September.20 – September.26, 2024
Saturday Morning
Title.
SOS(Sex on Sight)(feat.USHER)
Artist.
Victoria Monét 土曜日の朝、いつものように散歩に出る。なにか聴こうと思ってサブスクリプションサービスのアプリを開くと、ヴィクトリア・モネの新曲が出ている! 好きなアーティストの新しい作品ほどうれしいものはない。作品を作り続けてくれて感謝しかない。人間がやるのだから、作り続けることはむずかしい点が多い。それを乗り越えてリリースしてくれていつも感謝しかない。しかも、アッシャーがフィーチャリングアーティストとしてクレジットされている。 若い頃に彼を知って以来、今に至るまでずっとすごいから、今回もすごいのかな。ずっとすごい人の作品を聴くのはこわい。またすごいのでは、という予感からの、実際にすごいことが少しこわい。変なの。再生してみると、心拍数に馴染むテンポで、微熱でちょっと火照るくらいの熱さで、人間が聴くのに適している……と最高の気持ちに。初っ端から気になるメロディーを惜しみなく歌ってくれるソングライティングが大好き。アッシャーの余裕の登場からの多彩な歌声、燃えるホーンアレンジ、ふたりのグルーヴのうねりはとどまるところを知らず、リピートする以外の選択肢が無い。そうしてまたあっという間に2時間くらい歩いている。 スピードアップ、ピッチドアップ、アカペラ、インストゥルメンタルと様々なバージョンを聴かせてくれるのも幸せ。
アルバム『JAGUARⅡ: Deluxe』収録。
Sunday Night
Title.
Coastin’
Artist.
Victoria Monét 今年の4月、私はライブのため京都に居た。一日が終わってホテルの部屋に帰ってきてYouTubeを立ち上げ、コーチェラ・フェスティバルの配信のチャンネルに急いだ。タイムラインをさかのぼって、ヴィクトリア・モネがパフォーマンスを始めようとしているところを見つけ出し雄叫びをあげた。絶対に観たかった。最新アルバムの『JAGUAR Ⅱ』が特に好きでたくさん聴いていて、その収録曲の演奏を待ち望んでいたところもあったのに、ライブの中盤あたりに披露された「Coastin’」が軽やかでいちばん心に残った。日本だと、日本海側と太平洋側を行き来するとなると、山や川をえいやと越えるという感じが強いから、CoastからCoastへどこでもヒュンヒュン移動するみたいな感覚はアメリカの土地のイメージだなあと思う。この日のライブは、ヴィクトリアの卓越した技術やステージセットを見れてうれしかったし、想うことをはっきり言葉にして投げかけてくれたり、忘れられない余韻が残った。風呂に入りながら2周目を観ていたら、最後の曲で配信が終了して、部屋が急に静かになった。いつかライブを観てみたいな。あの日、むこうは日曜の夜、というかぎりぎり夕方? だったということで、無理矢理に書かせてもらいました。
シングル「Coastin’」収録。
&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ
音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。
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シンガー・ソングライター/詩人 柴田聡子
北海道札幌市出身。武蔵野美術大学卒業、東京藝術大学大学院修了。2010年、大学時代の恩師の一言をきっかけに活動を始める。2012年、『しばたさとこ島』でアルバム・デビュー。2016年、詩集『さばーく』を上梓し、第5回エルスール財団新人賞受賞。2023年、エッセイ集『きれぎれのダイアリー』を上梓。2024年、アルバム『Your Favorite Things』をリリース。