暑さからバラを守る黒星病(黒点病)


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黒星病もバラを代表する病気です。私も皆さんと同じように悩まされてきました。

そもそも、なぜ黒星病になるのでしょうか。

一般的には、泥はねなどにより土壌にいる病原菌が付着するためだといわれています。しかし、実際に栽培していると、どう考えても泥はねが届かない高さまで黒星病になったり、黒星病になるバラとならないバラがあったりと不思議でなりませんでした。

育てているバラの中には、夏になると毎年必ず黒星病にかかる品種があります。それをあえて黒星病をそのままにしたらどうなるか実験してみたところ、下の葉から病気になり葉が落ちていきました。

しかし、途中から気がついたことがあります。それは、上半分の新しい葉は病気になっていないということ。また、病気で古い葉が落ちて、自然と風通しがよくなっていました。

このときに思い浮かんだのが、農家が野菜を育てる時に行う「葉かき」という不要な葉を落とす技術です。もしかしたら、バラ自身が病気になり古い葉を落とす事で、葉からの蒸散量を抑えて脱水症状を防ぎつつ、風通しをよくして身体を冷やしていたのかもしれないと思いつきました。

夏の間に黒星病ですべての葉が落ちてしまうバラもありましたが、枝は緑のままで潤っていたので、夏剪定だけしてそのまま様子を見てみました。秋になり涼しくなると、まるで春に新芽が芽吹くように、新しい枝が元気よく伸びて秋に見事な花を咲かせてくれました。

こうして観察していると、暑さ対策として植物が自ら黒星病にかかり、葉の量を調整したり休眠してるかのようです。あくまで私の考察ですので、必ずしもそうでないかもしれませんが、これをきっかけに、黒星病に対してあまり神経質にならず様子を見るようになりました。黒星病に弱く夏に葉を落としやすい品種は、もともと暑さが苦手な品種なのでしょう。

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赤さび病の自然治癒


コムギに発生した赤さび病。Tomasz Klejdysz/Shutterstock.com

以前、赤さび病が大発生し、それも耐病性の高い新しい品種にだけ赤さび病が出た年があります。

はじめは落葉性の病気だからと、黒星病と同じ感覚で様子を見ていたのですが、黒星病と異なり、赤さび病は葉だけでなく茎や芽まで浸食し始め、バラがひどく弱ってしまいました。そこで無農薬ではどうしたら克服できるのかを考え、いくつか実行してみた結果、翌年には赤さび病を減らすことに成功しました。

その方法を3つご紹介します。これは、赤さび病に限らず病気対策に共通する有効な手段です。

① 剪定をして風通しをよくする


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植物に病気が発生する原因は、70〜80%が菌類によるものだとされています。

病気の原因の大半を占める菌に対し、簡単で最も有効な手段が、風通しをよくすること。風通しをよくするだけで、以下の3つの効果があります。

湿気を抑える: 多くの植物病原菌、特にカビや菌類は湿度の高い環境で繁殖しやすいため、風通しをよくして湿気を抑えることで、病気の発生リスクを減らせます。

葉の乾燥を促進: 植物の葉が濡れていると病原菌が繁殖しやすくなります。風通しがよければ、葉の水分が早く蒸発し、病原菌の繁殖条件が揃わなくなります。

空気循環の促進: 空気がよどむと、病原菌が集まりやすくなりますが、風が通ることで病原菌の蓄積を防ぎ、植物の健康を保つのに役立ちます。

私流の考え方では、「洗濯物理論」です。

洗濯物を干すときに風通しがよくないと乾きにくく、生乾き臭がしてしまいますよね。このニオイも菌の増殖が原因です。植物を育てるときも洗濯物を干すときと同じ感覚で、風が通るよう剪定するとよいでしょう。

風通しのよさは、じつは農薬を使うよりも効果があるという研究もあります。農薬は対処療法であって根本療法ではなく、一時的には確かに効果があっても、環境が悪ければ再発してしまうためです。

無農薬栽培をしたい方は、ぜひ剪定に力を入れてみてください。

② 剪定をして日光がよく当たるようにする


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日光は植物の病気対策として非常に効果的です。植物の健康を保ち、病気を防ぐ役割を果たす日光が葉にまんべんなくいきわたるよう、剪定しましょう。日光の効果には次のようなものがあります。

光合成を促進: 日光が十分に当たることで植物は光合成を効率的に行い、栄養を作り出して強い免疫力を保つことができます。健康な植物は病原菌に対する抵抗力が高まります。

湿気を抑制: 日光が植物に直接当たることで、土壌や植物の表面が早く乾燥し、菌類やカビの繁殖条件である高湿度の環境を防ぐことができます。

紫外線の殺菌効果: 日光に含まれる紫外線は、植物の表面に付着している病原菌やウイルスをある程度殺菌する効果があります。特に、カビや菌類は紫外線に弱いものが多く、日光を浴びることは自然な消毒方法となります。

植物の成長を促す: 十分な日光は、植物の健康を支え、丈夫な茎や葉を形成するのに役立ちます。これにより、病害虫に対する防御力が強化されます。

ただし、植物によっては強い直射日光がストレスになる場合もありますので、適切な日照条件を選ぶことが重要です。

③ 有機石灰を施し、土壌のpHを整える


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見逃しがちな土壌のpHですが、病気対策では非常に重要です。雨の多い日本は酸性雨により、自然と酸性に傾きやすい土壌です。有機石灰を施して土壌のpHを整えることを意識しましょう。

有機石灰が植物の病気対策に役立つ理由として、以下の5つが挙げられます。

土壌のpHを調整する
有機石灰は酸性の土壌を中和し、適切なpHバランスを保つことで、植物にとって健康な成長環境を作ります。多くの植物病原菌は酸性土壌で活発になるため、土壌のpHを調整することで、病気の発生を抑制することができます。

カルシウムの供給
有機石灰には植物にとって必須の栄養素であるカルシウムが豊富に含まれています。カルシウムが不足すると、植物の細胞壁が弱くなり、病原菌が侵入しやすくなります。十分なカルシウムを供給することで、植物の免疫力を強化し、病気に対する抵抗力が向上します。

微生物環境の改善
有機質が原料である有機石灰には、土壌中の有益な微生物の活動を活発にし、土壌の健康状態が改善する効果も期待できます。健全な微生物環境は、病原菌の繁殖を抑える効果があり、植物の病気対策に役立ちます。

栄養素の吸収効率向上
有機石灰は土壌の養分バランスを整え、他の栄養素(特に窒素、カリウム、リンなど)の吸収効率を高めます。土壌中の栄養がうまく吸収されると、植物の健康が向上し、病気に対する耐性も強くなります。

根の発育促進
石灰を適切に施すことで、根の発育が促進され、植物の全体的な健全性が向上します。強く健全な根は、病原菌に対してより強い防御力を持ち、病気にかかりにくくなります。

◎おすすめはリサイクルされた天然由来の石灰

貝殻や卵殻などの自然に存在する材料から生成された石灰は、持続可能な資源であり、自然への負荷が少ないです。これらの石灰は、土壌に必要なカルシウムやマグネシウムを自然な形で供給してくれます。