高学歴で高収入のバリキャリ29歳女。美人なのに食事会で男に「物足りない」と思われるワケ

◆これまでのあらすじ

アパレル関連の会社を経営する翔馬(32)は、モテるが特定の彼女がなかなかできない。そんなとき、鮨店で隣の席にいた年上の男性経営者・秋山に話しかけられ、連絡先を交換した。親友の元太も「彼女を作れ」とうるさいので、秋山主催の食事会に行くことになったが…。

▶前回:「LINE交換しませんか?」麻布十番の鮨店で思わぬ出会いが…

Vol.2 西麻布の高級居酒屋に集まった美女たち



俺と元太が、秋山に出会ったのは2週間前。

推定50歳の飲食店経営者をしている彼から、なぜか食事会に誘われたのだ。

親友の元太もお節介に「ちゃんとした彼女を作れ」とうるさい。

だから、黙らせるためにも行くことにした…というのは建前で、本当は有り難く思っている。

最近は男だけで遊んでばかりだったし、女の子とお酒を飲む手段は、店に行くか、金を払って来てもらうか、の2パターンだったからだ。

「今日の店は『田中田』かぁ。そういえば、博多本店に一緒に行ったよな?」

「あぁ。覚えてる。何を食べてもうまかったわ。値段覚えてないけど」

「覚えてないんじゃなくて、知らないんだよ。あそこはメニューに金額が載ってないから」

「へぇ、そうなの」

元太と会話をしながら、本気で好きな子がいたのは、いつが最後か思い出してみたが、名前すら出てこなかった。

「すみません、遅くなりました」

実際は時間ちょうどに着いたのだが、秋山と女性たちが先に来ていたので、俺は無意識に謝った。

「こんちは。うわッ!二人ともめちゃくちゃ可愛いっすね!俺は元太っす!!」

― 出会いの場を提供してくれるのは有り難いが、爆美女が来ることは滅多にない。だから期待はしない。

俺は、ここに来るまでそう思っていた。でも今は、中学生のような反応を見せた元太と同じ感想を抱いている。

秋山が連れてきてくれた女性たちは、いい意味で予想を大きく裏切ってくれたのだ。

「僕らも着いたばかりだよ。もう一人女の子が来るけど、先に始めようか!」

秋山がそう言うので、それぞれが飲みたいお酒を注文した。

「シャンパンは、香澄ちゃんだったよね?」

「そうで〜す!」

笑顔で手を伸ばした小柄な女子は、香澄というらしい。顔が小さくて、色が白い。

毛先だけ巻かれた髪は、彼女が動くたびふわふわと揺れ、その度に桃のような甘い匂いがする。

「じゃあ、このまま自己紹介しちゃいますね。えっと…名前は香澄でPR会社に勤めています。趣味はSNSと、ネトフリとかアベマで香ばしい恋リアを見ることで〜す」

「香澄ちゃん、よろしくね。で…お隣りは友達?」

俺は、姿勢の良い黒髪ロングの高身長女子に視線を移す。

「いえ、今日が初対面です。私は玲。東大卒で総合商社で働いています」

玲が短い自己紹介を終えると、すかさず香澄が口を開く。

「え〜!東大?すご〜い!!ところで、翔馬さんと元太さんは、なんのお仕事しているんですか?」

― キタ。この質問。

俺の悪い癖なのだが、会社経営という肩書を明かしたときの反応で、女性をジャッジしてしまうところがある。

美人で経営者の知り合いが多い女性は、反応が薄いので物足りない。かといって目の色を変える、専業主婦願望が隠せない金目当て女性も萎えてしまうのだ。

「え〜〜!すご〜い!!!かっこいいなぁ、尊敬しちゃいます!ところで、どんな女性がタイプなんですか?」

「あ……それは、もう少しお酒を飲んでからにしようかな」

― 香澄は圧倒的後者。玲は香澄に圧倒されていただけかもしれないが、恐らく前者だろう。

そんなことを思っていた時だった…。



「ごめんなさい。遅くなっちゃいました!」

女性の声がして、皆の視線を一気に集める。

黒のTシャツにデニム。シンプルな服装なのにだらしなく見えないのは、スタイルがいいからなのだろうか。

ラフに結んだ髪さえ計算されたように見える。

「おぉ、ミナちゃん。待ってたよ!!コムギちゃんどうだった?」

「はい。動物病院が混んでて…でもなんともなかったので大丈夫です」

愛犬を使う言い訳はよく聞くが、彼女の表情を見る限り、嘘をついているようには見えなかった。

しかも、香澄や玲に負けず劣らず美しい。

「翔馬、今日アタリだな。秋元っつぁんすごいわ」

「あぁ」

元太が耳打ちしてきたので、俺は正面を向いたまま小さく返事をした。

経営者に美女友達がいるのは、至極当然で港区では飽きるほどに見慣れた光景だ。

けれど、こんな美女たちを、秋山は独り占めせず、なぜ俺と元太に紹介してくれるのだろうか。

― この男、自分によっぽど自信が…?

