1.薬剤師の面接で見られるポイント4つ
面接では受け答え以外にも、応募者の立ち居振る舞いも踏まえて総合的に合否が判断されます。薬剤師の面接で採用担当者が見ているのは主に次のような点です。
コミュニケーション能力
同僚や患者と接するうえで、必要な内容をわかりやすく的確にまとめる表現力や相手の発言を理解するコミュニケーション能力は、薬剤師に欠かせないスキルです。質問に答える際は結論から話し、会話のキャッチボールを意識しましょう。
一般常識・マナー
業務上さまざまな人と関わりを持つ薬剤師は、一般常識や基本的なマナーを備えていることが大切です。あいさつをする、感謝や謝罪をきちんと伝えることはもちろん、面接会場でスマートフォンをいじらない、TPOをわきまえた行動を取るといった部分もチェックされます。
身だしなみ
面接の場にふさわしい服装や髪型、清潔感があるかどうかが見られます。勤務中のネイルの可否やヘアスタイル、アクセサリー類などに規定がある職場もあるため、面接時から注意しておくと良いでしょう。
仕事に対する意欲
応募者の意欲は、志望動機の内容だけでなく話す姿勢や表情からも伝わるものです。視線が泳いだり表情が暗かったりするとマイナスな印象を与えますので、明るい表情と良い姿勢を心がけましょう。
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2.薬剤師の面接で聞かれる質問・回答例
ここからは、薬剤師の面接でよく聞かれる質問とその回答例を紹介します。前提として、面接官が聞きたいのは立派な模範回答ではなく、あなたの考えや人となりがわかる回答です。以下の例を参考に、あなたらしさが伝わる受け答えを心がけてみてください。
自己紹介・自己PRに関する質問
Q「自己紹介をお願いします」
自分の名前と経歴、志望理由、締めのあいさつを簡潔に伝えます。最初の質問なのであまり長くは話さず、30秒〜1分程度（150〜300文字程度）を目安にまとめましょう。
回答例「◯◯◯◯（自分の姓名）と申します。薬剤師として◯年間、調剤薬局で勤務し、患者さま一人ひとりに寄り添う姿勢を大切にしてまいりました。産休・育休を経て、現在は新しい環境で地域医療に貢献したいと考え、御社を志望いたしました。これまでの経験と自己研鑽の成果を活かし、早期に貢献できるよう努めてまいります。本日はどうぞよろしくお願いいたします」
Q「自分自身をどのような性格だと思いますか」
Q「長所と短所を教えてください」
この質問では「客観的に自分をどう捉えているか」が見られます。長所は応募先の職場でどのように活かせるかを伝えます。短所の伝え方には注意が必要で、悪い点をそのまま伝えて終わるのは禁物です。裏を返せば長所とも捉えられる内容を選んだり、克服のために取り組んだエピソードを紹介したりするなど、ポジティブな内容に変換するようにしましょう。
回答例「私の長所は責任感が強く、細部にまで気を配りながら業務に取り組める点です。現職では、調剤ミスを防ぐために常に確認作業を徹底してきました。また、患者さまへの服薬指導時には、わかりやすい言葉で薬の服用方法や副作用のリスクを説明し、不明点がないかを確認するよう心がけています。
一方、短所は完璧を求めすぎてしまうことです。時には効率が下がることもあったため、優先順位を意識し、柔軟に対応できるように努めています」
志望動機に関する質問
Q「志望動機を教えてください」
志望動機は応募先の法人理念やサービス内容、独自性などを踏まえたうえで「この職場だからこそ働きたい」という気持ちを伝えることが大切です。さらにこれまでの経験やスキルをもとに、その職場でどのような貢献ができるのか伝えると良いでしょう。
回答例「御院はがん治療に強みを持ち、最新の治療法や薬物療法を積極的に取り入れている点に魅力を感じました。現職での経験を通じてがん治療に関心を持つようになり、より専門的な知識と経験を積むことで、将来的には外来がん治療認定薬剤師の取得を目指したいと考えています。御院のチーム医療に貢献しながら、自身のスキルも伸ばして成長していきたいです」
Q「入職後に取り組みたいことはありますか」
