あおり運転をしてきたバイカー集団。警察に通報した結果…態度が急変したワケ

誰かと何かあったとき、自分に反省するところはなかったかを振り返ることはもちろん、相手を許すことも大事になってくる。けれどそれは、相手の言動をしっかりと見極めてからにしたほうがいいのかもしれない。

◆3車線ある国道のど真ん中を…

ある休日の夕方、深沢花子さん(仮名・30代)は混雑した地元の国道を自家用車で走行中だった。車の量がだんだんと増え、信号などの兼ね合いもあってか、ほとんどの車が徐行程度の速度で走行。両サイドに前後を他車に囲まれている状況だった。

「周囲にいるどの車もそういった状況のなか、バイクに乗った5人ほどの“バイカー集団”がエンジンを大きな音でふかしながら迫ってくるのが見えたのです。田舎とはいえ、3車線ある国道のど真ん中。『ウソでしょ?』と思いました」

バイカー集団は、エンジン音で周囲の車に存在をアピール。周囲の車が前進しながら少し横に寄り、バイクが通れるぐらいの隙間を空けるまでエンジンをふかし続ける。それは、耳をつんざくような爆音だった。

「周囲の車も含め、ブレーキから軽く足を離した状態でノロノロとしか走れない状況。そのようななか、バイカー集団がどんどんと後続車を煽りながら迫ってくるのがルームミラーで確認できました。エンジン音もうるさいし、すごく感じが悪かったです」

◆カツンと嫌な音が…

バイカー集団が近づいてきたためよく見ると、若年層というわけではない。ハーフヘルメットだったため、そこから推測するにどうやら、分別(ふんべつ)がしっかりとつくお年寄りの男性集団。そして次の瞬間、その集団は花子さんのすぐ隣をすり抜けようとしていた。

「少し前進してもう少し右側に寄せようかとも思いましたが、バイクがすぐ後ろに迫っていたので、『下手に動いて当たったら嫌だな~』と思って停車。そのまま動かずにいたら、後ろから煽る煽る。そして強引に、私と隣の車の間をすり抜けようとしたのです」

そして…、カツンと嫌な音が。バイクが車のサイドミラーに接触したのは明らかで、向こうもこちらを振り返った。その瞬間、花子さんは手を挙げて手招きしている。にもかかわらず、バイカーはそのまま走り去ってしまう。

「車を停められるところまで走行し、傷ないか確かめました。その結果、見える傷はナシ。ただ、どうしてもバイカーの態度が許せませんでした。国道のど真ん中を堂々と煽りながら走行し、車と車の間を縫うように運転すれば、接触につながることぐらいわかるはずです」

◆警察に通報、警察署へ

そこで花子さんは迷った挙句、警察に通報。最初は警察も「目に見える傷は、ないんですよね?」「探しても、見つかるかどうかわかりませんよ」という感じだったが、「これは当て逃げ。細かい傷がついていないか調べてほしい」と懇願し、動いてくれることになった。

「そして、バイクの特徴や台数、どちらからどちらの方向へ走行して行ったのかなどを事細かに説明。すると1時間もしないうちにバイカーたちは国道のだいぶん向こうで捕まり、白バイとパトカーに囲まれながら、私が待っていた警察署へ到着しました」

そのときはすでに、花子さんの証言をもとに警察官が虫眼鏡のような専用道具でサイドミラーの傷をチェック。すでに傷をみつけていた。けれどそれを知らないバイカーは強気な態度で、「傷もないのに」「こんな古そうな車、別の傷だろ?」と偉そうな態度をとるばかり。

「そこで、私の車のサイドミラーの傷とバイクの傷が一致するか調べてほしいと警察官に頼みました。そして、バイカーの人がいる前で照合してもらったのです。すると警察官いわく、『目には見えない小さな傷がついていて、傷はピッタリと合う』ことが判明します」

◆態度が急変したバイカー集団

そして、花子さん次第では当て逃げになると警察官が説明した瞬間、バイカーの態度が激変。急にヘラヘラし、花子さんのミラーを撫でまわしながら、「このミラー、いくらかな?」などと言いはじめたのだ。そして、「いくら?いくらでも出すから金額を言ってほしい」とも。

「その急変ぶりは恐ろしいものでした。そして私のなかに、『いきなり弁償の話? 本当に反省しているの?』という疑問がわきます。けれど複数の警察官に、『この方も反省しているようだし』『傷も少ないし』と促されて気が焦り、『もういいです』と許してしまいました」

けれどあとから、一言も謝罪がなかったことに気づく。さらに、車の間をすり抜ける危険なバイクを見るたび、「やっぱり当て逃げで処理してもらうべきだった?」とモヤモヤ。まわりの雰囲気や言葉に流されず、相手の言動によっては厳しい制裁を望むことも必要かもしれない。<TEXT/夏川夏実>

【夏川夏実】

ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。Twitter:@natukawanatumi5