。

私自身は、中小企業向け政策もさることながら、一消費者として物価高対策等にも注目しています。

――今回の調査で特に指摘しておきたいことがありますか。

櫻井浩樹さん 今回調査は「日本経済・ビジネスの発展に寄与するのは誰か」という切り口で実施しました。9人の立候補者の強み、期待値が、企業からどのように見られているか、忖度なしで知る機会になったと思います。

一方で、抱えている課題は経済政策以外にも多岐にわたりますので、各候補者の政策全般について注視したいと思います。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)