その職場で何を成し遂げどのような貢献ができるのか、また本人の希望を叶えられるのかを確認する質問です。自由に答えてOKですが、事前にしっかりと応募先の組織や業務内容について調べたうえで、現実的な内容を答えましょう。とくに未経験者の場合、下調べが不足していると、実際の業務とは異なる的外れな回答になってしまうことがあります。
回答例「入職後は、まず御院の業務フローやチームの一員としての役割をしっかりと把握し、スムーズに現場に貢献できるように努めたいと思います。とくに疼痛ケアの領域において、最新の薬物療法や治療法に関する知識を深めるため、院内での研修や勉強会に積極的に参加し、実践的な知識を身につけていきたいと考えています」
Q「前職の退職理由／転職理由を教えてください」
中途採用の人が必ずと言っていいほど聞かれる質問です。「職場の人間関係が悪かった」「残業が多く、給料が少なかった」など前職の悪いところを正直に伝えてしまうと、「思うようにいかないときにまた辞めてしまうのでは」と思われてしまいます。たとえネガティブな原因だったとしても、転職理由は「自分のやりたいことを実現するため」「スキルアップのため」など、前向きな理由を伝えるようにしましょう。
回答例「現職は大手のドラッグストアで、調剤業務のほかOTC薬の提案、健康相談、日用品販売など幅広い業務に携わることができました。その一方で、地域に密着した、より個別的なサポートができる環境で働きたいという思いが強くなりました。御局のような地域密着型の調剤薬局では、患者さま一人ひとりとの関係を深め、長期的な健康管理に直接関わることができると考えています。これまでの経験を活かしながら、より親身なサポートを提供し地域医療に貢献できるよう努めたいと考えています」
仕事・経験・スキルに関する質問
Q「薬剤師を目指したきっかけを教えてください」
薬剤師を目指したきっかけを聞くことで、「応募者の人となり」や「その仕事に対する思い」を確認する質問です。きっかけは人それぞれなので、エピソードを交えながら具体的に伝えるようにしましょう。
回答例「私が薬剤師を目指したきっかけは、家族の病気を通じて医療の大切さを実感したことです。とくに、母が長期的な治療を受けるなかで、病院薬剤師の方が親身に相談に乗ってくださった経験が深く印象に残っています。それまで薬局窓口で薬を渡すだけの印象だった薬剤師の専門知識がいかに重要で、患者の安心や健康にどれほど貢献できるかを強く感じました。この経験から、私も薬剤師として患者さんに寄り添い、適切なサポートを提供することで、少しでも役に立てる存在になりたいと思っています」
Q「仕事をするうえで心がけていることを教えてください」
この質問では、あなたが薬剤師として働くうえでの信念を聞くことで、応募先の理念や方針と合っているかを確認しています。まず結論を伝え、続いて具体的な理由を説明しましょう。自身の心がけていることをもとに実際に取り組んだエピソードを聞かれる可能性もあるので、回答できるよう用意しておくと安心です。
回答例「私が仕事をするうえで心がけていることは、常に『患者さまの視点に立つ』ことです。患者さまが抱える不安や疑問に対して、丁寧に耳を傾けることが大切だと考えています。具体的には、服薬指導の際に患者さまが理解しやすいように説明を工夫し、疑問点があれば気兼ねなく尋ねてもらえるよう話しやすい雰囲気づくりを心がけています。以前、ある患者さまが新しい薬に対して不安を感じていた際には、服用方法や副作用について詳しく説明し、その後も定期的にフォローアップをおこない、安心して治療を続けられるようサポートしました。このように患者さま一人ひとりに寄り添い、信頼関係を築くことがより良い医療提供につながると考えています」
Q「これまでの仕事で印象に残っていることを教えてください」
Q「印象に残っている患者さんとのエピソードはありますか」
薬剤師としてこれまでにどのような経験をし、どう対応してきたのか、そしてその出来事をどう捉えているかを聞く質問です。エピソードの状況を説明し、そのうえで自分が学んだことや成長した点に触れるようにしましょう。
