給料は東京都の最低賃金…1馬力では生活厳しく、共働きに
給料はというと、当然だが安い。賃金は日給制で1日8,400円。8時間労働なので時給にすると1,050円、東京都の最低賃金とほぼ同じという額。
「月に24日出勤だと約20万円。残業はあっても月7、8時間なので支給額は21万円ぐらいですね」
通勤のための交通費は出るが家族手当や住宅手当などは一切ない。世間がボーナスシーズンでも関係なし、寸志も出ない。退職金もない。
「まあ、仕事は楽だからね。裏口の通用門で受付をするのですが、来訪者は1時間で2人ぐらいです。天気の悪い日だと2時間で1人も来ないことがある。蛍光灯の点灯管を取り替えたり、トイレのペーパータオルを補充したりするのも仕事ですが、自分が経営者だったとしてもこの仕事だったら労賃は20万円がいいところだと思う」
支給額が約21万円だとすると手取りは17万円台の半ばぐらいか。夫婦2人だけとはいえ、これだけで生活していくのは至難の業だから終業後に副業に励んでいる。
「2つ目の職場は自宅最寄り駅周辺のアーケード街にあるドラッグストアです。本業は17時で終業なんです。なので残業のつもりでやることにしたんだ」
やることはレジ打ち、商品棚の補充、閉店後の後片付けなど。
「月火水金の4日は18時から21時30分までの3時間半。土曜日は正午から16時までの4時間働いているんです。こちらの時給は1,100円です」
先月は79時間働いたので8万6,900円の収入だった。本業の給料と合わせると使えるお金は26万円ほど。
「倒産の後始末がひと段落してから妻も働きに出るようになりまして。日本郵便の集配局で郵便物の仕分けやゆうメールの配達下準備などをやっています。彼女の月収が10万円ほどあるので助かっています」
家計を圧迫する「最大の出費」
2人の合計で使えるお金は35万円以上あるが生活は楽ではない。
「最大の出費は医療費です。わたしが60歳、妻が58歳。この年齢になるとあちこち悪くなって病院と縁が切れないんですよ。わたしは糖尿病持ちのうえ高血圧と高脂血症もあって6週間ごとに通院し、血液検査と尿検査をやっているんです」
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驚愕…60歳と58歳の武井夫妻が支払った医療費
1回の通院で病院の窓口に払う医療費は2,800円。調剤薬局で6週間分の薬を出してもらうと約5,700円も請求される。
「往復のバス代も加えたら、1回病院に行くと9,000円も出ていく。年間で9回ですから8万円超えるもの。そのうえ市販の風邪薬や鼻炎薬、胃薬、整腸剤、消炎鎮痛剤のぬり薬などで年間に8,000円ぐらい出ていくから嫌になる」
健康自慢だった奥さんも、この4年の間であちこちに不具合が出てきている。
「妻は53歳頃から子宮筋腫をやっちゃって。いくつかの治療を受けていたけど芳しくなく、筋腫だけを切除する手術を受けました。このときは3週間入院しましたね。これが引き金だったのか、その後もあちこち悪くなっている」
まず五十肩で左腕が痛くて上げられなくなり、ずっと湿布と痛み止めを服用しているそうだ。しかし、あまり効かないようで、3ヵ月前から2週間ごとに痛み止めの注射もするようになった。
「今まではなんともなかったのに、今年から花粉症になって耳鼻科通いもしたし。去年1年間に妻が医療機関の窓口で払ったのは約8万円ぐらいになります」
こんな塩梅なので2人合わせた医療費は18万円近い。収入がそう高くないのだから結構な金額だと思う。
「そのうえわたしは去年半ば頃から眼のかすみも出てきましてね。心配だったので眼科の先生に診てもらったら初期の白内障だということだった。そのとき老人性白内障と言われまして、ちょっと落ち込んじゃったよ」
今のところは点眼薬だけで対処しているが、いずれは人工水晶体を入れる手術が必要になると言われた。
「身体の衰えは切実に感じますよ。就寝中に両脚のふくらはぎがこむら返りになって飛び起きたことがあるし、昼の仕事中に耳の奥が痛くなり、その後も1時間ぐらい耳鳴りが止まらなかったことがある。妻も年に数回だけど肋骨の辺りに鈍痛が出て横になることがあるし。確実に老いているなあと悲しくなる」