さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはソワソワと向かう場所だ。
今回は、ラブホ従業員が遭遇した困った客のエピソードを紹介する。
◆プレミアム会員は最大で20パーセントオフ
以前、ラブホでバイトをしていた苑田紗耶香さん(仮名・20代)は、勤めていたラブホに存在していた“会員カード”におけるトラブルについて教えてくれた。
「どのラブホにもあるかとは思いますが、来店回数でお部屋の割引額が変わるサービスがあるカードでした。最高ランクのプレミアムになると、最大で20パーセントの割引が適応されます」
客は、入室する際に会員カードを機械に通し、来店回数を貯める仕様だ。先輩従業員からは、「フロントでは、機械を通したあとに必ずカードを抜いたかを確認するだけだから……」と、言われていたそうだ。苑田さんは、利用規約を軽く読み、何かあったとき用のマニュアルに目を通すくらいだった。
ある日、ピークタイムが過ぎひと段落がついたころ、1人の男性客が現れた。「どうしたんだろう?」と思い、フロントに行ってみると……。
◆会員カードをなくしただけでそんなに怒る?
「私もしっかり認識できるくらいの常連客でした。慌てた様子で、『会員カードをなくしたみたいで』と言われたんです」
苑田さんは、「いや、まさか……」と思いながらも、忘れ物ボックスを確認したが会員カードはなかった。また、清掃スタッフに確認しても、「カードはなかったよ」と言われたそうだ。苑田さんは、客にその旨を説明したのだが。
「お客様はご立腹でした。私が謝罪し、『会員カードのIDは覚えていらっしゃいますか?』と聞くと、『そんなの覚えているわけないだろ!』と怒られてしまいました」
苑田さんは“クレジットカードをなくしたなら焦ったり怒ったりするのはわかるけど、ラブホの会員カードでここまで怒る?”と、正直思ったという。むしろ、そのことが徐々におもしろくなってきてしまい、笑いを堪えながら必死に謝ったそうだ。
◆来店するたびに「(プレミアム会員に)もうなった?」と聞いてくる客
「失くしたのはラブホの会員カード。たかがと思うかもしれませんが、お客様にとって大切なものだったことはわかります」と、苑田さん。
“あんなに一所懸命ポイント貯めて、プレミアムランクまでいったのに……! どうしてくれるんだ!”
と、フロントに怒号が響き渡った。客は諦めきれないようすで、やり取りは1時間ほど続いた。苑田さんはもう限界だったという。
「結局、会員カードは見つからなかったんです。お客様は1からポイントを貯めなおすことになりました」
ちなみに、会員カードは来店回数が51回以上でプレミアム会員になれる。土日・祝日関係なく、割引が適用されるようだ。
騒動以来、客は来店するたびに、「会員カードのランクは?」「もう(プレミアム会員に)なった?」と、聞くようになったそうだ。
◆繁忙日の翌日は10分で清掃
現役のラブホスタッフである太田万里子さん(仮名・30代)は、繁忙時に起きた迷惑客について話してくれた。
「私が働いているラブホは、付近のラブホと比べてデザイン性にこだわり、きれいな印象を持たれることが多いんです。そのため、近くでライブなどのイベントが開催されていると、宿泊の予約で部屋が満室になるくらい人気です」
そんな人気アーティストがライブを行った翌日に、ハプニングが発生した。
「私は清掃担当なのですが、宿泊客が同じ時間帯にチェックアウトをするため、満室の翌日は朝から大忙しです。そんなときに限って事件は起こるんですよね」
その日は部屋の風呂場で事件が起きた。部屋の清掃は3人もしくは4人1組で一斉に取りかかるようだが、1部屋にかける時間の目安は10分前後だという。
「たった10分で毛1本落ちてない部屋にしなければなりません」
◆ジェットバスには大量の毛と垢
部屋に入り、まずそれぞれが持ち場に分かれて清掃を始める。主な持ち場は、風呂、洗面所とトイレ、ベッド周りの3か所だそうだ。
「私はお風呂場を担当しました。お風呂場に入ると、いつもは真っ白なはずのバスタブが、毛、毛、毛。毛だらけの状態でした。プレイなのか、ただ単にお風呂に浸かりながら剃ったのかはわかりません。とにかく大量の毛がありました」
しかも形状からして髪の毛ではなかったという。
「また、私が働いているラブホは全室がジェットバス仕様なんです。細かな泡が出てくる穴がたくさんついているのですが、そこから垢のようなものが出ていました。一体どんな毛むくじゃらで不潔な人が使ったんだと、したくもない想像に支配されながら必死に清掃しました」
◆「情熱的な一夜を過ごした」という清掃員へのメッセージ?
さらに、太田さんが担当ではないベッド付近でも大変な状況が見られたという。
枕元のちょうど上に照明やBGMなどを調整するパネルがある。そこに使用済みの避妊具が4つ、引っかけるようにきれいに並べられていたのだとか。
「これはどういう意図だったのでしょうか?」
「情熱的な一夜を過ごしたという、私たちへのメッセージでしょうか?」
太田さんは「どうか避妊具はしばってからゴミ箱に捨ててください。バスタブで大量の毛を剃ることは控えてください」と訴えた。
<取材・文/資産もとお>
―[ラブホの珍エピソード]―