回答例「とくに印象に残っているのは、ある高齢の患者さまが複数の慢性疾患を抱え、複数の薬を服用していたケースです。最初に処方された薬の副作用に悩まされ、服薬が続かないと相談を受けました。この際、私は薬剤の相互作用や副作用について再評価し、医師と連携して処方の見直しを提案しました。また、患者さまが理解しやすいように服薬指導を丁寧におこない、生活習慣の改善についてもアドバイスしました。
この一件を通じて、患者さまの状況をしっかり把握し、医師と連携しながら最適な治療法を提案することが、患者さまのQOLを向上させる大きな要素であると学びました」
Q「今後のキャリアプランについてどのように考えていますか」
採用側が希望する人材と応募者の希望がマッチしているか確認するために聞かれる質問です。また応募者が自分自身のキャリアに対してどのような展望を抱いているか確認する意味もあります。
採用されるために無理なキャリアプランを答える必要はありませんが、働く意欲が伝わるよう、できるだけ前向きな将来像を伝えられると好印象につながります。
回答例「これまでの主任経験を活かし、後輩薬剤師の指導や業務改善に貢献したいです。また将来的には、より専門的な知識を深めるために、認定薬剤師の資格を取得したいと考えています。とくに慢性疾患や高齢者医療に関する専門知識を強化し、より質の高い服薬指導や治療提案をおこなえる薬剤師を目指したいと考えています」
労働条件・働き方に関する質問
Q「ほかにも選考を受けていますか」
この質問に対して「御院しか受けていません」と答えることで志望度の高さをアピールする人がいますが、事実でないのなら選考状況は正直に答えるようにしましょう。ほかに選考を受けているからといって一概に評価が下がるわけではなく、採用側は複数の応募者の採用スケジュールを調整する目的や、応募者の志望先に一貫性があるかどうかを確認するために質問していると考えられます。
回答例「はい、現在ほかにも1社選考を受けており、来週面接を予定しております」
Q「夜勤／残業は可能ですか」
入院施設のある病院や夜間営業しているドラッグストアなどで聞かれる質問です。家庭の都合などで難しい場合は答えづらいかもしれませんが、対応できると取り繕ってしまうと入職後トラブルに発展しかねないため、正直に伝えたほうが良いでしょう。その際には「夜勤は一切しません」と強気な態度ではなく、理由とともにできる限り努力する姿勢を見せると角が立ちにくいです。
回答例「まだ小さい子どもがいるため、基本的には日勤を希望します。しかしほかの方とのシフトの都合上、夜勤や残業が必要な際にはできる限り入れるよう調整したいと思っています」
Q「異動は可能ですか」
チェーン展開しているドラッグストアや調剤薬局などで聞かれる質問です。家庭の都合などでどうしても異動が難しい場合は正直に答えて問題ありません。居住地と同じ区内や市内など、譲歩できる条件がある場合はその内容を伝えましょう。
回答例「夫の仕事の都合で転居を伴う異動は難しいですが、自宅から通える範囲でしたら異動可能です。複数の職場でさまざまな経験を積むことは良いキャリア形成につながると思います」
Q「何か質問はありますか」（逆質問）
面接の終盤では、応募者からの質問である逆質問を尋ねられることが多いです。その際に「とくにありません」という回答では、意欲が欠けている印象を与えてしまいます。少なくとも3つ程度は事前に質問を用意しておくと良いでしょう。
質問内容は自分が聞きたいことでOKですが、「事前に調べればわかる情報」「面接官がすでに説明したこと」「福利厚生や待遇面に関することばかり」を質問するのはNGです。もし準備していた逆質問の答えがそれまでの会話で登場した場合は、「お聞きしたかった質問はこれまでのお話で解消できたため、追加ではありません」などと伝えると好印象です。
逆質問は自己アピールや有用な情報を得られるきっかけにもなるため、上手に活用しましょう。
回答例「院内の研修や勉強会があれば教えていただきたいです。日々の業務だけでなく、最新の知識や情報を学ぶために、そういった機会があれば積極的に参加したいと思っています」