そんなことを考えていると、注文した料理が次々と運ばれてきた。

元太は香澄の方を見ながら、わかりやすくデレデレしている。どうやら彼女のことが気に入ったらしい。

― 女の本性を見抜けないヤツは、お気楽で羨ましいよ。

けれど、残念ながら香澄は元太に興味がないようだ。さっきから俺にばかり優しくしてくれる。

香澄みたいな女性は苦手なのだが、好意を向けられると素直に嬉しいのが悔しい。

「翔馬さん!このアワビのバター焼き、すっごく美味しいですよ。はいどうぞ♡」

「ありがとう」

「え〜香澄ちゃん、僕にも取ってぇ」

「はいは〜い」

その様子を日本酒を飲みながら半笑いで見ている玲と、黙々と食べ進めるミナ。

見た目だけじゃなく、彼女たちは性格もまるっきり違うのが面白い。

うまいツマミに、綺麗な女性たち。酒が進まないわけがない。

何杯目かのお酒を人数まとめて注文すると、秋山は俺たちに言う。

「気を使って聞いてこないのかもしれないけど…」

「はい?」

「翔馬くんと元太くんは、僕と彼女たちの関係が気になっているよね?」

俺と元太は顔を見合わせる。

「そうっすね、確かに。どういう知り合いなんですか?」

元太が聞くと、秋山は持っていたグラスをテーブルに置いた。

「想像しているような変な関係じゃないんだよ。だから、彼女たちの名誉のためにも言っておくね。

香澄ちゃんは、僕が経営している店で昔アルバイトしていたの。玲ちゃんのお家は栃木の有名な蔵元で、日本酒を卸してくれているんだよね。

で、ミナちゃんは…店に来ていたところをナンパしました!あはは」

秋山もだいぶ酒が回っているらしい。顔がほんのり赤くなっている。

「秋山さん、俺らのこともナンパしたじゃないですか〜!だからミナちゃんと同じですね」

俺はミナをフォローするつもりで言った。

「ははは、そうだったね。ごめんよ、ナンパおじさんで」

「全然。お声かけいただけて光栄ですよ」

聞けば、秋山は銀座に高級和食店と、焼鳥店を都内に3店舗、その他にバーなんかも経営しているそうだ。

「実は、食事会を開催してほしいと言ってきたのは、玲ちゃんなんだ。クライアントに頼まれたら、断れないからねぇ」

「ちょっと、秋山さん!それ言わないでくださいよ!」

「え?内緒だった?ごめん。でも、今年29歳だからって、焦ることないのにね」

不意に自分の名前を出された玲は、顔を赤くしている。

「あ。玲ちゃんと私、同い年だ。95年?」

その様子に救いの手を差し伸べたのは、意外にもミナだった。

「うん。今年29歳。そういえば私たち、お互いの年齢を知らなかったね。香澄ちゃんは?」

玲が香澄に聞く。

「31歳だけど」

「……あぁ、そうなんだ…ごめんなさい。てっきり年下かと」

「ちょっと、急に敬語になるのやめて。その気の毒そうな顔もやめて」

「すみません、香澄先輩」

「だから、やめてってば!」

「あははは」

女子たちのやり取りに、男性陣も思わず笑ってしまう。

気づけば3時間が経過していて、ミナの犬も心配だからと、僕らは解散した。

「あ、グループLINE作ってくれてるわ」

「よかったな」

「いやいや。お前の彼女を探す会なんだから、“よかったな”はちがうだろ」

― まぁ、そうか。

珍しく元太がツッこんでくるので、何も言えずにいたら、ある女性から個別メッセージが届いた。

『今日はありがとうございました。よかったら今度はふたりでお食事行きませんか』

その瞬間、俺の中の恋愛スイッチがカチッと音がした気がした。



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翔馬は連絡をくれた女性とデートに…